[付記]印刷用紙用語説明
ここで、ファンシーペーパー・特殊紙・加工紙・機能紙などの用語説明をします。
①ファンシーペーパー
特殊紙の一種で、主に色と表面の模様や柄などをつけた装飾性の高い紙です。すなわち、厚紙や板紙の表面を美しくするために使用する上張り紙「装飾用紙」のことで、普通色がついており、さらに独特な紙質や優雅な風合いに特徴を持たせているところが、色上質紙や一般印刷用紙とは異なります。一般紙は印刷することにより新たな表現を持ちますが、ファンシーペーパーは、色、表面の加工、柄などその種類は極めて多彩で紙そのものがさまざまな風合い、表情を持っています。なお、機械抄きで洋紙の一種として仕上げますので、和紙の持つ独特の風合いとは異なりますが、和紙に似せたものもあります。用途は多種多様ですが、主なものは本の装丁、表紙、扉、見返し、化粧箱の装飾、紙製品、パッケージなどですが、ダイレクトメール、カタログ、パンフレット、イベントでのPR用紙などにも幅広く使われています。また、きれいで、風合いのある紙のため、用紙1枚だけでも使われ多く趣昧の世界で個人的な用途にも使われています。なお、一般紙より市況に左右されにくく高価(3~5倍)であるという制約がありますが、この紙を上手に使うことで製品の高級感を増すなど、他商品との差別化が図れることから普及が進んでおり、使う側のアィデアによっては、用途は無限に広がる素材にもなります。なお、ファンシーペーパーとは日本で生まれた言葉であり、海外では通用しません。欧米ではカバーアンドテキストファインペーパーとかカバーペーパーなどと呼ばれているようです。
また、製造方法、紙質、抄紙機の網にパターン(模様)を付けたり、プレスフェルトでマークを付けたりなどの違いで次のように分類されます。
- 着色紙
- 模様紙(マーク紙)…レイド(簀の目状の透し筋入り)、エンボス模様、フェルト マーク等
- 異種材料抄き込み紙(ブレンド・混ぜ物)…毛入れ、チリ入、染色繊維抄き込み等
- 模様光沢紙…カレンダー仕上げ等
- ファンシーコーテッドペーパー(塗工ファンシー紙)
- 非木材パルプ配合ファンシーペーパー
②特殊紙
特殊紙とは、「一般紙・汎用紙」(上質紙、塗工紙等)に対比して用いられる用語です。多品種小ロット製品または高付加価値製品で、特定の用途にのみ使う紙で、用途によってそれぞれ適合した性質を付与されています。原料、薬品、抄紙条件が一般紙と異なり、特殊な条件で抄紙あるいは塗工、ラミネート、含浸などの加工されたものも含まれます。基紙は、通常の植物繊維からなりますが、紙の品種分類体系では「特殊紙」という品種区分はなく、特殊印刷用紙、情報用紙、雑種紙等に分類のなかに含まれます。
このように、特殊紙の範囲は広くその全体を正確に統括することは難しい部分があります。特徴としては、
- 一般に特殊紙マシンと呼ばれる小型低速のマシンで、比較的多品種小ロットで生産され、原料配合、薬品配合、叩解条件などにおいて上質紙などとかなり異なる、
- 特殊用途向けの特殊機能を持ち汎用性に乏しく、メーカー間の品質競争、開発競争が激しい反面、比較的ライフサイクルが短い、
- 面積売り、ユーザーへの直売、あるいは特定ルートで販売するケースが多く、小回りの利く生産、出荷体制が必要である。従って、その製品、商品は比較的特定のユーザー・流通との結び付きが深く、この点で一般紙と大きく異なる、などが挙げられます。なお、ファンシーペーパー、機能紙や生産量の少ない加工紙も特殊紙の中に含まれます。
③加工紙
特定用途に使用するために特殊機能を付与した紙で、その方法として、塗工、含浸、エンボス、蒸着などがあります。基紙(原紙)は、通常の植物繊維からなる紙で、包装、産業、情報用途などに多く使われます。ただし、印刷用紙である塗工紙などはこの区分に入れません。
④機能紙
特定の機能を追求した紙で上記の特殊紙、加工紙を含めていいます。紙は情報を記録し保存する(筆記・印刷)、物を包み保護する(包装・保護)、液体を拭き取り、かつ吸い取るという3大機能を基本に用途活用されていますが、それ以外にあるいはそれ以上の能力を持たせて新しい働き、例えば、濾過・吸着・耐熱性・耐薬品性などの機能を付与し、積極的に追求していく紙が機能紙であり、あくまでも「機能」を中心に置いた紙です。すなわち特定の機能を追求した紙のことで、新しい技術や素材などと紙の特性を複合させて製造されます。次に機能紙の例を示しますがその数は多く多岐にわたります。
- 電気を防ぐ…絶縁紙
- 電気を通す…導電紙
- 電気を除く…静電除去紙
- 錆を防ぐ…防錆紙
- 虫を防ぐ…防虫紙
- 燃えない…不燃紙、難燃紙
- 塵を防ぐ…無塵紙
- 水に溶ける…水溶紙
- 水に溶けない…不溶紙
など。
なお、特殊紙でもあり機能紙でもある「水溶紙」や「不溶紙」は「一般紙」を基本にして、原料・薬品などを選び、それを加工処理し、改質して新しい機能を付与して造られます。すなわち水に溶ける紙「水溶紙」と、その対極にある水に溶けない紙「不溶紙」(撥水紙・耐水紙・防水紙含む)は、同じ一般紙に薬品による化学的処理を行なったり、あるいは薬品加工したり、プラスチックフィルムなどと複合して製造することができます。
この例のように、一般紙から新しい機能を付与し、種々のニーズに対応するいろいろな「特殊紙(機能紙・加工紙含む)」を造ることができます。このことは素材である紙の大きな「可能性」「将来性」を示すものであといえます。