段ボールについて
段ボール(corrugated fibreboard)とは、段ボール原紙であるライナと中しん原紙を加工・貼合して多層構造を作り強靭にした紙製品で、板紙の主力製品です。すなわち、段ボールの素材であるライナと中しん原紙は、いずれも巻取(ロール紙)の製品形態をとっておりますが、ダンボールの構造機械に掛けることによって波形に段付けされた中しんと、その中しんを保持するために片面または両面に貼合されたライナから段ボールはできあがっています(下図参照…能登紙器株式会社ホームページから)。
これでもって段ボール箱など様々な段ボール製品を加工・製造します。
もう少し詳しく段ボールのしくみを説明していきます。
下図はモデル的に段ボール(段ボールシート)の断面を示したものですが、このように段ボールはライナとの中間層に波状の中しん原紙を貼りつけた多層構造をしています。
なお、波形に成型した中しんの形状のことを「段」(フルート、flute)といいますが、この波状の段は衝撃の吸収と、圧力に対する強度を高める役割をします。また、段に貼り付けられている紙のことをライナといいます。通常、段ボールはコルゲーター(corrugator、コルゲートマシン、貼合機・製板機)という機械で中しんに段つけを行い、ライナと中しんとを貼り合わせて製造されます(大成段ボール株式会社 ダンボールができるまで、段ボールの工程説明…樽谷包装産業株式会社)。
その方法は、表面に多数の溝の付いた2本のローラー(段ロール)の間に中しんを通して波形に成形・加工(フルーテッド)し、その片面または両面に貼り合わせ用接着剤でライナを貼合し仕上げます。接着剤としては主にでんぷん(澱粉)が使用されますが、耐水性を必要とする段ボールの製造には合成接着剤を用いたり、ライナや中しんに合成樹脂を添加したりするほか、表面にワックス処理などを行います。なお、段項(段成形した段の先端部)に接着剤を付けますが、段の形状には段頂がU字型のものとV字型のものとがありますが、現在ではこの中間のUV段が多く使用されているようです。
注
コルゲーターとは、片面段ボールを製造する装置であるシングルフェーサと片面段ボールを両面段ボールまたはそれ以上の多層に加工する装置であるダブルフェーサおよびカツカッターをもつ一連の段ボール製造設備のこと。
段(フルート)の種類
段ボールは段(フルート)と、ライナと中しんの貼り合わせ(紙質構造)との2つの要素で分類されております。まず段の種類ですが、シート30cm当たりの段数と段の高さによって分類されており、現在、JISにはA、BおよびC段の3種類が規定されています(表7)。
種類 | 記号 | 段の数(30cm当たり) | 段の高さ(mm) | 段操り率 |
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A段(Aフルート) | AF | 34±2 | 4.5~4.8 | 1.50~1.60 |
B段(Bフルート) | BF | 50±2 | 2.5~2.8 | 1.30~1.40 |
C段(Cフルート) | CF | 40±2 | 3.5~3.8 | 1.40~1.50 |
(注)段操り率…ライナに対する中しんの使用長さ比率。
JIS規定のA、BおよびC段以外にもE段、F段、G段の種類があり、Gに近づくほど細かい波形となります(ただし、C段だけはAとBの中間の厚み)。段の数、高さは山の密度を表しますが、それぞれに特徴を持っており、それらの組み合わせとライナの種類とでさまざまな段ボールができあがります。段ボールの強度は厚みでほぼ決まりますが、表8に代表的な段ボールの特徴(段の種類と厚み)を示しておきます。なお、C段は欧米では外装箱の主流として用いられていますが、日本ではあまり使われていませんので省略します。
段 | 厚み | 特徴 |
---|---|---|
A段 | 約5mm | A段は段が高いので広い空洞がとれ、それがクッションの役目をするため、高い緩衝性(衝撃吸収力)と垂直圧縮強さなどの強度に優れている。一般的によく使 用されている段ボールシートで、引越し時の箱やみかんなどの青果物の箱、菓子、その他食品、電気、機械器具等の箱など、輸送用の外装箱に最も多く用いられ ている。 |
B段 | 約3mm | A段より緩衝性、耐久強度は劣るが、段が低いので、段の密度が細かく頑丈で、フラットクラッシュ(段の強さ)が強く衝撃を跳ね返す力があり、平面圧縮強さに優れている。そのため堅くてつぶれにくいビールケースや缶詰や瓶詰、機械部品などの商品の輸送用外装箱に用いられる。 |
E段 | 約1.5mm | 厚みが小さな(段高の低い)段は、F段、G段とともにマイクロフルートと総称されている。薄くて軽く、強度的には低い。一般的に内装箱や化粧箱、贈答用な どの個装箱として使われるが、他と比べて表面が平滑なためきれいな印刷が可能で、美粧印刷に適している。そのためコートボール、紙器箱に代わって使用され ることがある。 |
