コラム(41) 鉄の紙とは

「魔法の紙」は合成紙。「ユポ」に代表される合成紙は、近年、選挙の「投票用紙」にも使われ、大活躍していますが、折り曲げに強いなどの特徴から、折ってもすぐにもとに戻ってしまう性質があるので、二つ折りにして投票箱に入れた用紙が、投票箱の底につくときにはちゃんとひとりで折り目が開き、ほぼ平らに復元します。その時間、わずか一秒前後。そのため開票作業が容易になり、開票時間は普通紙「色上質紙」を使用していた従来の約1/3に短縮されるということです。そのため合成紙は「魔法の紙」と言われています(コラム(33) 第三の紙とは参照)。

「電子の紙」(電子ペーパー)は、次世代の携帯型の薄型ディスプレーのひとつで、見た目が紙に近く、紙のように薄くて軽いうえに、丸めることもできます。紙の長所とされる視認性や携帯性を保った表示媒体のうち、表示内容を電気的に書き換えることができるものをいいます。従来の液晶よりも文字が読みやすく、通電なしで長時間表示を保持することができます。電子ディスプレーと紙の長所を併せ持った新しい技術として、注目されており、ポスターなどの広告宣伝物や電子書籍、電子新聞などの表示装置として用途応用が期待されています。

 

それでは「鉄の紙」とはどんな紙でしょうか。これは昨年(2005年)11月4日付け日本海新聞の「健康歳時記」(丸山寛之氏執筆)で紹介されていたものです。

それによれば「鉄の紙」とは最近発売された花王株式会社の「蒸気温熱シート」のことを言います。別にこの商品の宣伝をしているわけではありませんので、ご容赦をお願いし、少し説明をしたいと思います。

 

この「蒸気温熱シート」は、花王が昨年10月8日、一般医療機器として新発売した肩、腰、腹等を温める商品名「めぐりズム 蒸気温熱パワー」のことです。

このシートは、一見したところは、防寒用の使い切り「カイロ」(懐炉)に似ていますが、発熱体の仕組みが全く違います。使い捨て「カイロ」の中身は、鉄粉と活性炭、食塩水を含んだ保水剤(木炭、バーミキュライトなど)で、これらを袋中でまぜ合わせときに鉄(鉄粉)が錆び始めますが、このときに発生する酸化熱そのものの熱を利用します。

これに対して「めぐりズム 蒸気温熱パワー」は、鉄と空気中の酸素が反応して熱を発生するというメカニズムは基本的にカイロと同じですが、使い捨てカイロとは本来の用途が異なります。

使い捨てカイロは防寒・保温目的に作られているのに対し、「めぐりズム 蒸気温熱パワー」は、血行をよくする、筋肉のこりをほぐす、筋肉の疲れをとる、胃腸の働きを活発にする、神経痛・筋肉痛の痛みの緩解、疲労回復などの効能効果を持つ家庭用の一般医療機器として認可されています。

 

これらの効能発現の源は、シートから出る蒸気による温熱です。シートの紙パルプには鉄粉が均一に漉き込まれており、さらに水分も含みますので、シートが空気に触れると、空気中の酸素でシート内の鉄粉が酸化し、熱が生じます。この熱で、シートに含まれている水分を水蒸気にし、温熱が発生します。

すなわち、鉄粉と水分を均一に漉き込んだ約3mmほどの薄型のパルプシート、いわゆる「鉄の紙」から蒸気による温熱が均一に広く、じっくりと発生します。

 

蒸気が出る仕組みは、シートの白い面(肌に貼る面)には小さな穴があいており空気や蒸気を通します。またシート内部には鉄粉と水分を含んだ発熱体があり、開封すると、シートの白い面を通って空気中の酸素が中に入り、発熱体の中の鉄粉が酸化して熱が発生します。その熱で、発熱体に一緒に含まれている水分が蒸気になり、シートの白い面を通って出てくるようになっているとのことです。

 

そしてこの「鉄の紙」から出る約40℃の温度と蒸気の放出が5~8時間続く温熱効果により、肩や首、腰、腹を蒸しタオルのように心よく、じ~んわり深部まで温め、患部の血のめぐりを良くし、筋肉のこりをほぐし痛みや疲れをやわらげ、腹にあてると胃腸の働きを活発にするというものです。

 

なお、今冬は例年になく、全国的な寒波の襲来と記録的な大雪で寒く、使い捨てカイロや温熱シート「めぐりズム」などが予想以上に需要があるという。

(2006年2月1日)

 

参考・引用文献

  • 日本海新聞 丸山寛之著「健康歳時記」(2005年11日4日付)
  • 花王株式会社ホームページ 花王 めぐりズム 蒸気温熱パワー
  • 「広辞苑(第五版)…CD-ROM版」(発行所:株式会社岩波書店)
  • 世界大百科事典(第2版 CD-ROM版)…日立デジタル平凡社発行

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)