厚さについて
次に密度(緊度)を求めるのに必要で、密接な関係にある紙の厚さについて説明します。
紙の厚さは、マイクロメーターのような2枚の平らで平行な板の間に、一定圧下で紙、通常、1枚を挟んで測定し、単位はmm(μm…マイクロメートル=1/1000mm)で表します(JIS P 8118)。
なお、紙の表面は凹凸であるため、平行板の間隔、すなわち、厚さは紙の表と裏の凸部と凸部を測っていることになります。紙を数枚重ねて測った後に、その枚数で割って1枚当たりの厚さ(バルク厚さ)を求めた場合は、重なった紙同士の凹凸が相殺されるため1枚だけで測ったときよりも 1~5%程度薄くなります。
従って、本、特にケース入りの豪華本を作るときなどに、紙1枚の厚さにページ数を掛けて本の厚さを計算すると、実際に紙を重ねた厚さと異なることになります。それを防ぐためには事前に予定枚数の紙を重ねた束(つか)見本を作り、その厚さを確認しておくことが必要です。
なお、このとき提出する事前のサンプル紙の厚さは、出荷範囲(標準)の中心値のもの、ないしはそれに近いものであることを確認しておきます。仮に上限、ないしは下限か、あるいは無管理のものを出せば、大きなトラブル発生になりかねませんので、このような配慮をし、本番生産や製品出荷してもトラブルが発生しないようにすることが大切です。
ところで、以前のアート紙を知っている人から今のアート紙は手肉感がなく、紙が薄いとの話で訊かれることがありませんか。これは以下の理由によるものです。
品質競争の中で、低・中グレード品(微塗工紙、A3 、A2 )の品質の底上げと、さらに優位を保つために高グレード品(A1 、A0 )の品質のレベルアップが進行しており、現在のコート紙A2は、かつてのアート紙A1の光沢度、平滑度のレベル以上にあります。
アート紙A1も塗料組成や塗工量の増加、加圧処理強化などにより光沢度、平滑度のレベルも同様に上がってきており、その結果として紙が締まり、緊度が大きくなり、紙の厚さが小さく、いわゆる紙が薄くなってきているわけです。
もう少し説明しますと、紙の密度を求める算出式から、坪量=密度×紙厚の関係にありますが、この式で坪量はその紙では定米坪ですので、一定範囲であり、密度×紙厚=一定(定米坪)となります。従って、光沢度、平滑度の品質レベルが上がって、緊度(密度)が大きくなれば、その積は一定ですので紙厚が小さくなり、紙が薄くなるわけです。
品質項目 | 嵩高紙 | 通常紙 |
---|---|---|
密度(g/cm3) | 1.00 | 1.20 |
紙厚(μm) | 110 | 107 |
米坪(g/m2) | 110.0 | 127.9 |
しかし、品質のレベルアップとともに、ただ単に紙が薄くなるのでは、厚みという品質を落とすことになり、競争に負けることにもなりかねません。そのためにできる限り紙厚を落とさないように、あるいは逆に紙厚を出す加圧処理条件の改善、設備や原材料・薬品(嵩高剤・紙厚向上剤)などの導入、工夫をしています。
近年、注目されている紙に「嵩高紙」があります。嵩高紙は通常の紙より軽くて分厚いのが特徴で、紙の密度(緊度)が低くなっています。すなわち、紙の繊維の隙間により多くの空気を含んでいることになります。従来の印刷適性を保ちながら、通常紙に比べ大幅に密度を下げた製品で、出版物に使用した場合、少ないページ数でもボリューム感を出すことが可能となるため、ニーズが高まっています。また、紙厚が同一でも大幅な軽量化が図れることから、木材繊維などの省資源になり、物流コストなどの経済性や省エネに優れており環境にも優しい製品といえます。
例えば、A2グロスコート紙の場合、その嵩高紙は基本特性である高光沢、高印刷再現性を保持したまま、表2のように大幅に低密度を実現し、同じ紙厚レベルで米坪をおよそ15%低下させることが可能になっています。ここに製紙技術の進歩やノウハウの蓄積・活用とメーカーの独自性があるわけです。
坪量について
次に坪量です。紙の重さは商取引き上も重要です。紙・板紙の基準となる重さは、一定の面積で比較をしており、坪量(つぼりょう)と呼ぶ単位面積あたりの質量で表します。すなわち紙の面積と質量を測定し、面積1m2当たりに換算した紙の質量をグラム(g) で表示し、単位はg/m2で小数点2位を四捨五入して1位まで表記します。
なお坪量の範囲は、一般に薄葉紙の10g/m2くらいから板紙の850~900g/m2と幅広く、通常、坪量の大きい紙は「厚い」「重い」「腰のある(強い)」紙であり、反対に坪量の小さい紙は「薄い」「軽い」「腰のない(弱い)」紙といえます。
以前は尺貫法で1尺平方当たりの紙1枚の重さ(目方・質量)を計り、匁(もんめ)で表して、それを「尺坪」「尺坪量」(匁/尺2)としていました。
注
- 坪の意味は縦横が同じ長さのもの(正方形)のこと
- 1尺=30.303cm、1尺2=1平方尺=一尺四方=0.0918m2
- 1匁(もんめ)=3.75g
- 匁/尺2=3.75g/30.303×30.303m2=40.8375g/m2
しかし、1959(昭和34)年に、それまでの尺貫法にかえ、メートル法が施行されから、先のように1m2当たりのg(グラム)数を坪量とするようになりました。正式な名称はメートル坪量(あるいは単に坪量)と言いますが、別名で「米坪」(メートル坪ないし、べいつぼ)と言うことがあります。
