3.フォーム用紙
連続伝票用紙(continuousbusiness forms)ともいい、コンピューターなどのアウトプットに使用される紙で、一般に特抄された非塗工の上質紙ですが、塗工紙タイプのものもあります。また、1990年ごろからの環境問題・資源の再利用機運の高まりによって、古紙を配合した「再生フォーム用紙」も生産されるようになり、今では一般化しています。
フォーム用紙は、1983年ごろから急速に伸びてきましたが、景気低迷から、主として金融・証券業界の需要減によって、90年をピークに、93年までの生産量は3年連続して前年割れとなりました。しかし、景気に薄日が差し始めたことから、需要が回復し、94年、95年には前年比でプラスに転じましたが、96年には再び前年比5%のマイナスとなり、かつてのような高い伸びは期待できなく、展望は必ずしも明るくありません。なお、製品形態は巻取紙で、印刷はオフセット方式が主流であり、単色ないし多色フォーム印刷機で印刷され、ミシン目を入れたり、プリンター上で紙を送るため両耳に穴(マージナルパンチ)を開けたりします。また、プリンター用の印字方式には、インキリボンを使用するインパクト式と近年、急速に普及しているレーザープリンター、(水性インキなど使用の)インクジェットプリンターなどのノンインパクト(NIP) 式があり、用紙も印字方式に適したものが要求されます。
フォーム用紙の一般特性としては、たるみ、カールなどがないといった巻取適性がよい、一般上質紙と比較して塵などの異物の混入が少ない、填料(クレーなど)の配合を少なくしギロチンなどの刃持ちがよいこと、トナーの定着性や静電気トラブルを起こさないための、適正な電気抵抗値を持っている、伸縮が小さい、などが挙げられます。
ところで、ΝIΡ用紙(non impact printing paper)は、フォーム用紙としての一般品質特性を持っており、さらに耐水性(インキの滲み等)、プリントアウト後のスタッカーでの折り適性がよいこと、特に「斜傾」が発生しないことなどのNIP適性が要求されます。
注
斜傾…スタッカーで用紙を折り畳んでジグザグ折り(1,000~3,000枚程度のZ折り)するときに、堆積形状が斜めに傾くことで印字過程のトナー定着のため、紙に熱が加わりますが、そのときの用紙形状の変形に起因します。その用紙対策として、抄造時に伸縮安定策を取る必要があります。
Z折り仕上げされ、連続用紙として、プリンターで印字処理されることが多く、近年、印刷・加工工程で、印刷・ミシン目などの加工後、平判シートにカットされた、いわゆるカット紙として仕上げられることが目立ってきました。最近、特に注目を集めているのがページプリンターの普及でする。低価格化と小型化により個人ユーザーにも身近になってきましたが、ページプリンターは、カット紙を使うノンインパクトプリンターで、普通紙に両面印刷することができ、高速な上、高い印字品質がえられます。価格の低下に伴い普及してきており、ロール紙からカット紙への移行が進行してきました。カット紙には、PPC用紙や一般上質紙を断裁したものも用いられており、ビジネスフォームのNIPカット紙化は確実に進んでいます。
4.PPC用紙
従来の複写用紙は、ジアゾ感光紙のように紙の側に発色用の加工が行われていましたが、普通紙タイプの用紙にコピーができる複写機の出現は大改革をもたらしました。PPC用紙は、普通紙複写機に使用される紙のことですが、普通紙複写機は英語でPlain Paper Copierといい、普通の紙に複写できる複写機という意味で、その適用紙をPPC用紙というわけです。
PPCは1938年にアメリカで発明され、1950年にゼロックス杜によって初めて商品化されました。日本においては1962(昭和37)年に、富士写真フィルム社とゼロックス杜との合弁で誕生した富士ゼロックス杜が発売した「ゼロックス」が最初です。このためゼロックスといえば、ΡΡC用紙のことを表わすまでに市場に定着しました。なお、PPC用紙が初めて統計上に登場したのは、微塗工紙と同じ紙・板紙品種分類の改定が行われた1988年のことです。また、ΡPC用紙は普通紙複写用紙ともいわれ、外見上は普通の上質紙とほぼ同じですが、特性が若干異なり、一般の上質紙そのものではありませんい。要求される品質条件としては、静電防止やトナー(カーボンと樹脂の混合剤)が均一に定着されることが第一のため、電気抵抗値が適正範囲にあること、機械内での走行性がよく、紙詰りを起こさないこと、コピー後のソーターでの集積性がよく、カールなどで問題を起こさないことなどが普通紙と異なり、重要であるため、その紙質特性が付与してあります。なお、一般上質紙でもコピーをとることは可能ですがトラブルを起こすことがありますので、使用にあたっては専用紙を選定することがベストです。
なお、PPC用紙の一般坪量範囲は60~80g/m2ですが、64g/m2が主流で、寸法は小口に裁断され、Α3・A4・B4・B5などのカット判で販売されています。色は白が中心で、一部色ものもあり、ほとんどが中性紙の再生紙となっています。
