コラム(63-4) 「和紙」と「海苔」の類似点について 2

(3)数える単位

次に数える単位についてです。紙や板・皿・葉などの薄く平たいものを数える語として「枚」がありますが、海苔の数え方も同じです。1枚、2枚…と言う具合です。さらに紙や海苔のような薄いものを数える単位で「帖(じょう)」が使われますが、これは10枚を1帖と言います。ただ紙の場合には、種類によって異なり、例えば美濃紙・杉原紙などは48枚、半紙ならば20枚、ちり紙は100枚が1帖となります。そして10帖をひとまとめにして紙の帯を付けて束として、それを単位とし、1束(ひとたば/いっそく)とか1把(わ)と言います。

海苔の基本単位も「枚」で、10枚を束ねて「1帖」という単位で表わします。さらに1帖(10枚)の海苔を10帖(100枚)づつ結束します。

また、海苔1枚(全判)の基本サイズは縦21cm×横19cmです。長い方が縦(21cm)で短い方が横(18cm)で、各産で海苔の大きさがマチマチだったようですが、昭和40年代に今の標準サイズに全国統一されました。この寸法は尺貫法では5寸5分×5寸ですが、浅草紙を漉いていた木枠や簀のサイズに由来しているということです。なお、海苔の重さは1枚3gが基準とされています。

 

(4)特に湿気(水分)に敏感

「直射日光および高温多湿のところを避けて保存して下さい」と記載されてるように、海苔は非常に湿気に弱く、直射日光に当たることでも品質劣化につながります。紙も同様で湿気に弱く、直射日光に当たれば退色などの品質劣化を起こします。このように両方とも特に湿気(水分)に敏感で、悪い影響を受けます。

しかし、海苔は紙よりも湿気に敏感です。私たちが手にする密封状態の缶や袋に入ってる海苔は、火入れ乾燥と称する再乾燥処理が施されており、約2%前後の水分含有率ということです。海苔のパリパリとした手ごたえやごたえは、この低い水分率にあるわけです。

ただ、この保有水分は一般に空気中に含まれている水分率、いわゆる湿度よりも非常に低いので、開封して海苔を空気中に取り出すと、すぐに空気中の水分を吸収してフニャフニャになってしまいます。紙の場合は、その種類や坪量によって差がありますが、一般に5~8%くらいで大気の湿度とほぼ同じくらいですので、その差が小さく水分の出入りが少ないために、品質変化があまり認められません。

その点、海苔の湿度変化は早くて著しいわけです。海苔を特に冷蔵庫等から取り出して使う場合は、袋等の密封したまま海苔が常温に戻るまで待ってから開封したほうが美味しくいただけます。これは冷蔵庫等で冷やされ、いっそう乾燥しているため、その海苔を取り出して、湿気のある空気中に置き、すぐ開封すると急速に空気中の水分を吸収して湿気ってしまい、あっという間にフニャフニャになってしまうからです。そのために冷蔵庫等から取り出したら、密封のまましばらく置き、周りの温度、雰囲気に慣らしてから開封すれば、周りとの差が縮まり急激な海苔の変化少なくなるためです。海苔は湿気ると風味がおちますので、密封容器に入れて冷暗所で保存します。そして開封したら、早めに食べるのが一番です。

 

(5)包むもの

海苔は鮨やおにぎりの海苔巻(のりまき)のように「食べ物を包む物」として使用され、自らも食されます。また紙は、ノートや新聞紙、雑誌などのように書いたり、印刷したりして情報を伝えたり、ティシュペーパー、トイレットペーパーなどのように液体やよごれをふきとるために使われたり、包装紙、ショッピングバックなどのように包んで運ぶなど、さまざまな用途に使われています。紙は海苔と同じように「物を包む物」として役目を持っており、そのように使用されています。すなわち、海苔は「食べ物を包む物」として、紙は「物を包む物」として有益に活用されます。

 

もちろん、紙は「食べ物を包む物」としても使用されますが、人間はその食べ物は食べれても包んでいる紙を食べることはできません。この点海苔とは違います。

紙は木材や楮・三椏などの植物繊維を主原料として造られます。その主成分はセルロースですが、繊維素とも呼ばれている高分子化合物で分子式 (C6H10O5)n を持つ炭水化物(多糖類)です。言い換えますと、セルロースはグルコース[ブドウ糖(単糖)…分子式C6H12O6]が多数結合(重合)して生じたもの、すなわちブドウ糖の重合体です。澱粉もブドウ糖の重合体ですが、人間は澱粉を食べ、それをアミラーゼによってブドウ糖に分解して栄養源としています。しかし、人間にはセルロースをブドウ糖やブドウ糖が数個つながったオリゴ糖に分解する酵素「セルラーゼ」がありませんので、「紙」を食べても消化できなく栄養源にすることができません。そのためいくら紙好きでも無理に食べたら消化不良で下痢を起こすでしょう。

ちなみに、この球上で、最もたくさん存在している再生利用が可能な有機化合物(炭水化物)のひとつがセルロースです。樹木はもちろんのこと、雑草にいたるまで植物体にはセルロースがいっぱい含まれています。セルロースは人間では消化できませんので、それらは人間の食用にはなりません。もしセルロースが消化でき、人間の食用としても消費されていたら、食べつくされるか、奪い合いが過激になり、紙の原料でもあるセルロース分が豊富な木材の枯渇問題や球環境問題などがもっともっとクローズアップし、大問題になっていたことでしょう。いや逆に一度読んだ新聞紙などは、用が終われば調理し食物として食べれば再利用にもなり、良いことかもしれません。しかし、幸か不幸か分かりませんが、現実には人間には分解が難しく、消化できません。

これに対して、海苔は柔らかな葉状または苔(こけ)状の海藻類で、その主成分は糖質(分子式 CmH2nOn)とタンパク質で、約40%ずつを占め、その他、水分11%、灰分7%、脂質2%よりできていますので、人間の食用になり、栄養となります。そのため紙の同じように「包む」機能がありますが、それ自体も食べることができるわけです。

 

このように手漉き「和紙」と「海苔」は非常に似ているところが多くあります。きょうは海苔巻きにしたおにぎりでも食べながら手元にある和紙を触ったり、眺めたり、和紙の勉強をされたらいかがでしょうか。きっと栄養になることでしょう。

(2007年3月1日)

 

参考・引用文献、サイト

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)