紙器用板紙の最近の生産量推移
ここで最近のわが国の紙器用板紙の生産量推移を表5に示します。
1980年 | 90年 | 95年 | 2000年 | 01年 | 05年 | 06年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
紙器用板紙 |
1,620 (21.5%) |
2,242 (19.2%) |
2,135 (17.5%) |
2,097 (16.4%) |
1,963 (15.9%) |
1,891 (15.7%) |
1,868 (15.5%) |
白板紙 |
1,245 (76.9%) |
1,883 (84.0%) |
1,841 (86.2%) |
1,851 (88.3%) |
1,739 (88.6%) |
1,682 (88.9%) |
1,663 (89.0%) |
黄板紙・チップボール・色板紙 |
375 (23.1%) |
359 (16.0%) |
294 (13.8%) |
246 (11.7%) |
224 (11.4%) |
209 (11.1%) |
205 (11.0%) |
板紙計 |
7,551 (41.7%) |
11,657 (41.5%) |
12,193 (41.1%) |
12,791 (40.2%) |
12,332 (40.1%) |
12,051 (39.1%) |
12,044 (38.7%) |
紙・板紙合計 | 18,087 | 28,086 | 29,659 | 31,828 | 30,717 | 30,952 | 31,106 |
最近の板紙生産量は減少しており、紙・板紙の中に占めるその比率は40%を下回りるようになり(06年実績38.7%)、年々少しずつ減少しています。板紙低迷の中で、前報で記述のように段ボール原紙は生産量が06年も前年比0.1%増であり、大きなウエイトを占めている板紙あたりの構成比(06年77.4%)も僅かずつ伸びており、板紙の顔として健闘しています。これに対し紙器用板紙の構成比は漸減しており、またその生産量は波がありますが1997年の2,236千tをピークに減り、2000年に少し戻りますが、その後はまた減っています。この紙器用板紙減が板紙の減少傾向に大きく影響していることになります。品種別では白板紙および黄板紙・チップボール・色板紙ともに生産量は減少傾向ですが、中小板紙メーカーの領域である黄板紙・チップボール・色板紙の生産量減は、白板紙との競合による影響と需要減によるものです。
このように品種により浮き沈みがありますが、製紙会社にもあります。ここで横道に逸れるかも知れませんが、板紙メーカー数とか、紙器用板紙の推移について過去の資料からまとめておきます。わが国の板紙メーカー数は、最も多かったころの1965(昭和40)年は158社で、そのときの段ボール原紙・紙器用板紙・その他の板紙を合わせた年間生産量は3,079千tでした。うち段ボール原紙が1,795千tで板紙の58.3%を、また紙器用板紙は980千tで31.9%を占めていました。なお、このときの板紙メーカー上位3社(本州製紙・大昭和製紙・高崎製紙)の占有率は合計で20.5%でした。
これが25年後の1990(平成2)年の板紙生産量は11,657千tと、1965年当時のほぼ4倍に拡大しました。この中で段ボール原紙は8,275千tと4.6倍に増加したのに対し、紙器用板紙は2,242千tで、板紙平均以下の2.3倍の増加にとどまり、板紙生産全体に占める段ボール原紙の割合が71.0%まで膨張したのに対して、紙器用板紙は生産全体の19.2%にまでダウンしました。その後も表4のように紙器用板紙の生産量と、その板紙に占める構成比は低下し、位置付けも弱まるばかりです。
そのひとつに段ボールの攻勢があります。2000年に完全施行された容器包装リサイクル法(容リ法)により、対象容器はガラスびん、紙、ペットボトル、プラスチックの4品目ですが、紙製の容器包装として段ボール、紙パックは適用除外にされました。
このため、紙器から段ボールに転換する動きか出てきました。段ボールは外装ライナと中しん原紙の貼り合わせで、中しん原紙は波状(段)になっていますが、この段数(30cm当たり波形数)が多く、厚みが小さな(低段高)マイクロフルートと総称されるE段(段数94±6段、段高約1.5mm)、F段(段高約1.2mm)、G段(段高約0.9mm)などが、表面が平滑なためきれいな印刷が可能で、美粧印刷に適しているためコートボールなどの紙器箱に代わって使用されるようになりました。段ボールを使う限り、容リ法の対象にならないわけです。つまりリサイクル費用を支払う必要がないわけです。