ところで、前記のように情報用紙の中でもPPC用紙は、着実に伸びていますが、これは本来の複写機用途よりも、パソコン、ワープロやファクシミリなどでの用途が増えているためです。各OA機器間での流用化すなわち共用化が進むと、PPC用紙の品質特性だけでなく、それらの機器のプリンター方式であるインクジェットや熱転写などの適性、しかもカラー化対応を持った紙が必要になってきています。このように他のハード機器にも対応した普通紙タイプの紙、いわゆる「共用紙」(マルチ用紙)が開発され、上市されて一般化しています。
5.情報記録紙
コンピューターのアウトプットに使用される用紙で、感熱紙原紙およびその他記録紙に分類されています。
(1)感熱紙原紙
熱記録紙に用いられる原紙です。OA機器のうちでも、ファクシミリやワープロ、コンピューターの普及がめざましいく、現在ではこれらの機器のプリンター用紙は普通紙が主流になってきましたが、1990年ごろまではサーマルヘッドによる感熱記録式が大半を占めていました。感熱記録紙(感熱複写紙)は、ドット式のサーマルヘッドに、電気的な熱エネルギーを文字画のパターンとして与えることによって画像形成する用紙をいい、極薄の上質紙を原紙に、熱によって発色する発色剤(無色染料)と顕色剤を紙面に混合塗工したものです。これまでは、時間とともに字が薄くなり、白地の部分も黄ばんでくるといった長期間の保存には不適という保存性の問題や、感熱ということから熱に弱いなど、使用に際しては留意すべき品質課題が多くありましたが、技術進歩によって1990年代に入ってから、高保存タイプの高品位商品が登場してきました。これに伴い、一時押され気味であった感熱紙の信頼性が高まり、出力が静寂なこと、用紙が小型のロール状で装着が簡単なこと、低コストであることなどの利点が見直され、ここにきて各種のOAプリンター分野で感熱方式採用の動きが活発化しています。このため、スーパーマーケット、コンビニエンスストアのラベルやレシート、水道や電気料金の検針用紙、高速道路の領収書、鉄道切符、銀行のATM(現金自動預け払い機)利用明細書、販売時点情報管理(POS) ・電子レジスター(ECR) の感熱方式採用など広範囲に使用されています。
(2)その他情報記録紙
OA機器の出力用紙として使用される感熱紙以外の用紙であり、静電記録紙原紙、熱転写紙、インクジェット紙などがあります。
①静電記録紙
上質の基紙上に絶縁樹脂層を塗布し、電荷を加えて静電潜像を形成した後、トナーで現像・定着・記録する方式に使用する用紙です。高速・高密度で記録できるという特徴があります。またカラーでの記録もできます。
②熱転写紙
ワープロなどのサーマルプリンターの記録紙として広く使われています。ここで図2に溶融型熱転写方式による熱転写記録の原理("日々是好日"とっつあんの雑記帳- 印字の話 印字のしくみから引用)を示します。
図2.熱転写記録の原理(模式図)
サーマルヘッド(発熱体、加熱体)で発生する熱エネルギーに応じてインクシート(インクリボン、インクテープ)のインクを溶融、または昇華してサプライ、すなわち被転写紙(熱転写記録紙)に転写、転写されたインクが冷えて再固化し、加圧ローラーの圧により記録紙(サプライ)に定着させることによって文字・画像を得る方式です。
被転写紙には塗工タイプと非塗工タイプがあり、インクの転移性をよくするため、高い平滑性を必要とします。なお、インクの種類によって、溶融型と昇華型などがありますが、ベースシートには、10μm程度の特殊薄葉紙、またはポリエステルフィルムが使われ、ワックスタイプの熱溶融性塗料、あるいは昇華性染料がグラビアコートされています。
③インクジェット記録用紙
水性インキを細いノズルから霧状にして紙の上に噴射して吸収させ、画像を形成する、いわゆるインクジェット方式に用いられる紙で、普通紙が使用でき、上質紙、塗工紙やフィルムなど幅広い記録媒体が選択できます。印刷や電子写真方式では、インキやトナーが紙表面に定着するのに対して、本方式はインキが水ベースであるので、紙層中にインキが浸透して分散しやすいため、フェザーリングと呼ばれるひげ状のにじみ防止など適正なサイズ性を付与させる等、紙質での対応が必要です。
また、ルーペなどで、画像を拡大して見ると、ごく小さいインキのドット(点)が集まっているのが分かります。用紙としてはインキを速やかに吸収して、このインキドットを真円に作ること、記録濃度を高くすることなどが求められます。この点については、上質紙よりも塗工紙タイプの方が有利です。
高速印字が可能で、非接触記録方式のため騒音が少なく、カラーコピーが容易なことから、ハードコピーの新しい方式として急速に伸び、注目されています。また、最近、パソコン用などのプリンターとして、インクジェットプリンターが、小型で安価、カラー印刷もできるとあって、個人向けに売れ行きを伸ばしています。