トピックス短信(21) 業績不振、費用対効果広告不況、歯止めかからず

業績不振、費用対効果…広告不況、止めかからず

(出所)asahi.com(朝日新聞社):業績不振、費用対効果…広告不況、歯止めかからず

(2009年9月2日付)

広告市場の落ち込みに止めがかからない。不況で業績が悪化した企業が広告費を減らすだけでなく、広告の「費用対効果」にも厳しい目を向け始めたからだ。大手広告会社は効果を測る新サービスを開発し、「広告主」のつなぎ留めに懸命だが、底打ちの兆しは見えない。

グラフ: テレビ朝日系のドキュメンタリー番組「人生の楽園」。00年の放送開始以来、トヨタ自動車が広告枠を買い切り、1社でCMを提供してきたが、今春からトヨタを含む4社提供に変わった。世界的な販売不振からトヨタの業績は10年3月期に巨額の営業赤字に陥る見通し。広告費の大盤振る舞いは「カイゼン」の対象になったわけだ。

「(テレビや新聞など)マスメディア向けの広告費は前年度比で2割削減」(電機大手)。「広告費が3割減ったため主要ブランドに集中投下している」(化粧品大手)。広告費を削る動きは業種を問わず広がっている。その結果、広告大手の電通と博報堂DYホールディングスの4~6月の売上高はともに前年同期より2割近く減少。両社とも初めて純損失に転落した前期からの低迷が続く。

一方で、企業が神経をとがらせているのが広告の「費用対効果」だ。

日本新聞協会と広告主団体の日本アドバタイザーズ協会が7月、「新聞広告の未来」と題し、共催したセミナー。「全世帯に届くというだけでは広告効果として不足」「(部数に代わる)新たな効果指標を明確にしてほしい」。出席したトヨタの蔵敷大浩・宣伝部長は、新聞広告の「効果」を厳しく追及した。

新聞の購読部数やテレビの視聴率は、どれぐらいの人が広告を見たのかを測る指標にはなるが、実際にどの程度販売に結びついたかまでは測れない。不況下で「限られた広告費を効果的に使いたい」(男性化粧品のマンダム)との企業の思いは強く、マス広告は逆風にさらされている。

広告市場を調査する日本経済研究センターによると、09年のテレビ・新聞・雑誌・ラジオの国内広告費は前年比で計約16%減の見通し。そんな中でも、12%伸びるとみるのがインターネット広告だ。

ネット広告は、掲載した広告のクリック数や自社サイトへの誘導率、そこからどれぐらいが販売に結びついたかなど「はっきりした効果」(ネット専業広告会社オプトの鉢嶺登社長)が専用ソフトで追跡できる。広告費全体に占める構成比でも今年、新聞を抜き、テレビに次ぐ第2位の媒体になるとみられている。

マス広告にも「効果」を求める声に応えようと、博報堂は4月からテレビCMの効果をアンケートで測る新サービスを始めた。毎週500人に「気になるCM」を選んでもらい、「どうして気になったか」を調査。商品のターゲットと番組の視聴者層に隔たりがないかなどを分析するという。ただ、一度締められた広告主の「財布」のひもを緩めるのは容易ではない。

ある食品大手の幹部は「企業イメージの向上を名目にこれまで広告を出し過ぎていたのではないか。ムダ打ちになっていなかったか、見直す機会にしたい」。景気が回復したとしても、広告不況の打開に即つながるとは限らなさそうだ。(本田靖明、久保智)

(2009年9月2日)

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)