F段 | 約1.2mm | E段同様、マイクロフルートと呼ばれている。同上。 |
G段 | 約0.9mm | 同上。 |
W段 | 約8mm | AB段(ABフルート)とも表示し、A段とB段を貼り合わせたもので、A段、B段の特徴を兼ねそろえており、特に衝撃吸収性が高く、破裂強度が大きく平面 圧縮強さも強いため、主に大きな箱や重量物の梱包などによく用いられる。なお、BC段、EB段もまたW段であるが、これらは日本国内では使用量も少なく、 取り扱う企業も少ない。 |
AA段 | 約10mm | A段とA段を貼り合わせたもの(バイウォール等)。重量梱包・コンテナ・木箱に代わるもので、最近ではパレットや家具にも使用されている。輸出梱包には AAAフルート(トリプルウォール等)、AAフルート(バイウォール等)など特殊な段ボールが木箱や鉄枠のかわりに使用されることがある。 |
AAA段 | 約15mm | A段を3つ貼り合わせたもの(トリプルウォール等)。AA段と同じで重量物・コンテナ・パレット・家具などに使用されている。 |
このなかで一般に使用されるのは、A段、B段、E段、W段、E/F/G段(マイクロフルート)です。
段ボールの種類
次に紙質構造による分類てすが、段ボールは波状に成型された中しんとライナとのふたつの組み合わせによってできている構造体で、その構造によって表9のように片面段ボール、両面段ボール、複両面段ボールおよび複々両面段ボールの4種類に分類されています(JIS Z 0108 包装用語)。
種類 | 形状 | 説明 |
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片面段ボール | 1枚のライナに、波形状に成形した中しん原紙を貼り合わせたもの(フルートの片側にライナを貼り合わせたもの)。 | |
両面段ボール | 片面段ボールの段頂に、ライナを貼り合わせたもの(フルートの両面にライナを貼り合わせたもの)。 | |
複両面段ボール | 両面段ボールの片側に、片面段ボールの段頂を貼り合わせたもの(両面段ボールに片面段ボールを貼り合わせたもの)。 | |
複々両面段ボール | 複両面段ボールの片側に、片面段ボールの段頂を貼り合わせたもの。 |
段ボールは1枚の厚紙でできているのではなく、2枚ないし3枚の原紙の貼り合わせで構成されています。例えば両面段ボールの場合、「表の紙」「中しん原紙」「裏の紙」の3枚の板紙でできています。その3枚の材質をそれぞれ変えることによって、強いものや軽いものなどさまざまなものができます。中しんの基本的なものはA段やB段ですが、このA段とB段を貼り合わせると、これをダブルフルート(WF)と呼んでいますが、二重の5層(5枚)構造の段ボール「複両面段ボール」ができあがるというわけです。段の無い厚紙の場合は、厚いほど丈夫になり、値段と厚みは比例しますが、段ボールの場合は各種の素材の組み合わせによって、強度があり、安くすることもありえます。
また、用途によって外装用段ボール、内装用段ボール、個装用段ボールなどがありますが、独特の構造を持った段ボールは、軽量でありながら構造体としての強さと衝撃吸収性に優れています。反面、限度以上の強い力が加わると段がつぶれ、構造体としての機能を十分に発揮しなくなりますので、段ボールの製造、包装設計にあたってはこれらの機能を十分に生かす工夫も必要です。
このように段ボールは簡単な構造ですが、力学的に非常に優れたもので、衝撃性、圧縮強さ等に多くの特徴を持っています。主な特長は次のとおりです。
- 軽くて強度、緩衝効果に優れていること
- 衛生的であり、取り扱いやすく、折りたたみができること
- 断裁・接着・接合などいろいろな形に自由自在に加工ができること
- 短納期・大量生産が可能なこと
- 比較的価格も安いこと
- 各種の紙などが貼れたり、印刷が可能なため広告媒体となり、また内容物の物流管理や物品管理などがができること
- 使用後は再び製紙原料としてリサイクルされることなどがあります。
例えば、段ボールでできている段ボール箱は軽量で、比較的嵩張らなく、また空箱は折りたためるため輸送・保管・収納などの場所もあまりとりません。そのため輸送・保管などのコストを低く抑えることができます。また、使用済み段ボールの回収率は9割を超え、古紙利用率は約92%と、非常に高い数字になっており、段ボールは環境にやさしいリサイクルの代表選手であり、リサイクルの優等生と評価されています。
なお、短所としては、可燃性で燃えやすいこと、水、湿気に弱いこと、積み重ね強度が弱いことなどがありますが、樹脂加工して耐水性を持たせたり、紙質や構造を変えれば耐圧縮強さも増すことができます。このような長所は伸ばし、短所は補うようにすれば、さらに素晴らしい素材になり得ます。