コラム(64-1) 紙媒体と電子メディア(3)進む雑誌離れ

「止まらぬ雑誌離れ」、これは日本経済新聞の文化欄(2007年3月3日付)に掲載された見出しです。また、それより先に朝日新聞に2月1日から「現代雑誌事情」が「個性薄れ落ち込む部数」など3回に分けて連載されました。そして、それらの基礎資料となった昨(06)年の国内出版物の発行・販売や媒体別の広告費実績もそれぞれ発表がありました。今回はインターネットの普及などから、落ち込み止めがかからない雑誌市場について、あらためてまとめました。

 

縮小する雑誌市場

先の日本経済新聞は2006年の雑誌販売額が9年連続で前年割れとなった上、マイナス幅が過去最大を記録し、出版社にとって雑誌は書籍とならぶ柱であるだけに、戦略の見直しを迫られている、としています。

その資料のもとである出版科学研究所(東京・新宿)によると、06年の雑誌推定販売額は前年比4.4%減の1兆2200億円で、1999年の4.2%減を上回る過去最大の落ち込み幅となりました(右図参照…日本経済新聞から引用)。そしてその景は「インターネットや携帯電話など他メディアとの競合、中小書店の転廃業、少子高齢化による定期購読者の減少、またコンビニエンスストアの低迷で返品増加などの影響が大きい」と同研究所では分析しているとのことです。

また日本経済新聞社は、楽リサーチの協力を得てアンケート調査[2月16~18日にネット上で男女1,000人を対象に調査]を実施しておりますが、それによれば、この2~3年で雑誌の購入頻度が「とても減った」「やや減った」と答えた人は合わせて51%、逆に「やや増えた」「とても増えた」とした人は12%に過ぎません。そして購入頻度が減った理由は、「インターネット(携帯電話を含む)利用の増加」が53%、「読む時間がない」28%、「価格が高い」17%となり、インターネット(携帯電話を含む)で情報収集するが半数以上となっております。これらの結果から20~60代の男女のうち、過半数が雑誌の購入頻度を減らし、インターネットなどに流れていると結論づけています。

もう少しアンケート結果を見ていきますと、ネット(携帯電話を含む)で情報収集する理由は、72%の人が「手っ取り早いから」ことを挙げていますが、コストも含め、ネットの手軽さが、雑誌を遠ざける要因になっているとしています。また購入頻度を減らした雑誌のジャンルは「ファッション・美容」が22%、「コンピューター」19%、「料理・グルメ」13%などで、ネットで代替できる情報誌が中心となっています。ただ、20代、30代の男性では3割近くが「漫画」を挙げたということです。

なお、出版関係者が共通して「雑誌」落ち込みの大きな原因として挙げているのが、以前なら雑誌に頼っていた情報が新しいメディアを通して簡単に入手できるようになった「インターネットや携帯電話の影響」でるとのことですが、このアンケート調査結果はそれを裏づけています。

 

「雑誌」の定義について

ここで「雑誌」の定義について確認しておきます。出版科学研究所のホームページから引用しますと、「雑誌」という言葉は、「書籍」と対峙する言葉として当たり前のように使われています。しかし、一口に雑誌といっても様々な形態があります。

まず辞書的な意味からいいますと、(『出版事典』出版ニュース社・71年刊より)「一定の編集方針のもとに種々の原稿を集め、ふつう週以上の間隔で定期的に刊行される、原則として仮綴じ冊子形態の出版物」とあります。要約すれば「雑多な事が掲載されている定期刊行冊子」のことと言えます。

ただ、もう少し対象を絞っていて、出版科学研究所における雑誌とは“雑誌コード"を持つもので、書店やコンビニといった小売店に流通している商業出版に限っています。もちろん、週刊誌や月刊誌、季刊誌などが含まれます。

なお、直販誌やフリーマガジンなどは基本的に含まれません。また、方のタウン情報誌など域で販売されるものも原則として含まれず、全国で誰もが購入できる雑誌を対象としています。さらに、不定期に発行されるコミックス(漫画単行本)やムック(雑誌風書籍、magazine(雑誌)とbook(書籍)との合成語)といった刊行物は、雑誌コードを持っているため統計では雑誌(月刊誌)に含まれます。

ところで、同研究所で統計をとっているいわゆる「漫画」といわれるものには、コミックス(漫画単行本)とコミック誌(漫画雑誌)の二つの分野があります。例えばコミックスとは、「ドラえもん」や「ONE PIECE」など多くが1巻、2巻と巻数もので刊行されている単行本のことで、コミック誌は「週刊少年ジャンプ」や「りぼん」など定期的に刊行されている漫画雑誌です。また、この二分野を総称するとき「コミック」と呼んでいます。

 

雑誌は9年連続の減少…昨年の出版物発行・販売実績

さらに続けます。雑誌の不振が長引き深刻です。出版科学研究所が「出版月報」1月号で特集「2006年出版物発行・販売概況」を公表し、新聞にも報道されました。その概略をまとめます。

