国内最古級の旧石器か、12万年前の地層から石片 出雲
(出所)asahi.com(朝日新聞社):国内最古級の旧石器か、12万年前の地層から石片 出雲(2009年9月29日付)
島根県出雲市の砂原(すなばら)遺跡で、中期旧石器時代(13万年前~3万5千年前)の約12万年前の地層から、国内最古級とみられる旧石器20点が見つかったと、松藤(まつふじ)和人・同志社大教授(旧石器考古学)を団長とする発掘調査団が29日、発表した。調査団によると、国内最古とされてきた金取(かねどり)遺跡(岩手県遠野市、約9万年前)を約3万年さかのぼる可能性がある。日本列島で人が活動を始めた起源を探る貴重な資料になるという。
8月に出雲市在住の地形学者が、砂原遺跡の地層の断面が露出したがけで、鋭い石片を発見。調査団が9月16日から発掘調査した。
このがけを調べたり、地表から約2メートル掘り下げたりしたところ、約11万年前の火山噴火で積もった「三瓶(さんべ)木次(きすき)火山灰層」と、約12万8千年前の砂礫(されき)層の間の地層から、旧石器とみられる長さ約5~1.5センチの石片20点が出土した。石の塊を他の石などを使ってはぎ取ったとみられる剥片(はくへん)や、先をとがらせて縁を刃物のように鋭く二次加工したものなど。素材は石英岩や流紋岩などだった。
松藤教授は「20点の石器にはいずれも剥離痕や人が力を加えた部分があった。また、発掘した地層の石は主に安山岩系で、石器に使われた石英岩、流紋岩とは全く異質で、石器は外から持ち込まれた可能性があると考えられる」と話している。
私有地のため現地説明会はないが、調査報告会を10月4日午前10時半から出雲市内の多伎コミュニティーセンターで開く。出土品は10月10~25日、同市内の県立古代出雲歴史博物館で展示する。問い合わせは県教委文化財課(0852・22・5880)へ。(野中一郎)
左写真…日本最古級の石器とみられる石片=29日午前11時13分、松江市、右写真…石器とみられる石片が見つかった砂原遺跡。右は説明する松藤和人・同志社大教授=29日午後、島根県出雲市、矢木隆晴撮影。
ちなみに現存する最古の紙は、紀元前2世紀の中国で前漢時代のことです。このように腐ることのない石は古くても遺跡として残り、はるかに古いロマンを語ることができます。
注
- 旧石器時代…人類史上で最古の時代。ほぼ地質学上の更新世にあたり、人類は、今日絶滅し、もしくは生息地をかえた動物とともに住み、打製石器や骨角器を用いたが、まだ土器を作らず、採集・狩猟・漁労だけによって食糧をえていた。通常、前・中・後期に3区分される。日本では縄文時代の前の時代がほぼこれにあたる。
- 新石器時代…石器時代中、新しい時代。打製石器とともに磨製石器が普及し、土器も作られる。その生活は農耕・牧畜が主となり、定着化が進み、集落や墓地が形成される。土器・磨製石器をもちながら、採集狩猟社会にとどまる地域もあり、日本の縄文時代はこれに当り、これらは新石器時代と呼ばないことが多い。その意義・内容は研究者間で一致しない。
- 先土器時代…縄文時代に先だって、土器が登場するまでの時代。石器としてナイフ形石器・尖頭器・掻器・彫器などがある。ほぼ旧石器時代に相当し、そう呼ぶことが多い。先縄文時代。無土器時代(広辞苑)。
(2009年10月1日)