そして今、実質GDPと連動性が薄れる段ボール
いろいろな用途に利用され役立っている段ボール。現在は少しずつ回復しているものの、昨今は包装資材を見直す風潮があり前記のように2000年をピークにその生産量は頭打ちになっています。
右のグラフは日本経済新聞(2007年6月23日付)の「市況の法則」に掲載されたもので、日本製紙連合会の調べによって作成された資料です。その本文に「段ボールの利用は国内総生産(GDP)の伸びに応じて拡大する。一時は段ボール業界の常識だったこの関係は、実は2001年ごろに薄れた」とあります。
右の実質GDPと段ボール原紙消費量との関係で、確かに2001年から両者は乖離しているのが浮き彫りになっています。しかも段ボール原紙の消費量が大きく低下して、その差が拡大しています。
実質国内総生産(GDP)との連動性が薄れた背景として、段ボール市場の成熟などに加えてコスト意識を強めている需要家・企業の軽量化ニーズの高まりによる原紙の軽量化という要因があり、さらに原紙価格の上昇で、段ボールそのものの使用量を削減を目指す動きも出ているとしています。実質GDPとの連動性が薄れた段ボール業界は、今や高付加価値品による顧客の取り込みや提携・再編などによって企業力・業界力を強める動きが出ています。
さらに多様化し身近に、世相を反映する段ボール
そのような状況下にある段ボールの世界も多様化しています。段ボール用途の多くは段ボール箱ですが、段ボールの家具もありますし、広くは公園や地下街、河原などでフレキシブルな簡易住居としてダンボールハウス(?)などもあり、いろいろなところで使用されてきています。特に昨年(2007年)は、それまで以上に話題も豊富でよく見かけましたが、次に新聞、テレビ、インターネットなどで目についた段ボール製品ないし段ボールに関する話題を幾つか拾ってみます。
①まず、地震国日本で昨年も大きな地震が発生しました。3月の能登半島地震と7月の新潟県中越沖地震ですが、ここで重宝がられたのが段ボール製の避難所用の簡易更衣室兼授乳室や、「プライバシーウォール」などいわれる段ボール製の間仕切りです。簡単に組み立てできる優れものです。軽くて持ち運びがたやすく、加工が簡単、使用後はリサイクルできることから利用が広がっているとのことです。
完全に乗っかった象また、段ボール製の「すきま家具」、いわゆる地震などで家具が転倒しないように背の高いタンスなどの家具と天井の隙間に入れる家具転倒防止用の段ボール製の箱「耐震ボックス」です。段ボールの柔らかさが緩衝作用となって、震度7にも耐えられるとの実証試験も済んでいるとか。箱の中は収納ボックスにもなり、オプションで簡易トイレにもなるそうです。なお、防災用の食料などをその中に入れてもよさそうです。価格は4000円で、取り付けも簡単。
②そういえば日曜日朝7時の教養番組「目がテン!」(日本テレビ系列)でも段ボール箱の強さを検証する場面がありました。「引っ越し(秘)荷造りテク」(第870回 2007年2月18日)ですが、「段ボールって紙なのに、なんで積み上げても潰れないのだろう?」という疑問に対して、最強といわれる3層構造の段ボール箱を8つ並べ、その上に板を乗せ、そこに1.6トンの重さの象が乗っても壊れなかったというものです(右写真参照…同ホームページ所さんの目がテン!から)。
③さらに防水の特殊加工した段ボール紙製の仮設ハウスやベッド・椅子・机などの段ボール家具もあり、塗料や接着剤のほか、醤油などの食品にも使える段ボールのドラム缶(200リットル入り)もあります。他にも貯金箱やペン立て、子供用の遊具でキッチンセット(おままごと用)や動物などの模型などなど、段ボール製のさまざまな製品が豊富です。軽くて丈夫、加工もしやすく、使用後はリサイクルできるという段ボールの特性を活かした様々なアイデア製品が出てきています。
少し具体的に紹介します。
例えばダンディンドン有限会社(東京)の家具は強化段ボールを素材として使用しています。“トライウォール"という素材で、波状に加工された紙の層(フルート)を3段重ねになっています(右の段ボールの断面図参照)。しかもその原紙であるフルート部分(中しん)は国産ですが、ライナはアメリカから輸入されたもので、繊維質の一番長いバージンパルプ(針葉樹パルプ)が使われているため、通常の段ボール箱に使われるような段ボールではなく、数倍堅牢で耐久性の高い、いわゆる強化段ボールができあがります。これを使用して作った洋服ダンスや机などの家具を写真で上に掲げましたが、もちろん実用的で普通の家具と比べても安いこともあり、またマスコミでも評判を呼び、注目もされて人気が高いとのことです(ダンディンドン有限会社参照)。
もうひとつ。先月、病院で目に付いたのですが、「医療廃棄物容器」(焼却処理)と印刷された段ボール製容器がありました。病院など医療機関等から排出される脱脂綿・ガーゼ・包帯・紙くずなど汚れて感染性のおそれのある廃棄物を入れて、それごと焼却処理するための専用容器(箱)ですが、こういう用途もあるかと感心しながら、その材質に無害で可燃性で、堅牢な段ボールが選ばれたのはもっともなことだと思ったものです。そのほとんどがリサイクルされ、環境にやさしい「優等生」であると言われている段ボールですが、このように自らは再生されなくても「安全・安心」のために使われるものもあるわけですね。
④ところで皆さん、「空気砲」をご存知でしょうか。長方形の段ボール箱をガムテープで目張りして、一面だけに丸い穴を開け、両サイドを叩くと丸い穴から空気の塊が飛びでるもので、段ボールの中で線香を焚いて煙を入れてすれば空気の塊が目視できます。遠くからロウソクの火を消したりカーテンをゆらめかせたりするなどして、実験しながら面白く遊ぶことができる道具です(右写真参照…米村でんじろうサイエンスプロダクションから)。空気砲には強くてクッション性のある段ボールを使うのがぴったりです。
ちなみに、2007年11月28日放送の「トリビアの泉」で、10メートル四方の巨大空気砲を段ボールで製作し、その巨大空気砲を撃ったとき、ロウソクの火は何メートル先まで消せるのかを検証する画像が放映されました。かなりすごい映像でしたが、およそ900kgの段ボールを使って、貼り合わせて骨組みをして巨大な空気砲を作り、先にあるロウソクの火を消す実験でしたが、巨大な輪になった白いけむりが空気砲からゆっくりでて進んでいくさまは壮観でした。結局21メートル先までのロウソクの火を消すことができましたが、巨大な段ボール箱(空気砲)は本当に圧巻でした。ホームページ「YouTube - トリビアの泉 巨大空気砲…でんじろう先生監修」は、その貴重な動画ですが、みなさんも是非ご覧ください。