坪量は紙の基本品質であり、特に紙の製造管理および商取引においても、寸法とともに重要な項目です。紙の厚さや、後で述べる寸法はJISで測定する適用機器や、測定温度と湿度の標準条件が決められていますが、坪量もJIS P 8124に、あらかじめ紙を一定の温度・湿度条件のもとで調湿して測定するように規定されています。
その前処置の標準状態とは、ISO 規格(国際規格)に準じた温度23±1℃、湿度50±2%RHで、1998年から適用されています。それ以前はわが国の湿度を考えて設定したもので、温度20±2℃、湿度65±2%RHでしたが、国際化に合わせ変更されたものです(JIS P 8111)。
なお、製紙工場では紙を製造するにあたって、抄紙機上でコンピューター制御によるBM計[Basis weight/Moisture(坪量・水分)計]によりオンラインで絶乾米坪 (Bone Dry、BD)、および水分の測定とコントロールがされており、紙のマシン流れ方向・幅方向の変動を制御し、定められた坪量範囲で、かつ定量を下回ることのないように管理が行われております。
(1)連量
ところで、紙の価格は質量当たりで設定されていますが、商取引では実際に、面積を基準にした「枚」や取扱う量が多量のときには「連」などの単位で取引きされます。
なお、紙代理店・卸商等の大口取引や、比較的まとまった数量で取引きされる汎用的な印刷用紙では、「連」を単位とすることが一般的ですが、末端の小売店で売買されるときや、ファンシーペーパー、画用紙など特殊用途の紙ではしばしば枚数単位が用いられます。
ここで、「連」とは紙および板紙の取引上の枚数単位です。ちなみに、「連」の語源は英語の「Ream(リーム)」から来ており、イギリスでは480枚を「short ream」、アメリカでは500枚を「long ream」として基本単位に定めています。
わが国では平判の場合は、基準(規定)寸法に仕上げた紙1000枚、板紙の場合は100枚を、また巻取の場合は基準寸法の紙1000枚分を、板紙は100枚分を、それぞれ1連といいます。なお連の書き方は、漢字のかわりに「Ream」の「R」で表示することがありますが、読むときはこの場合も「れん」といいます。
なお、紙の場合に千(1000)の意のキロKを付けて「KR」と表すことがありますが、これはまれで、普通は「R」のみの表示で、Kは省略します。また、板紙の場合には、板紙の英語「board(ボード)」を付け加えて「ボード連(略してBR)」と言ったり、書いたりすることがあります。
そして1連の紙(板紙も)の質量を「連量」といい、単位kgで表示します。これをキロ連量といい、kg当たりの価格を決めて取引きされています。
なお、ときどき斤量(きんりょう)という言葉を聞いたり、見たりすることがありますが、これは尺貫法の時代、重量の単位として「斤」が使われていたことから、今でも慣用的に用紙の質量を表すキロ連量を斤量と呼ぶことがあるからです(1斤=600g)。
ところで紙の連量は次式により算出されます。
・平判の場合
連量(kg)=単位質量(g/m2)×面積(m2/枚)×1000枚
[メートル坪量][横寸法(紙幅)×縦寸法(流れ長さ)]
・巻取紙の場合…平判のときと同様に次のように計算
連量(kg)=単位質量(g/m2)×面積(m2/枚)×1000枚
[メートル坪量][巻取幅寸法×単位長さ(流れ基準寸法)]
なお、板紙の場合は基準枚数を100枚として上式でおのおの計算
また洋紙は◇、板紙は△の中に連量数値を表示します。例えば洋紙の場合、四六判(788×1,091mm)の連量表示<55>は坪量64g/m2で1連当たり55kg(キロ連、単にキロ)であることを示します。以下、<63>…73.3g/m2、<68>…79.1g/m2、<70>…81.4g/m2、<73>…84.9g/m2、<90>…104.9g/m2、<110>…127.9g/m2、<135>…157.0g/m2、<160>…186.1g/m2、<180>…209.4g/m2となります。なお、連量数値は小数点1位を2捨3入7捨8入して整数、または、0.5kg単位として求め、表示します。
(2)連数・入数
また、連数とか入数という表示、表現がよく使われますが、連数とは1連を基本単位とした数のことで、例えば、洋紙5,000枚の連数は5連(R)、板紙3,500枚は35連(BR)といいます。
なお平判の場合、使い易さ、持運びし易さなどを考慮して1連を1/2、1/4、1/5、1/8 とか区切りのよい単位に包装されます。この包装単位を「包(つつみ)」といいますが、この包単位で梱包された製品を連包装品といいます。これに対して、パレット包装品がありますが、これは何連分もの紙ないし板紙を一纏めにし、パレット単位で包装、梱包された製品をいいます。一般的に大口使用の場合には、パレット包装品での納入が多く行われます。
また入数とは、主に巻取紙に使われる用語で、巻取1本に巻き込まれている総連数をいいますが、出荷される巻取の長さは、言い換えれば、巻取の径は、製紙会社の設備上、輸送上の制約や流通段階での保管上、印刷会社での印刷機の制限、用途などにより経済的に最大限(上限)が決められております。