コラム(72-2) 紙・板紙「書く・包む・拭く」(7)段ボールについて 2

中しんについて

中しん原紙(corrugating medium)は、段ボールの中層(内側)で「段」といわれる波形を成形するために用いられる板紙で、通常4層の多層抄きです。使用原料により「パルプしん」と「特しん」とに分かれており、前者はセミケミカルパルプ(SCP)を主原料とし、セミ中しんともいい、後者は古紙を主原料としています。

戦後、クラフトパルプ(KP)の生産が本格化する以前は、稲わらを原料とした黄しんが主でしたが、KPの普及によってパルプしんが、また古紙パルプの開発によって特しんが増加し、現在では黄しんは生産されていません。パルプしんも原料集荷あるいはコストの面から、技術革新の著しい特しんに押されています。また近年は、準セミと称するパルプと古紙を適当に配合したものも生産されています。

中しんの種類はライナほど多くありませんが、強度を上げたもの、耐水性を向上させたものなどがあります。JIS規格(JIS P 3904)で外装用ライナと同様に、中しん原紙も強度によってMA、MBおよびMC(A、B、C)の3級に分類されています。セミケミカルパルプ100%で特に腰を強くして製造された「SCP中しん」(A)、とセミケミカルパルプと古紙パルプを混合して製造された「特しん」(B、C)に分類され、強度はA>B>Cとなります。一般的に使用されている中しんは特しんの120g/m2ですが、グラム数が多くなるほど強度が増えるため、160g/m2や、180g/m2を使ったり、さらに180g強化、200g強化などの強化中しんを使用します。なお、強化中しんは主に古紙を主原料にしており、紙力強化剤などを加え、圧縮強度性に優れた中しんで、1m2当りの重さが180gと200gの2種類があります。青果物や電化製品など重量物のケースを主体に、広く使用されています。

またライナ同様、紙質により中しんはV20からV19、V18、V16、S18、S16、S14、S13、S12の種類があり、V20が最も硬く、最も柔らかいのがS12です。なお、Vと付く種類の紙は薬品を使用してより強度が上げられている強化しんです。また数値は坪量を表し、例えばV20の20は200g/m2を示しています。S16等の表記も、またライナの表記と同様に業界の慣習的表記であり、それぞれの企業によって異なり、例えば強化芯180g/m2の場合、V18、HP18、P18、HP8、P8などと表記され、まちまちのようです。

 

段ボール原紙は板紙の代表格

ところで段ボール本来の機能は物を包装し、保護することです。しかし、比較的重たい物が対象になるため、その原紙はしっかりした厚い「板紙」に属します。ここで最近のわが国の段ボール原紙関係の生産量の推移を表5に示します。

表5.段ボール原紙関係の生産量推移(単位:千t)

[( )値は構成比…段ボール原紙の上段は板紙あたりの比率、

段ボール原紙の下段(赤数字)と板紙計の( )値は紙・板紙あたりの比率]


95年2000年01年02年 03年04年05年 06年
段ボール原紙

9,019

(74.0%)

(30.4%)

9,676

(75.6%)

(30.4%)

9,419

(76.4%)

(30.7%)

9,301

(76.5%)

(30.3%)

9,207

(76.3%)

(30.2%)

9,290

(76.8%)

(30.1%)

9,311

(77.3%)

(30.1%)

9,324

(77.4%)

(30.0%)

ライナ 5,451 5,790 5,625 5,557 5,516 5,539 5,535 5,512
中しん 3,568 3,886 3,794 3,744 3,691 3,751 3,776 3,812
板紙計

12,193

(41.1%)

12,791

(40.2%)

12,332

(40.1%)

12,158

(39.6%)

12,061

(39.6%)

12,103

(39.2%)

12,051

(39.1%)

12,044

(38.7%)

紙・板紙合計 29,659 31,828 30,717 30,686 30,457 30,892 30,952 31,106

(注)段ボール原紙はライナと中しん原紙の2種類に分類。

 

上表のように紙・板紙の中の板紙比率はおよそ40%(06年実績38.7%)ですが、年々少しずつ減少しています。その板紙の中で段ボール原紙の比率は僅かずつ伸びており、約4分の3(06年77.4%)と大きなウエイトを占めています。また紙・板紙全体でも段ボール原紙は微減ながら3割くらいで推移しており、06年も生産量は前年比0.1%増の9,324千tで、30.0%の比率を維持しています。このように段ボール原紙は板紙の代表格であり、紙・板紙の主力製品であるといえます。ここでもう少し細かく段ボール原紙の動向を知るために、ライナと中しん原紙の生産量推移をみておきます。表6にそれを示します。

表6.ライナおよび中しん原紙の生産量推移(単位:千t)

[下段の( )値はそれぞれの構成比]

種類1995年2000年2005年2006年

伸び率

(06年/95年)

外装用ライナ クラフトライナ

3,436

(63.0%)

3,946

(68.2%)

3,996

(72.2%)

3,994

(72.5%)

116.2%
ジュートライナ

1,831

(33.6%)

1,674

(28.9%)

1,417

(25.6%)

1,396

(25.3%)

76.2%
内装用ライナ

185

(3.4%)

169

(2.9%)

121

(2.2%)

122

(2.2%)

65.9%
ライナ計

5,451

(100%)

5,790

(100%)

5,535

(100%)

5,512

(100%)

101.1%
中しん原紙 パルプしん

1,568

(43.9%)

1,319

(33.9%)

1,238

(32.8%)

1,234

(32.4%)

78.7%
特しん

2,000

(56.1%)

2,567

(66.1%)

2,538

(67.2%)

2,578

(67.6%)

128.9%
中しん原紙計

3,568

(100%)

3,886

(100%)

3,776

(100%)

3,812

(100%)

106.8%

 

外装用ライナと内装用ライナの生産量(06年)の比較では、外装用ライナが圧倒的に多く、内装用ライナは2%レベルのごく僅かです。外装用ライナであるクラフトライナとジュートライナでは、クラフトライナが7割以上を占めており、増加傾向にあるのに対してジュートライナは減少傾向にあります。また、中しん原紙のパルプしんと特しんでは、パルプしんは減少傾向にあり、中しん原紙のおよそ1/3の量であるのに対し、特しんは2/3を占め、増加傾向にあります。

もう少し生産動向を見ていきますと、中しん原紙のほうがライナよりも生産の伸びが大きいが、ともに全体的に増加傾向にあります。その内訳は外装用ライナに属するクラフトライナと中しん原紙である特しんの増加が大きく、95年基準で最近の数量は特しんがおよそ3割、クラフトライナが約15%増えています。逆に他のジュートライナと内装用ライナおよび中しん原紙であるパルプしんは減少傾向にあります。最近の実績では95年基準で、ジュートライナとパルプしんが20%以上、内装用ライナがほぼ35%と大きく減っています。これらのことからライナは古紙ものよりもパルプものへ、逆に中しんはパルプものよりも古紙ものへ志向されているようです。

 

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更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)