紙の基礎講座(14-1) 紙と印刷適性についてⅡ オフ輪用紙について1

トラブル対応、その前に(10)…紙と印刷適性についてⅡ 

紙は、一般的な品質特性以外にそれぞれ版式や用途などに合った必要な品質適性が付与されています。今回はオフ輪印刷(オフセット輪転印刷)に使われる用紙を例にして、その印刷適性を具体的に学びます。

 

オフ輪印刷について

(1)オフ輪印刷とは

まず初めに、オフ輪印刷についてです。オフ輪、すなわちオフセット輪転印刷(web offset press)は巻取紙を使用するオフセット印刷方式のことをいいます。印刷版式の中ではオフセット(平版)印刷が主流ですが、それには1枚1枚シート状の枚葉紙を印刷する枚葉紙印刷機と巻取紙を印刷する巻取紙印刷機とがあります。巻取印刷は輪転印刷ともいいますが、枚葉印刷に比べて高速化、作業の能率化が図られ量産化に適しています。

近年、枚葉紙よりも巻取紙を印刷するオフ輪が大きく伸びています。進展しているオフ輪印刷は、わが国では1940年代後半に始まりますが、経済の高度成長に乗って、その高速性、高生産性が注目され、1960年代に入って新聞、書籍などの高速多量印刷を必要とする分野で急速に普及。1972~74年ころには、オフ輪ブームといわれるほどオフ輪化が活発となりました。

そのころの商業印刷物は薄物のチラシ主体の印刷でしたが、さらに週刊誌の表紙、カタログパンフレットにも適用・拡大し、用紙も非塗工紙から微塗工紙・軽量コート紙コート紙アート紙・キャスト紙など幅広く使用されるようになりました。

最近では、オフ枚葉印刷を超え、オフ輪印刷の比率が高まり、オフ輪が主流になってきましたが、その理由として、①印刷物の品質(特にオフ輪特有のブリスター、ひじわ、折り割れなど)がよくなってきたこと、②枚葉印刷に比べ、3~5倍の速度で、かつ表裏両面が同時に印刷されること、さらに③インラインで折り加工などが行われるため生産性が高く、製品の短納期化ができることなどが挙げられます。

さらに従来、オフ枚葉は小ロットで高印刷物に、オフ輪は大ロットで高生産性を要求されるものへの適用といわれてきましたが、オフ輪印刷技術の進歩により、大ロットはもとより1万枚程度以下の小ロットのものも輪転化の受注を可能にしており、幅広く適用されるようになりました。

 

(2)オフ輪印刷機について

オフ輪印刷機には版胴、ブランケット胴(ゴム胴)、圧胴などのシリンダーの配置から、B・B型とサテライト型(ドラム型・共通圧胴型)および3本胴型の3つのタイプがあります。

  • 版胴…板状の印刷版が取り付けられたシリンダー(胴)
  • ブランケット胴…オフセット印刷は版胴のインキを、これに接して回転する胴に転移させた後、紙へ印刷します。この胴をブランケット胴(ゴム胴)と呼び、表面が弾性のあるゴム層で出来ているゴムブランケットが巻き付けられています。
  • 圧胴…インキを版あるいはブランケットから紙に転写するときに、圧力を加えるための胴。一般的には金属製の円筒(シリンダー)が用いられます。

 

B・B型とは、ブランケット対ブランケット(blanket to blanket)タイプの略称で、2本のブランケット胴(ゴム胴)が対向していることから、そう呼ばれています。2組の版胴とゴム胴がゴム胴を接して向かい合って配置されており、上下にあるゴム胴の間を紙が通ることによって表裏両面を同時印刷する印刷機です。圧胴はなく、ゴム胴が圧胴の代用をします。

B・B型タイプのオフセット輪転機では、1ユニットで表裏各1色が同時に印刷されますが、これが4ユニット連結していれば4色機となります。その後、ドライヤーによる加熱(一般に熱風)によってインキ中の溶剤を蒸発して乾かし両面4色の印刷物ができあがります。通常は4ユニット(4色)で構成されていますが、雑誌の表紙用などを印刷する6ユニットのものもあります。

サテライト型に比べ構造が簡単で、高速にも対応しやすく、しかも紙通し距離が短く、ロスが少なくてすむメリットもあり、オフセット輪転機の主流となっています。

一方、サテライト型は、大径のセンタードラム(圧胴用ドラム)の周りに数組(2~8色、通常4色)の版胴、ゴム胴などの印刷ユニットがサテライト(衛星)状に配置されております。紙はこのドラム(圧胴)に抱かれて走行し、同じ面を連続して多色印刷され、乾燥された後に、反転してもう1基のセンタードラムで反対面を印刷する印刷機です。ドラム1つの周辺に数組の印刷ユニットを配置していることから共通圧胴(互胴)型ともいいます。

紙がドラムに抱かれた多色連続印刷のため見当精度は安定していますが、ドライヤーを裏表用別々に2基持つことやドラムが大きく、大型で設備費が高いこと、操作性もB・B型より劣るため商業・出版用印刷用として設置する例は極めて少なく、最近ではB・B型の設置がー般的です。なお、3本胴型は版胴、ゴム胴、圧胴が順に配置され、ゴム胴と圧胴の間に紙を通し片面印刷する方式ですが、これはまれです。

 

オフ輪用紙について、その主な印刷適性

次に用紙ですが、オフ輪用紙は巻取紙です。印刷には、高速印刷対応のために加熱によってセット・乾燥するヒートセットタイプの印刷インキが使用されます。そのためオフ輪用紙に要求される印刷適性は、一般オフセット印刷用紙に必要な品質特性を持っていることは言うまでもありませんが、加熱乾燥(通常、熱風で紙面温度110~135℃)を受けることによって紙はかなり過酷な条件に曝されること、かつ高速巻取印刷に対応するために品質設計上、特別な配慮がされています。その主な項目は、ブリスター、ひじわ、折り割れなどの印刷品質適性と巻取印刷に必要な断紙、たるみなどの印刷作業適性ですが、これらはオフ輪用紙に必要な重要な印刷適性です。これは一般的に、加温による乾燥を受けない枚葉紙にはない印刷適性です。

この中で、高速印刷に対応すべくオフ輪用巻取紙に必要な片たるみ、厚薄、紙力、断紙、継手などは、ここでは割愛しますが、オフ輪印刷に特有な品質、ブリスター、ひじわ、折り割れなどについてその概要と対応策などを次にまとめます。

なお、オフ輪用紙は通常、ブリスター対策として枚葉紙に比べて水分を低く抑えているため、開包後、放置すると吸湿しわなどが発生する場合がありますので、印刷の準備段階では開包を鏡面に止め、印刷直前に胴面の包装を取るなどの配慮が必要です。

 

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更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)