紙の基礎講座 印刷編(1-1) 見当不良・印刷しわ・カール

見当不良・印刷しわ・カール

先に「紙の基礎講座」としてメインテーマ「紙の品質とトラブル対応あれこれ」を執筆、連載しましたが、今回から改めて「印刷トラブルと紙への対応」として追加連載していきます。なお、本稿はは拙著“紙 ―紙と印刷、品質クレームへの対応―"(下巻 増補改訂版、1997年12月、王子製紙株式会社発行)に基づいてまとめました。前回の「紙の基礎講座」で触れました「ピッキング(紙むけ)ないし白抜け」と「ブリスター・ひじわ・折り割れ」関係はこのシリーズではダブらないよう割愛します。

見当不良・印刷しわ・カール」が今回のテーマですが、その前にもう一度前講座で載せました「トラブルの全体像を知る…印刷トラブルの分類・種類」についておさらいしておきます。

 

全体像を知る…印刷トラブルの分類・種類

印刷トラブルの種類は多々ありますが、以前に比し、印刷・加工サイドのハード面およびソフト面での改善や技術のレベルアップと、インキおよび紙の品質のレベルアップと安定化などによりトラブルは減少してきています。それでもその中で多いものは、ベッセルピックに代表されるピッキング(picking、紙むけ)や紙粉などに起因する白抜けと、波打ち、おちょこ、カールなどの紙ぐせによる印刷しわ、見当不良、給・排紙不良などです。次いでインキ着肉不良(着肉むら、転移むら)で、ほかに裏移り、冬季の乾燥期に発生しやすい静電気、折り割れトラブルなどですが、まれにグロスゴーストなど珍しいトラブルが発生することがあります。

ところで印刷トラブルはオフセット印刷関係だけでも、一般的に下記のように分類されています。

  1. ピッキング(紙むけ)ないし白抜け…ベッセルピック・パイリング・紙粉・異物付着など②紙ぐせ関係…波打ち・おちょこ・見当不良・ダブリ・しわ・カールなど
  2. インキ乾燥不良…裏移り・スマッジングなど
  3. インキ転移不良…トラッピング不良・水負けなど
  4. 画像不良…網点太り・網点細り・版摩耗など
  5. 給・排紙不良…重送・ブロッキング・腰不足・印刷後カールなど
  6. 汚れ・縞…汚れ・浮き汚れ・縞・ミスチング・ゴーストなど
  7. オフ輪印刷トラブル…ブリスター・ひじわ・折り割れ・ブラン離れ不良など
  8. その他…グロスゴースト・ドライダウン・静電気トラブルなどです。

これらをすべて完璧に知っているのに越したことはありませんが、それでは時間が掛かり過ぎ実際的ではありません。ただ、それらの全体を知り、その中でどれか、特に頻度の多いトラブルであるピッキング(紙むけ)や紙粉などに起因する白抜けと、冬場の低湿度時に発生しやすいおちょこ、梅雨時の波打ちや、カールなどの紙ぐせによる印刷しわ、見当不良などを重点的に勉強し、その中からトラブル発生の原理・原則的な考え方や、対応の仕方などを吸収し、応用力を感覚的にも養っておくことが大切です。そのときには過去の欠陥サンプルや写真などを実際に見ながら勉強すると、より効果的になるでしょう。

そして、さらに印刷関係の書籍を身近に置いておき、必要なときにそれを読み勉強して身につけるとよいでしょう。

なお、トラブルとしては上記以外にも、プレスストッパー(印刷機の停止)となり大きなトラブルに結びつくボルト、ナットなどの金属片やその他の異物混入や、水分(湿度)過多、切り口不良などによる白紙状態でのブロッキング(ネッパリ、くっつき)、ストリーク、汚れ、塵などの官能欠陥紙、虫付着、紙片、破れ紙などの不良紙の混入および、紙の厚薄不同に起因する巻取たるみ、印刷機の高速化と用紙の軽量化に伴う、巻取の断紙トラブルなどさまざまあります。ここでは異物混入や欠陥紙混入などについては、言及しませんが、いずれにしてもそれぞれの発生現象・状況を正確に把握して、迅速に対応し、再発防止することが重要となります。以下、文体を「である調」で表現します。

 

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更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)