コラム(64-2) 紙媒体と電子メディア(3)雑誌市場

「日本の広告費」(電通調べ)でも、雑誌は6年連続で減少

次に「雑誌」の不振を別の資料で見ていきます。「日本の広告費」は電通が毎年発表していますが、今年も2月20日に公表されました。それによれば、景気回復やトリノ五輪など世界的イベントが寄与し、2006年の国内総広告費は前年比0.6%増の5兆9954億円となり、3年連続で増加しました。メディア別広告費ではテレビ、新聞、雑誌、ラジオの「マスコミ4媒体」の合計が3兆5778億円で2年連続で減り、4媒体すべてで減少しました。4媒体で最も落ち込みが大きかったのは新聞で前年比3.8%減。広告の構成比が大きい消費者金融の広告が大幅に減ったことが響いたということです。

一方、インターネット広告は4媒体の減少分を補う形で伸びました。ネット広告費は96年にはわずか16億円でしたが、前年比29.3%増の3630億円で高成長を持続、雑誌に肉薄しております。06年はインターネット利用者数が人口の66.8%となり、モバイル化、ブロードバンド化がさらに進展したこともあり、同広告費のうち入力したキーワードによる検索結果に対応して関連する広告を載せる検索連動型広告が、前年比約1.6倍の930億円と伸び、携帯電話向けなどのモバイル広告は390億円に達しました。

なお、今(07)年の総広告費は1.1%増の6兆613億円と予想されていますが、04年にラジオを抜いたネット広告は、さらに国内広告市場をけん引する勢いで、07年には約20%伸びると見込まれており、雑誌も抜いてテレビ、新聞に次ぐ「第3の媒体」に躍り出ると同社は試算しています。

これに対し雑誌広告は前年比1.5%減の3887億円にとどまっています。市場規模は01年に前年を下回って以来、6年連続で減少していることになります。06年は女性誌やパソコン・ネット系雑誌の休刊が目立ち、休刊誌数が創刊誌数を上回り、創刊による広告費の押し上げ効果も縮小しました。

なお、同じくインターネットの影響が大きく、若者を中心に「新聞離れ」が進行している新聞の広告費は、9,986億円で前年比96.2%で2年連続の減少。「マスコミ4媒体」のうち他のテレビ広告費は2兆0,161億円(前年比98.8%)。雑誌広告費は3,887億円(前年比98.5%)。そしてラジオ広告費は1,744億円(前年比98.1%)で、いずれも減っているものの新聞の減少率が大きく、新聞広告費の縮小傾向が目立っています。

前回も載せましたが、下表に総広告費に対する新聞広告費の構成比の推移(電通資料から算出)を参考までに示しておきます。

新聞広告費の構成比推移(単位:%)
1955196019701980199019952000200120022003200420052006
構成比 55.5 39.5 35.1 31.1 24.4 21.5 20.4 19.9 18.8 18.5 18.0 17.4 16.7

 

新聞広告費の構成比は昨年も16.7%となり、低下傾向に止めがかかりません。およそ50年前の1955年には、新聞広告費の構成比は55.5%であったものが、テレビの躍進で5年後の1960年は39.5%と激減しましたが、それ以降も減少傾向が続いております。

 

さらに雑誌の落ち込みは続くのか?

雑誌低迷の話は、まだまだ続きます。「月刊少年ジャンプ」が休刊! この見出しに吃驚しました。あの「少年ジャンプ」がと思いましたが、よく見れば月刊のほうでした。それにしても名門出版社の人気漫画雑誌が休刊するとは。あらためて出版不況が深く押し寄せていることを実感しました。

それは2月23日のことでした。集英社は自社の漫画雑誌「月刊少年ジャンプ」を今年6月6日発売の7月号で休刊すると発表しました。これは「業績不振ではなくて発展的解消とし、時代に合った新たなコンセプトで新らしく月刊マンガ誌を今年末をめどに創刊する」(同社広報室)ということですが、部数がピーク時の3割程度に落ち込むという販売不振が景にあるようです。出版不況と多メディア化の流れは、伝統ある看板も下ろすという事態になり、ついに月刊漫画誌を代表するブランド“月ジャン"まで飲み込み始めたようです。

同誌は1970年に、「週刊少年ジャンプ」の兄弟誌として創刊、1974年から月刊化され、講談社の「月刊少年マガジン」、小学館の「コロコロコミック」とともに少年向け月刊漫画誌をリードしてきました。84年に発行部数100万部の大台を突破し、90年には約150万部の発行部数を誇った人気漫画雑誌も、それをピークに以降は漸減が続いてライバル誌に水を開けられてきました。05年には「コロコロ」が109万部、「月マガ」が100万部を維持したのに対して、「月ジャン」は40万部。そして昨年の平均発行部数は約42万部で、現在は約37万部と100万部以上も部数を落とすなど低迷しているとのことてす。

「月ジャン」の休刊(予定)について、出版業界関係者は「コミックス(単行本)しか売れず、どこのコミック誌(漫画誌)も苦戦している。他誌なら40万部近く出れば御の字だが、もとが大きかっただけに全盛期の4分の1は確かに減らしすぎた」と月ジャンの現状を明かしているとか。

 

