紙の基礎講座 印刷編(1-4) 見当不良・印刷しわ・カール(3)カール

(3)カール(curl)

紙が面に対して一方向に丸まっている状態を紙がカールしているという。印刷前にすでに発生している白紙カールには、湿度の変化に対して紙の表裏の伸縮差に起因する構造カールと、巻取の芯近くに発生しやすい巻きカール(巻芯カール、巻ぐせカール)とがある。前者のカールの軸は、一般的にマシン流れ方向(MD)であり、吸湿時は伸縮率の小さい面に、脱湿時は伸縮率の大きい面に、それぞれカールをする。後者はマシン幅方向[クロスマシン方向 CMD]を軸として発生し、シートが巻取コアーの回りにくせが付くほど固く、長期間、巻き付けられることにより起こりやすく、巻芯に近くなるほどその程度は大きい。

なお、構造カールと巻きカールについても、紙の紙の基礎講座(10) トラブル対応、その前に(6)...知っておきたい紙の基本品質Ⅴ 「湿度変化と紙くせ」の項で説明済みであるので、ここでは、その他の印刷後のカールについて若干説明する。印刷後のカールには、その形状からデリバリーカールともいわれる印刷後カールと、くわえ尻カールやエンボシングとがある。

a)印刷後カール(デリバリーカール)

印刷後の排紙部(デリバリ)での印刷面方向へのカールをいう。印刷時の湿し水の付与によって、いったんは印刷面が伸び、下方(反対面)にカールをする。しかし、すぐに付与された水は蒸発したりして乾燥し、最終的に印刷面へのカール(右図参照)となり、ひどい場合には、後工程でトラブルとなる。なお、カールの程度は湿し水量や絵柄、印刷室の温度・湿度などの影響を受けるで、その管理が必要である。






b)くわえ尻カール(バックエッジカール)

印刷排紙部において、印刷紙のくわえ尻がカールする現象で、印刷機のブランケット胴と圧胴間とのニップの出口でブランケット胴から紙が離れる際にインキによって強く紙が引張られることによってくわえ尻部に発生するカールである(右図参照)。印刷速度が速く、腰が弱い薄紙で、かつ縦目で、ベタ刷り面積が多く、特にくわえ尻にベタ部分が多い印刷物で起こりやすい。また、湿し水が過多や、インキタックの高すぎで、ブランケットからの紙離れ(ブラン離れ)が悪いときなども発生しやすい条件である。さらに用紙の寸法の採りかたで、くわえ尻に余白部分が不足していると起こりやすくなります。


c)エンボシング(embossing, 印刷ぶくれ)

エンボスとは膨らみとか、浮き彫り、浮き出しという意味である。また、エンボシングとは、エンボスマシンによって、紙を雌(凹)型と雄(凸)型との間にはさみ、圧を加えて絵柄・文字を浮き出させることをいい、凹凸模様が彫刻してあるエンボスロールにより、表面に凹凸加工した紙をエンボス紙というが、ここでいうエンボシングは、ベタ部がインキのタックによって引張られ、その部分だけが膨らんで盛り上がる状態になる現象をいう(右図参照)。発生要因はくわえ尻カールと同じであるが、くわえ尻カールが、くわえ尻だけに起こるのに対して、エンボシングはくわえ尻以外のベタ部でも発生する。

なお、印刷後カール、くわえ尻カール、エンボシングとも放置後、経時的にその程度が軽くなることがある。


(2007年10月1日)



更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)