「紙化工程」は、「原料(紙料)調成工程」と「抄紙工程」とから構成されている。本ホームページ「紙への道」紙についての「紙ができるまで」に掲載されているのでご覧ください。
1.原料調成工程
「原料調成工程」は、抄紙に用いられるパルプ原料や薬品を最終的に調整・配合して、抄紙機(ペーパーマシン)に送り出す直前の工程である。機能的には、①パルプの受入れ、②パルプの叩解、③パルプの配合、④填料・サイズ剤・染料等の薬品添加、⑤損紙の処理、⑥白水回収、⑦除塵・脱気とともに、原料濃度やpHの調節などを行い、紙の基本品質が決定される重要な工程である。その主な機能について説明する。
(1)内添薬品
さらに、紙に要求される様々な性質を付与し目的の品質を得るために、原料パルプに各種の薬品を添加・配合する。次表に内添薬品の主な添加目的と種類を掲げる。
主な目的 | 種類 | |
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填料 | 紙の不透明度・白色度・平滑度などの向上。反面、添加量は緊度(嵩)の減少、表面強度、紙力は低下傾向 | クレー(白土)、タルク(滑石)、炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、ホワイトカーボン(合成ケイ酸塩)、尿素樹脂系等の合成有機顔料等 |
接着剤 | 繊維間結合を強化し紙力を増し、紙表面の毛羽立ちやピッキングを抑制 |
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サイズ剤 | 水、筆記用インクなどの液体の浸透に対する抵抗性付与…水性インクのにじみ防止(ペン書き適性の向上)など |
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サイズ定着剤 |
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サイズ剤の定着 |
染料 | 着色、視感白さの向上 |
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紙質向上剤 | 紙力増強、歩留り向上、地合い改善など |
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消泡剤 | 発泡防止、消泡作用 | シリコーン系消泡剤と、界面活性剤、ポリエーテル、高級アルコールなどの有機系消泡剤等 |
スライムコントロール剤 | 微生物などの殺菌、現在は殺菌タイプのスライムコントロール剤を1日3~4回衝撃添加する方式が主流 | 殺菌タイプ、抑制・防カビタイプ、その他タイプ(酵素系など) |
(2)内添薬品の説明
①填 料
填料は不透明度、白色度、平滑度、インキ吸収性などを向上させる目的で添加され、クレー(白土)、タルク(滑石)、炭酸カルシウムなどが多く用いられているが、近年は中性紙の増大で炭酸カルシウムの使用が増えてきている。
例えば筆記・印刷用紙には普通5~15重量%の填料が配合されており、中には20%以上のものもあるが、填料の増量は特に紙の不透明度は向上するが、表面強度、紙力は低下傾向となる。
価格は一般にパルプより安く、使用比率も比較的に大きいため、重要な製紙原料のひとつとなっている。
なお、二酸化チタンは高価であるが、高不透明度を与えるために薄紙などで高い不透明度が要求される紙(事典用紙、特殊紙など)に使われることがある。その他、新聞用紙の裏抜け防止よとしてホワイトカーボン(微粒子の合成ケイ酸塩)や尿素樹脂系の合成有機顔料があり使用されている。
また、紙の種類によっては、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム粉末、珪藻土などが使用されることがある。特に二酸化チタンは高価であるが、高不透明度を与えるために薄紙で高い不透明度が要求される紙(事典用紙、特殊紙など)に使われる。
②ロジンサイズ・硫酸バンド
紙はもともと多孔質で吸水性に富んでいるので、印刷・筆記用紙のインキの滲みを防いだり、耐水性を付与する必要がある。この処理をサイジング、このために添加する薬品をサイズ剤といい、以前から主としてロジン(松脂)およびその定着剤として硫酸バンド(強酸性化学物質。硫酸アルミニウム、アラムともいう)が用いられていたが、中性紙の普及で中性サイズ剤が使用されている。
硫酸バンドには、填料や微細繊維を凝集させて抄紙機ワイヤー上での歩留りを向上させ、さらに木材に起因するピッチトラブルを防止するという優れた働きもあり、抄紙にとっては貴重で安価な薬品である。
このロジンサイズと硫酸バンドの組合せによる抄紙の最適pHは5前後の酸性領域にあるので、抄紙される紙は酸性紙(酸性抄紙)と呼ばれることがある。
③中性サイズ・中性紙
中性サイズ・中性紙については、本ホームページ「FAQ(10) 中性紙とは」をクリックしてご覧ください。
④その他の薬品
その他の薬品として、歩留り向上剤、紙力向上剤、スライムコントロール剤、消泡剤、染料などがそれぞれの目的に応じて添加されている。