話を戻しますと、1990年までの間に、板紙メーカー数は約3分の1減って100社となり、その後の2002年までの12年間には半分の50社ほどが減って、小規模なアウトサイダーを含め60社(日本製紙連合会会員29社、非会員28社、その他)足らずとなりました。これがさらに減り、2006年には50数社社(会員27社、非会員23社、その他)という具合です。また、板紙メーカー上位3社(王子板紙・レンゴー・日本大昭和板紙)の占有率は合わせて54.9%となり、上位企業への集中化が大きく進んでいます。
白板紙の主力は塗工白ボール
最近の紙器用板紙のマイナス傾向は、表5のように量的に多い白板紙の生産量減が大きく影響していますが、紙器用板紙の主力品種である白板紙の動向を知るために、もう少し細かくマニラボールと白ボールの生産量推移を表6に示します。
1990年 | 2000年 | 05年 | 06年 | |
---|---|---|---|---|
白板紙 | 1,883 | 1,851 | 1,682 | 1,662 |
マニラボール | 753(40.0%) | 718(38.8%) | 650(38.6%) | 637(38.3%) |
塗工マニラボール | 673(89.4%) | 642(89.4%) | 590(90.8%) | 582(91.4%) |
非塗工マニラボール | 80(10.6%) | 76(10.6%) | 60(9.2%) | 55(8.6%) |
白ボール | 1,130(60.0%) | 1,133(61.2%) | 1,031(61.4%) | 1,025(61.7%) |
塗工白ボール | 940(83.2%) | 1,018(89.8%) | 960(93.1%) | 962(93.9%) |
非塗工白ボール | 190(16.8%) | 115(10.2%) | 71(6.9%) | 63(6.1%) |
白板紙のうちマニラボールと白ボールの生産量は、ほぼ4対6の比率で白ボールのほうが多いのですが、両者とも減少傾向です。それも1990年を基準にした06年の生産量伸び率は、マニラボールが84.6%、白ボールは90,7%でマニラボールのマイナスが若干大きい傾向にありますが、絶対量ではこの15、6年間でともに100千t余の減産となっています。また、塗工品と非塗工品の生産傾向はマニラボールの91.4%、白ボールは93.9%が塗工品で、ともに9割強が塗工加工されたものです。しかも塗工品と比べて非塗工品の減少程度は大きく、非塗工品のそのウエイトは弱まるばかりです。これをまとめますと、白板紙の生産動向は減少傾向にある中でマニラボールよりも白ボールへと移行し、しかも非塗工品よりも塗工品にシフトされつつあるといえます。
大きく減少する黄板紙・チップボール・色板紙
次に黄板紙・チップボール・色板紙の生産動向をまとめます。表7にそれらの生産量推移を示します。表5に最近の生産量を示しましたので、ここでは戦後からの推移を掲げます。
1945年 (昭和20) |
1950年 (昭和25) |
1960年 (昭和35) |
1970年 (昭和45) |
1980年 (昭和55) |
|
黄板紙 | 7 | 77 | 134 | 65 | 25 |
チップボール | - | - | 117 | 200 | 201 |
色板紙 | 1 | 4 | 85 | 170 | 149 |
計 |
8 (27.6%) |
81 (55.5%) |
336 (49.4%) |
435 (29.3%) |
375 (23.1%) |
白板紙 |
21 (72.4%) |
65 (44.5%) |
344 (50.6%) |
1,050 (70.7%) |
1,245 (76.9%) |
紙器用板紙合計 | 29 | 146 | 680 | 1,485 | 1,620 |
終戦の1945(昭和20)年の黄板紙と色板紙を合わせた生産量は8千tで、紙器用板紙合計の27.6%。5年後の1950年は黄板紙の伸びが大きく、黄板紙・色板紙合計で10倍以上の81千t、白板紙を凌いで紙器用板紙合計で半分以上の55.5%を占めるようになりました。なお、黄板紙は1957年の生産量146千tをピークに減少。チップボールは1955年に登場し、そのときの生産量は27千tで、1973年の220千tをピークに減っていきます。また色板紙も1973年の196千tをピークにして減っていきます。
しかも白板紙の生産量が伸びる反面、黄板紙・チップボール・色板紙は合わせても白板紙の半量を切り、次第に量、率とも減少していき、その位置付けが衰えていきます。このことは品種ごとの統計上の集計にも表れています。当初は表7のよう黄板紙、チップボール、色板紙ごとの別々に集計されていましたが、生産数量減により黄板紙とチップボールが統合され、さらに減り、現在は表5のように黄板紙・チップボール・色板紙の三品種がまとめて集計されています。