コラム(71-6) 紙・板紙「書く・包む・拭く」(6)厳しい経営環境下にある新聞業界、ここでも進化を!

世界に誇れる品質水準にある日本の新聞用紙

わが国の紙の品質は世界のトップレベルにあります。その品質の良さを示す例として、よく引き合いに出されるのが新聞用紙(新聞巻取紙)です。すでにご存知の人も多いと思いますが、あらためて紹介します。

わが国と外国の新聞用紙で比較してみましょう。新聞は短時間内に多量の印刷をしなければなりませんので、高速で印刷されています。しかも印刷作業中に巻取紙が切れないことが重要です。日本の新聞用紙は近年、古紙配合が急速に向上し、古紙利用率(古紙配合比率)70%くらいで世界のトップレベルにあります。その上、世界で最も軽く、米坪でいえば43g/m2の超軽量紙(SL紙)が主力で、さらに軽い40g/m2の超々軽量紙(XL紙)も使用されています。一方、海外では用紙の重量49g/m2や46g/m2クラスが主体ということです。

これほど薄くて古紙配合が高い紙にもかかわらず、わが国では印刷中の紙切れは現在、非常に少ない上に、断紙は起きなくてあたりまえという高品質のものが要求されています。

印刷中の断紙の程度(頻度)を表す断紙率という指数がありますが、すべての断紙を表す総断紙率(全断紙回数/総使用本数)と断紙の原因を要因別に示す責任別断紙率(責任別断紙回数/総使用本数)などがあります。

総断紙率の現状レベルは0.1から0.5%くらいですが、用紙原因による用紙責任断紙率の推移を見ていきますと、1970年代初めのころは2~3%でしたが、75年ごろには1%前後に下がり、さらに80年ごろには0.3~0.4%台に減り、現状は0.1%以下となっております。これは新聞巻取紙1,000本に1回以下の断紙で、一般的に多く使われている50連(13,650m巻き)の巻取紙の長さでいえば、およそ13,500kmで1回程度の紙切れということになります。このように印刷中の紙切れは大幅に減少し、印刷作業効率は飛躍的に向上しています。これに対して諸外国は100本につき2~3回の断紙、すなわち日本の20~30倍てあり、米国でも日本の約10倍から5倍多いといわれています。このため輸入紙は技術・品質が高く、強い国際競争力がある日本市場へほとんど入れなくなっているとのことです。

また、日本の新聞用紙には印刷効果をよくするために、紙表面に塗工機で薬品がわずかに塗布されていますが、米国では行われていません。日本の美しい新聞印刷印刷技術にも助けられていますが、こうした新聞用紙の品質によるところが大きいわけです。

このように日本の新聞用紙は世界に誇れる品質水準にありますが、わが国の品質の良さを世界が真似ようとか、追いつこうとしておりますが、読者や広告主の要求に応じ、さらに優位性を保つために進化が続いています。

 

厳しい経営環境下にある新聞業界、ここでも進化を!

ここまでわが国の新聞用紙、新聞印刷および新聞の技術面と品質面の動向を見てきましたが、これだけだと日本の新聞業界は順風満帆のようです。しかも前回にも少し触れましたが、世帯当たりの普及率が世界一を誇るわが国の新聞業界です。しかし、近年その栄光に陰りが見え始めています。いわゆる「新聞離れ」が起きているのです。特に若い人たちの「新聞離れ」が顕著で、近い将来、新聞社の経営基盤である新聞の大幅減少が予想され、その存立が危惧されています。

 

ネット等と比べて、新聞の印象・評価は?

「新聞離れ」の説明に入る前に、少し古い資料ですが、新聞を方向付ける貴重なデータですので載せておきます。日本新聞協会が2年前(2005年10月)に実施した「各メディアの印象・評価」調査(複数回答)では、新聞、テレビ(民放)、テレビ(NHK)、ラジオ、雑誌、インターネットの各メディアに対する印象として、新聞は上位から「情報源として欠かせない」「社会に対する影響力がある」「域や元のことがよく分かる」「知的である」の4項目を多くの人が挙げ、各50%超えで、インターネットやテレビ、ラジオを大きく引き離しています。さらに「社会の一員としてこのメディアに触れていることは大切だ」「教養を高めるのに役立つ」「日常生活に役立つ」「世の中の動きを幅広くとらえている」「情報が正確」「手軽に見聞きできる」が4割台で続いていますが、新聞が日々の生活や社会に根づいたメディアとして認知されていることが分かります。

次に各メディアの上位5項目を挙げておきますが、新聞より上位にある項目は太字下線で表示します。まず、民放のテレビは「親しみやすい」「楽しい」「手軽に見聞きできる」「社会に対する影響力がある」「分かりやすい」で、NHKのテレビは「社会に対する影響力がある」「情報が正確」「情報内容が信頼できる」「知的である」「情報が速い」と、同じテレビでも異なるイメージを持たれているように、各メディアともそれぞれの特性が浮きぼりになっています。以下、インターネットは「情報量が多い」「多種多様な情報を知ることができる」「情報が速い」「時代を先取りしている」「情報源として欠かせない」「仕事に役立つ」で、ラジオが「お金があまりかからない」「親しみやすい」「手軽に見聞きできる」「楽しい」「情報が速い」、雑誌は「親しみやすい」「楽しい」「手軽に見聞きできる」「専門的である」「読んだ(見た)事が記憶に残る」となっています。

なお、「情報が速い」という点ではインターネットが46.6%と最も評価が高かったのに対し、新聞は16.8%にとどまっています。また「情報内容が信頼できる」はテレビ(NHK)、新聞、テレビ(民放)、ラジオ、インターネット、雑誌の順ですが、「中立・公正である」も同順位でテレビ(NHK)と新聞が他のメディアを大きく離しています。さらに「お金があまりかからない」についてはテレビ(民放)、ラジオ、新聞、テレビ(NHK)、インターネット、雑誌の順で、新聞はテレビ(民放)よりはお金がかかるが、競合しているテレビ(NHK)、インターネットよりは安いと評価されています。

 

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更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)