トラブル対応、その前に(12)…印刷トラブルの全体を知るⅡ
前回の続きです。ここではトラブルを例にして、調査のポイントなどを勉強しておきましょう。
説明…例示「ピッキングないし白抜け」
前回掲載の印刷トラブルにおける用紙の主要因と調査ポイント(表1)について、「ピッキングないし白抜け」トラブルを例にして具体的に解説していきます。
(1)トラブルの種類と主な要因
まずトラブルの種類ですが、ピッキングないし白抜けには、種類としてベッセルピック・ダスティング・毛羽立ち・パイリング・紙粉・異物付着・ヒッキーなどがあります。この中で「毛羽立ち」は、日本工業規格の紙・板紙及びパルプ用語(JIS P 0001 番号7020)に、紙または板紙の表面が、摩擦その他の原因で起毛すること。主に繊維、填料などからなる毛羽、ダストなどの集合体が離脱すること(一部省略)、と定義付けされており、後述のダスティング、リンティング、フルフィングなども幅広く、「毛羽立ち」に含まれるとしています。しかし、ここでは文字どおり、狭義の繊維がとれるファイバーピック現象を毛羽立ちとしております。
次にトラブルの原因ですが、表には紙関係の主な要因のみを示してあります。発生要因としては印刷関係(インキも含む)と紙関係がありますが、白抜けとなる異物として、紙要因では紙粉、フェルトなどの脱毛、粕(ドクター粕、サイズ粕等)、コーティングカラーの塊(スケール、ランプ)などがあり、印刷関係に起因するものとして、スプレーパウダーやインキ粕、まれにモルトンの繊維などがあります。
注
(2)調査ポイントと必要器具
また、調査ポイント欄に掲げている、「形状は、面は、絵柄は、第何色目の発生か、発生場所は(くわえ尻か)、規則性はあるか、ブランケット付着物は」などは、トラブル発生時の印刷物や印刷機などを調べるときや、印刷会社の人に確認・質問をするときなどに必要な重要ポイントです。
トラブル発生時の調査ポイントをもう少し説明します。トラブルを究明していくために、どのような調査・確認をし、対応をどうすべきかを知っていることは、非常に重要なことです。貴重な制限ある時間内で、(だらだらと)満遍なく調査をし、質問をしても相手に不安を与えかねません。まず、重点的にポイントからすべきです。発生するトラブルは、一様でなく、それぞれに異なる特徴があります。そして特有の調査ポイントがあるからです。そのためトラブルそれぞれにキーポイントがあるわけです。
トラブル発生時に連絡がきますが、そのときの状況報告や現象の説明などにより、トラブルが何なのかを、ある程度の判断をします。そして、その場で発生原因と対策・処置などについて説明し、双方とも了解できれば、それが最善です。しかし、印刷現場等に出掛けて立ち会い、調べたり、状況を尋ねたりすることも多くあります。トラブルの現場や印刷物・異物などを見て、トラブルが何なのか、その調査のポイントは何なのか、重大な局面に立つこともあります。そして調査ポイントに基づいて調べた結果、トラブルや原因が何なのかも判ることがあります。
このようにキーポイントとなる重要な調査項目が何かを知ることは、初めてとか、慣れないうちは大変なことです。そのために表中の調査ポイントが役に立つかもしれません。条件反射的に対応できるように活用してください。そして現場で、あるいは印刷物(印刷シート)を見ながら、要領よく聞いたり訊ねたり、サンプリングなどして、さらに調べて原因究明に役立ててください。
最終欄にある必要器具は異物・付着物の採取、トラブルの発生源や白抜けの形状の識別、用紙の品質や印刷条件・環境などが適正かどうかを測定・判別するなどのためにあった方がよいと考えるものです。例えば、表中の①⑦⑨、すなわち①ルーペ(拡大鏡)は、白抜け部の形状などを見るのに使いますが、倍率5~15倍と30~50倍の2種類を用意するとよいと思います。また、ルーペは広く活用でき、しかも、あまり重たくなくて嵩張らないので、常時持ち歩くように心がけるとよいでしょう。⑦のセロテープ、羅紗布(黒シート)は、紙粉などのブランケット付着物の採取に使います。さらに⑨の蛍光検出器(ブラックライト、紫外線検知器)は、白抜け部や異物などが蛍光呈色を示すのか、検知するのに使用します。一般に原紙には蛍光染料は添加されていなく、塗料には含まれていることが多いことから、白抜け部の剥けているところを蛍光検出器で照射すれば原紙からか、塗工部なのかを識別することができます。是非ともこれらの道具は、あらかじめ購入しておき、トラブルに応じて適宜持参するとよいと考えます。きっと先方の対応が変わり、信頼されるようになるでしょう。