コラム(73-1) 紙・板紙「書く・包む・拭く」(8)段ボールの始まり

続きです。今回は段ボールの歴史について触れていきます。

 

段ボールの始まり…発祥のはイギリス

段ボールの発祥は、イギリスです。紙を抄く機械である抄紙機の発明もイギリスですが、イギリスのフォードリニア兄弟が今につながる長網抄紙機(フォードリニアマシン)を作ったのは1807年のことです。その後、主として厚紙である板紙を抄くのに適している丸網抄紙機も1809年にイギリスのディキンソンが発明しました。そして板紙は1817年にイギリスで市場化されましたが、このときの製紙原料は麦わらでした。このような状況下で段ボールが誕生しました。

19世紀後半のイギリスでは、シルクハットという円筒型の高い帽子が流行しました。この帽子を被る時の汗取りとして、1856年、エドワード・チャールズ・ヒーレイとエドワード・エリス・アレンの2人によって段ボールが生まれました。段のついた2つのロールの間に紙を通す手動の機械で、紙に段(波状)を作ったもので、当時は包装材としての目的ではなく、波状に折ったボール紙(板紙)をシルクハットの内側に貼り、頭と帽子の間に隙間を作り、風通しを良くするとともに、内側の汗を吸い取るために使いました。これが段ボールのはじまりです。

なお、この波状を「フルート」といいますが、形が古代ヨーロッパの朝廷の侍者の衣装に付いているひだのある襟に似ているので、フルート(flute)と名付けたといわれています。

右の写真、特に人物の襟元に注目してご覧ください。これは安土桃山時代に描かれた狩野内膳(かのうないぜん、1570~1616年)の「南蛮屏風」(神戸市立博物館所蔵)の一部ですが、その当時日本に渡来した南蛮人(南方の野蛮人の意、特にポルトガル人・スペイン人などを指す) が着ていた洋服の首回りの布が波形の襟になっています。これが「フルート」で段ボールの中しんの形が似ていたためフルートと呼ばれるようになりました。

その後、1871年にアメリカにおいて、アルバート・L・ジョーンズが波状の紙を水薬等のガラス瓶やランプのほや(火屋)のガラス製品を衝撃から保護する緩衝材(クッション材)として使用したのが、現在のように包装資材として利用されるようになった始まりです。特許を取得しており、その中で波状の紙の上にビンを並べる方法、波状の紙で箱を作る方法、ビンに波状の紙を巻き付ける方法が図で示されているとういことで、その利用は今の段ボールの用途に合致していることから、これを段ボールの誕生とする説もあります。

そして1874年にはアメリカのオリバーロングが、段状の紙にもう一枚紙を足して、段が伸縮しないようにし、扱いやすくしました。片面段ボール(single face corrugated board)の誕生です。波状のフルートだけでは段が伸びてしまい強度がないので片側の面に「ライナ」と呼ばれる補強用のボール紙を接着しました。これが現在でも使用されている「片面段ボール」といわれているものです。ところで英語のライナ(liner、ライナー)はこのように裏面に紙などを貼って丈夫にすること、すなわち裏打ちという意味です。

さらに1882年には、アメリカ人のロバートH.トンプソンが両面段ボールの特許を取得しています。当初は内装用の緩衝材として使われていた段ボールですが、1894年になると段ボール箱が考案され、外装用の木箱等に取って代わる輸送容器としても使われ始めました。これも最初は蓋、胴、底と3つのパーツに分かれたスリーピース型で、後に現在のような折り畳み式に進化を遂げていきます。そして本格的に外装用に用いられるようになると、段ボールの実用性・利便性が産業界、特に物流の分野で注目されはじめ段ボールの需要が一気に高まっていきます。

 

  次のページへ


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)