それによると、昨年の出版物販売額は2.0%減、2年連続前年割れ。書籍は前年を上回るも、雑誌は過去最大の落ち込みとなりました。もう少し説明しますと、昨年の書籍と雑誌を合わせた出版物の推定販売金額は、前年比2.0%減の2兆1525億円と2年連続で前年を下回り、ピークであった10年前の1996年の2兆6564億円から約2割縮小しています。

内訳では、書籍の販売金額は同1.4%増の9326億円と2年ぶりに前年を上回りました。ただ、年によって違いがあり、「ハリー・ポッター」シリーズ(静山社)や「世界の中心で、愛をさけぶ」(小学館)といったメガヒット商品の有無によって、年間販売実績は大きく上下する傾向が強まっており、昨年は205万部出た「ハリー・ポッター」(第6巻)や「国家の品格」(新潮社)、「下流社会」(光文社)などの教養新書や、文庫版「ダ・ヴィンチ・コード」(角川書店)などのベストセラー効果、中高年向けの塗り絵、書写ものなどの売行きが好調で書籍の販売金額を上げました。なお販売部数面では、書籍は教養新書、文庫、ケータイ小説など低定価本の売行きがよかったため、販売金額の伸びを上回る前年比2.1%増となっています。

一方、雑誌の販売金額は同4.4%減の約1兆2200億円と9年連続のマイナスで、しかも99年の4.2%をしのぐ過去最大の落ち込みとなりました。雑誌の種類別では、月刊誌・週刊誌ともに1997年にピークを迎え、以降前年割れが続いていますが、月刊誌の販売金額は9523億円で前年比3.9%減と99年にならぶ過去最大の落ち込みとなりました。読者の定期購読率が低下しているため、各誌発行部数が漸減傾向にあるためです。さらに若者の人口減少による消費力減退、中小書店の転廃業による小売り拠点数の減少、インターネットの情報サイトやフリーペーパーといったフリーメディアとの競合などがあり、販売環境も悪化していることもマイナス要因となっているとしています。

また、週刊誌は月刊誌よりも落ち込みが大きく、販売金額は2677億円で同6.5%減と前年の7.1%減に続く2年連続の大幅減となりました。月刊誌よりも刊行サイクルが早いため、定期購読率の低下がより強く現れており、特に大部数である週刊少年コミック誌の低落が著しかったことや、パソコン誌や女性誌の休刊が相次いことも大きく影響しています。

さらに販売部数面でも雑誌は低下が大きく、月刊誌が前年比5.2%減、週刊誌が同7.8%減と販売金額の落ち込みをさらに上回る減少となっていますが、要因は上記以外にも年間の創刊点数が161点と、前年より40点も大幅マイナスとなったことが響いており、出口の見えない状態が続いていると報告されています。

 

なお、コミックス(単行本)とコミック誌(雑誌タイプ)を合わせた漫画(コミック)は、雑誌販売額のうち全体の4割弱を占めておりますが、06年のコミック市場の推定販売金額は4,810億円で前年比4.2%減でした。コミックスは2年ぶりのマイナス、コミック誌は定期購読者離れによって11年連続のマイナスであり、コミックの低落も雑誌全体の落ち込みに大きく影響しています。

例えば、日本一の漫画誌といえば後述の「月刊少年ジャンプ」の先輩格であり、集英社の看板である「週刊少年ジャンプ」、通称「ジャンプ」ですが、発行部数が現在も280万部を誇っています。しかし、漫画ブームもあり、かつて1号あたりの発行部数が653万部(1995年3,4号)と歴代最高部数を記録しました。他にも大部数誌が多く、95年の販売金額はコミック誌3,357億円で、コミックス(漫画単行本)2,507億円とその売り上げの差は1,000億円近くに及んでいました。しかし、その後の「週刊少年ジャンプ」や青年コミック誌の大幅な部数減、少子化、作品力の低下など様々な要因が絡み、コミック誌の落ち込みが特に目立つようになり、コミック誌の部数は年々大幅に減少していきました。そして05年は販売金額が初めてコミックスを下回るまでに落ち込み、さらにテレビ化・映画化などのメディアミックス作品でメガヒットが続出しているコミックスとの差が拡大し、コミック誌の読者離れが加速しています。ちなみに、「週刊少年ジャンプ」の発行部数は05年は295万部(年間平均)とこの10年間で半減近くに低落し、最近では推定280万部となっています。

 

この“書籍堅調、雑誌不振"という構図について同研究所では、「定期性の高い雑誌は読者離れが目立ち、その時の関心に応じて買う書籍にシフトしている。多点化少量時代には長期展示で部数を積み上げていける書籍のほうが手堅い」と指摘、さらに「雑誌の下げ止まる気配はまだみられない」としています。

 

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更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)