コラム(74-3) 紙・板紙「書く・包む・拭く」(9)紙器用板紙の品種説明 2

(2)黄板紙(黄ボール)

黄板紙は黄ボールとも言いますが、現在では、「稲ワラ、古紙を原料として抄き合わされ、黄土色のもの」との定義付けされている板紙です(対応英語はstraw board)。かつては板紙といえば黄板紙という時代がありました。明治時代です。当時、板紙の主流を成した紙で、英語でストローボードといわれるように、わらを原料とした下品です。坪量は450~850g/m2と極めて厚い紙で、製品形態は平判。稲わら、麦わらなどのわらや屑ボールの古紙を原料として、円網式抄紙機で抄き合わせして生産される黄土色の板紙ですが、黄土色をしていることから、俗に「馬ふん紙(馬糞紙)」とも呼ばれることがあります。

耐折性は劣りますが剛度が高く、普通は表面に上質紙、着色紙などの外装紙を片面または両面に上貼りして上製本の芯(しん)や洋服箱、ブックケース、紙製玩具、組み立箱、表紙、紙管などに使用されます。なお、裏面が白色になるように白色紙料を抄き合わせたものを裏白黄ボールといいます。現在はわらの集荷が難しくなり、黄板紙はチップボールに代わり生産はほとんどなく、板紙全体の0.1%くらいで僅少になっています。

 

(3)チップボール

全層とも下古紙(雑誌・新聞紙等)を原料にしており、黄板紙の代わりに使用されるようになった低グレードの板紙です。比較的低密度で、坪量は一般に400g/m2以上のものが多く、製品形態は平判。用途はほぼ黄板紙と同じで、多くは箱のベースとなり、その上からプリントされた紙やビニールなどを貼り合わせて用いる貼り箱に使われます。ただし、機械箱のように上貼りをせずにそのまま製箱する場合もあります。また、比較的大箱用にも使われることがありますが、原料が悪いため割れが発生しやすく、折り曲げしたり、印刷する高品用途には不向きで、古紙を原料としているため価格が安く、通常は最も下の箱に使用されます。なお、書籍表紙などの芯(しん)ボールとして使用されることもあります。

 

(4)色板紙(色ボール)

古紙を主原料として表面を染料で着色して抄き合わされた板紙です。ただし、クラフトボールのように、クラフトパルプまたはクラフト系古紙の色をそのまま生かしたものもありますが、色もいろいろあり、用途も多種多様です。品種には(両面あるいは片面)クラフトボール、茶ボール、ねずみボールなどがあり、製品形態は平判。原料パルプは例えば、両面クラフトボールは晒クラフトパルプを表裏に、中層に古紙紙料を配合した板紙で、強度が強く曲げにも強い特性を持っています。また片面クラフトボールは、晒クラフトパルプを表層に、裏面は古紙を抄き合わせたものです。両面茶ボールは表裏に、片面茶ボールは片面に、それぞれクラフト古紙を原料とした抄き合わせた板紙で、片面ねずみボールは古紙を原料とし、表面に灰色の繊維(パルプ粕、その他植物繊維)を抄き合わせたものです。用途はチップボールと同じように、主に化粧品、その他の小形雑貨の包装箱下の箱製函のほか、諸台帳、ノート表紙などに使用されます。

以上の総括として、紙器用板紙の各品種の相対的な比較をして表3に示しておきます。

表3.紙器用板紙の各品種の相対的な比較
 高い ← → 低い
品質(印刷再現性) 白板紙 特板カードA 特板カードB コート白ボール 色板紙・チップボール・黄板紙
古紙配合率 色板紙・チップボール・黄板紙 コート白ボール 特板カードB 特板カードA 白板紙
価格 色板紙・チップボール・黄板紙 コート白ボール 特板カードB 特板カードA 白板紙

 

また板紙は通常、3層以上の抄き合わせになっていますが、表4に層別による紙器用板紙の主な原料構成をまとめて掲げておきます。

(注)●…塗料 ◎…晒化学パルプ △…機械パルプまたは上質古紙、脱パルプ

×…古紙 ◇…わらパルプ、古紙

表4.紙器用板紙の層別による原料構成 品 種 紙層の構成

品種紙層の構成
コート表層 中層裏層コート
紙器用板紙 白板紙 アイボリー(塗工)
アイボリー(非塗工) -
カード(塗工)
カード(非塗工) - -
特殊白板紙 アイボリー(塗工) -
カード(塗工) -
一般マニラボール (塗工) -
(非塗工) - -
白ボール (塗工) △× △× -
(非塗工) - △× △× -
黄板紙 - -
チップボール - × × × -
色板紙 クラフトボール(両面) - × -
クラフトボール(片面) - × × -
茶ボール - × × × -
ねずみボール - × × × -

 

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更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)