インキ転移不良・画像不良
今回はインキ転移不良と画像不良について触れる。
インキ転移不良
印刷物にある絵・文字などの画像は、ある大きさを持つ網点(ドット)の集合体として表わされている。そのため、印刷では原稿から写し取ったフィルム上の画像を忠実に網点にして再現することが重要である。しかし、実際の印刷では、網点のインキ付着の均一性はもとより、その形状および大きさの異常により画像の再現性が損なわれることがある。このなかで網点の着肉均一性と、その形状に関わるトラブルがインキ転移不良であり、網点の大きさに関する再現性不良が、いわゆる網点の太り(ドットゲイン)と網点の細りであるが、ここではこれらを中心に説明する。
インキの転移とは、版(あるいはブランケット。以下版という)の画線部から印刷媒体(紙など)へインキが転写されることである(右のインキの転移図参照)。
この場合、白紙面にインキが転移する場合と、すでに印刷されたインキ上に転移する場合とがある。後者の場合を特にトラッピングという。版上のインキは、紙に圧着されて紙に転移するが、紙にすべてが転写されるわけではない。版上の薄いインキフィルムは2層に分裂し紙に転移、もう一つのインキ層は版上に残り循環するが、紙に転移したインキ量の比率を転移率といい、次式で表わされる。
なお、版に残ったインキ量を基準にした、
をインキ転移係数というが、インキ転移率が一般的に用いられる。
インキの転移率はインキの物性だけでなく、ブランケットの材質・表面性状、印刷速度、印圧、紙の種類、吸油性・表面粗さなど種々の要因に左右される(下のインキ転移率への影響図①②参照)。
このように、紙などの印刷媒体へインキが転写され画像が形成されるが、この画像にむらや欠落が生じたりすれば、見苦しく原稿の再現にはほど遠く、欠陥印刷物となる。こうした転写による再現性が得られない現象をインキ転移不良という。
インキ転移不良は、インキ着肉不良、インキ受理性不良ともいわれ、特に網点部の印刷(濃淡)むらの場合を網点再現性不良というが、インキの濃度むらのことで、ただ単に着肉不良とか着肉むら、印刷むらということがある。また、用紙サイドから見た場合、着肉むらの要因により、後述のトラッピング不良に起因する「藍むら」(主に2色目の藍インキでむらが目立つことからこの名がある)とか、吸水性不足に起因する「水負け」とかいうこともある。ここでは主にトラッピング不良と水負けに起因する印刷むらについて概記する。