米国でも似たような話があります。去る3月27日付の各新聞によれば、米雑誌「ライフ」廃刊…米国の報道写真雑誌として一時代を築いた「ライフ」は、4月20日号をもって休刊すると発行元のタイム社が26日(現時間)に発表したというものです。

同誌は1936年に週刊誌として創刊されたが、テレビの普及で72年にいったん休刊。その後、78年に月刊誌として復活したが、売れ行きが落ち込み、2000年に再び休刊。しかし、04年10月以降は無料の新聞折り込み誌として再スタート、毎週1回の発行で部数は全米で1300万部とのことですが、タイム社の「劇的な市場の変化により、ライフの出版続行はもはや適切でない」とのコメントのように、インターネットの拡大などで新聞業界全体の退潮により、広告収入の確保、部数は伸びが難しく、成長は見込めないと判断されたことが廃刊の景という。

同誌はロバート・キャパや土門拳など著名写真家が作品を発表する舞台として、一世を風靡し、写真ジャーナリズムの確立に大きく貢献したが、カメラ付き携帯電話とインターネット利用の普及で、誰もが表現の場を得た現在では存在意義を失ったようです。これを最後に70年余りの歴史に終止符を打つことになり、今後はウェブサイトが残るだけとなるとのことです。雑誌の劣勢は流れなのでしょうか。まだまだ、ほかにも波及し、さらに淘汰され今後も雑誌の落ち込みは続くのでしょうか?

 

ちょつと確認してください

ここでアンケートです。皆さんも次の設問に答え、チェックしてみてください。

 

メディア別調査内容

1.雑誌購読頻度

①毎日必ず読む ②だいたい毎日読む ③読んだり、読まなかったり ④たまにしか読まない ⑤まったく読まない

 

⑴この2~3年で雑誌の購入頻度が①とても減った ②やや減った ③変わらない ④やや増えた ⑤とても増えた

⑵購入頻度が減った理由は①インターネット(携帯電話を含む)利用の増加 ②読む時間がない ③価格が高い ④気に入った情報が得られない ⑤その他

⑶購入冊数は月に①ゼロ ②1 ③2 ④3 ⑤4冊以上

⑷愛読誌の有無 ①ある ②ない

⑸購入頻度が減っていない理由は①内容が好みに合う ②内容が面白い ③情報がまとまっていて読みやすい ④価格が適正 ⑤その他

 

2.新聞の購読頻度

①毎日必ず読む ②だいたい毎日読む ③読んだり、読まなかったり ④たまにしか読まない ⑤まったく読まない

⑴愛読紙の有無 ①ある ②ない

⑵愛読紙数 ①ゼロ ②1 ③2 ④3 ⑤4紙以上

 

3.ラジオ聴取頻度

①毎日必ず聞いている ②だいたい毎日聞いている ③聞いたり、聞かなかったり ④たまにしか聞かない ⑤まったく聞かない

⑴ラジオの平均聴取時間/週 ①30分未満 ②30分~1時間未満 ③1時間~2時間未満 ④2時間~3時間未満 ⑤3時間~4時間未満 ⑥5時間以上 ⑦時間不明

 

4.テレビ視聴頻度

①毎日必ず見ている ②だいたい毎日見ている ③見たり、見なかったり ④たまにしか見ない ⑤まったく見ない

⑴テレビの平均視聴時間/日 ①30分未満 ②30分~1時間未満 ③1時間~2時間未満 ④2時間~3時間未満 ⑤3時間~4時間未満 ⑥5時間以上 ⑦時間不明

 

5.インターネット(携帯電話を含む)の利用頻度

①毎日必ず利用している ②だいたい利用している ③利用したり、利用しなかったり ④たまにしか利用しない ⑤まったく利用しない

⑴ネットの平均利用時間/日 ①30分未満 ②30分~1時間未満 ③1時間~2時間未満 ④2時間~3時間未満 ⑤3時間~4時間未満 ⑥5時間以上 ⑦時間不明

⑵ネットで情報収集する理由は①手っ取り早いから ②情報が最新だから ③情報収集する手段が(ほとんど)ネットしかないから ④価格が適正 ⑤その他

 

6.情報入手メディアについて(上位3種を選択)

①雑誌 ②新聞 ③ラジオ ④テレビ ⑤インターネット(携帯電話を含む) ⑥その他

⑴重視しているメディア ①雑誌 ②新聞 ③ラジオ ④テレビ ⑤インターネット(携帯電話を含む) ⑥その他

 

日本経済新聞のアンケート調査の続きですが、雑誌購入冊数は「月に1~2冊」が42%で、男女、年齢にかかわらず同様の傾向を示しているという結果だそうです。さらに雑誌の購入頻度を減らしていない人に理由を尋ねると、「好みに合う内容」が53%、「内容が面白い」25%、「情報がまとまっていて読みやすい」が20%との回答が多かったとのことです。

それでは皆さんはどうでしょうか。紙派でしょうか。それともインターネット派でしょうか。あるいは両方かもしれませんね。皆さんも世の中の動きのように「雑誌」離れが進んでいませんか。情報を得る手段が増えており、(雑誌を書店などで)見ることがあっても、気に入った情報がなく、購入するほどの価値がないと思われている人もおられるかもしれませんね。

 

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更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)