特殊紙について
「特殊紙」とは、通常、上質紙などの「一般紙」に対比して用いられる用語です。多品種小ロット生産の高付加価値製品で、特定の用途にのみ使う紙で、用途によってそれぞれ適合した性質を付与されています。
基紙(原紙)は、通常の天然セルロースである植物繊維からできていますが、原料・薬品・抄紙条件などが一般紙と異なり、特殊な条件で抄紙されたものや塗工、ラミネート、含浸などの2次加工されたものも含まれます。紙の品種分類体系では「特殊紙」の品種項目はなく、特殊印刷用紙、情報用紙、雑種紙などに分類された品種区分の中に入っております。
このように、特殊紙の範囲は広くその全体を正確に統括することは難しく、企業により「特殊紙」として把握されている内容にも差があるほか、業界でも分類や統計の面で未整備な部分が少なくありません。特徴としては、次の点が挙げられます。
- 一般に特殊紙マシンと呼ばれる小型低速のマシンで、比較的多品種小ロットで生産され、原料配合、薬品配合、叩解条件などにおいて上質紙などとかなり異なります。
- 特殊用途向けの特殊機能を持ち汎用性に乏しく、メーカー間の品質競争、開発競争が激しい反面、比較的ライフサイクルが短い、
- 面積売り、ユーザーへの直売、あるいは特定ルートで販売するケースが多く、小回りの利く生産、出荷体制が取られています。従って、その製品、商品は特定のユーザー・流通と比較的、深い結び付きがあります。この点も、一般紙と大きく異なります。
なお、次のファンシーペーパー、加工紙も特殊紙の中に含まれます。場合によっては、下記の機能紙も特殊紙に入れたり、逆に機能紙の中に特殊紙に入れることがあります。
ファンシーペーパー
「ファンシーペーパー」とは、特殊紙の一種で、主に色、模様や柄などをつけた綺麗で装飾性の高い紙のことです。すなわち、印刷用紙や色上質紙などの一般紙は、印刷することにより新たな表現を持つようになります。それに対してファンシーペーパーは、一般に色がついておりますが、紙そのものにさまざまな色や模様、柄、風合いなどがあり、それぞれが独特な特徴ある表情を持っており、紙そのままを活かしていろいろな用途に活用できます。
用途は多種多様ですが、主なところでは、本の表紙、扉、見返し、カバー、帯紙やノートや便箋などの装丁、パンフレット、ラベル、グリーティングカード類、案内状、カタログ、ダイレクトメール、メニュー、化粧箱の装飾、パッケージ、高級包装用途、イベントでのPR用紙などがあり幅広く使われています。
さらに1枚だけでもきれいで、風合いのある紙のため、個人的な用途も多く趣昧の世界でも使われています。しかし、一般紙より高価なため制約がありますが、この紙を上手に使うことで製品の高級感を増すなど、他商品との差別化が図れることから普及が進んでおります。
ところで、ファンシー(fancy)とは想像とか、空想、新奇な趣向を凝らしたさまの意を持っていますが、ファンシーペーパーは提案する側や使う側のアイディアによっては、夢が無限に広がる紙と言えます。
なお、ファンシーペーパーとは日本で生まれた言葉であり、海外では通用しません。欧米ではカバーアンドテキストファインペーパーとかカバーペーパーなどといわれます。
カラフルで個性豊かなファンシーペーパー。ファンシーペーパーは、豊かな色・風合いで美的感覚を満足させてくれる紙ですが、製造方法、紙質、色、表面の加工、柄、パターン(模様付け)などの違いでその種類は多くあります。また、機械抄きで、洋紙の一種としての仕上げですので、手漉き和紙独特の風合いとは異なりますが、和紙に似たものもあります。
多彩な染色や毛染繊維の混抄、すのこ仕上げ、エンボス加工などにより、主に次のように分類されています。
- 着色紙(プレーン品)…さまざまな色、風合いを持ち、原則として新たに表面加工、柄などを加えないもの。
- 模様紙(マーク紙)…レイド、エンボス模様などがあります。
- レイド紙(簀の目状の透し筋入り紙)…ダンディロールや毛布目(フェルトマーク)で型押ししたソフトで風合いのある紙で、規則的な簀目や不規則な簀目があり、柔軟でしかも腰のある風雅なものです。
- エンボス紙…彫刻ロールや型付ロールで紙にプレスして模様をつけます。模様には梨肌、絹目や各社独自のパターンも多くあります。
- 異種材料抄き込み紙(ブレンド・混ぜ物)…毛入れした紙(毛入紙)に代表されますが、繊維以外のチリ入、染色繊維抄き込みなどいろいろな風合いのブレンド品があります。
- 高級印刷紙…ファンシーペーパーは普通あまり印刷せずに風合いを活かして使用しますが、あえて印刷することで風合いを良くする紙です。模様光沢紙(カレンダー仕上げ等)、ファンシーコーテッドペーパー(塗工ファンシー紙)などがあります。
- 再生紙(古紙配合紙)
- 非木材パルプ配合紙
- その他
加工紙
「加工紙」とは、日本工業規格 クラフト紙袋用語(JIS Z 0102 番号1214)に、「原紙にコーティング、含浸、箔張りなどの加工をした紙」と定義付けされています。対応英語は「converted paper」です。
ところで、加工紙は特定用途に使用するために特殊機能を付与するために塗工、含浸、エンボス、蒸着などの加工をした紙です。その基紙は、通常の植物繊維から成っており、主として包装、産業、情報用途などに使われます。
種類にパラフィン紙・硫酸紙などがあります。アート紙などの塗工紙も加工紙の中に入れることがありますが、印刷用紙として生産量が多く、大きな地歩を固めている塗工紙は、一般的にこの区分に入れないようです。
注:コンバーター(converter)
ここで、英語のコンバーター(converter)とは、「変換するもの」の意ですが、もともと情報やエネルギーの形態を変換する装置の総称のことを言います。そして電気の交直流変換装置(交流を直流に変換する装置)、テレビのチャンネルを切り替える装置などを指しますが、紙関係で用いられるコンバーター(converter)とは、紙、フィルムなどの基材に印刷、コーティング、ラミネーティングなどの方法で新たな価値(機能)を付与する加工業者のことをいいます。紙関係では、特に印刷業者をいうことが多いようです。
なお、コンバーティングとは紙、板紙、フィルム・シート、金属箔、鋼板、不織布、合成紙などの連続した材料(ウェブ基材)に何らかの加工を施して、その材料にはない新たな価値(機能)を付与することをいいます。基材に価値を付与する方法には、コーティング、ラミネーティング、印刷、蒸着、含浸、エンボスなどがあります。