個々の品種説明
それでは表1にそって個々の品種について主なものを説明していきます。
(1)工業用雑種紙
工業用雑種紙は、加工原紙と電気絶縁紙およびその他工業用雑種紙に区分されています。
⑴加工原紙
2次加工を目的とする紙すべてを総称しており、さらに建材用原紙、積層板原紙、接着紙原紙、食品容器原紙、塗工印刷用原紙、その他加工原紙に小区分されています。特定用途に使用するために特殊機能を付与した紙で、ベースペーパーに塗工(印刷用のクレーコート等は除く)、含漫、エンボス、蒸着、貼合などの加工をするもので、原紙や抄紙法はさまざまあり、加工もオンマシン加工とオフマシン加工があります。
①建材用原紙
家具・壁材用のプリント合板用に用いられる化粧板用原紙と壁紙用に使われる壁紙原紙(裏打ち用を含む)に分類されます。
a)チタン紙(パターン紙)
化粧紙は別名チタン紙とも呼ばれ、原紙に二酸化チタンを内添しています。高不透明性のチタンは遮蔽しやすく、下地(基材)の影響を押さえるために使用します。
化粧板用として印刷、樹脂含浸、加熱成型加工され、かつ装飾的機能を果たすために、印刷適性が良好であること、色が安定していること、きょう雑物がないこと、隠蔽性・耐水性・耐光性・耐熱性・耐薬品性、さらに樹脂含浸性に優れていることなどの諸特性を満足する必要があります。この厳しい要求を満たすために、原紙抄造時に顔料、主として不透明性が高く、高白色度の二酸化チタンを5~15%前後抄き込むわけです。このためー般的にチタン紙とかパターン紙(模様紙)といわれています。
木目・石目などの模様や意匠柄をグラビア印刷されたチタン紙は、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート(DAP)樹脂等の合成樹脂で含浸後、30~60分間くらい、50℃で加熱、加圧硬化されて用いられたり、オーバーコートして化粧板の基材層(合板、ハードボード、フェノールコアや金属板など)に貼り合わせ成型されます。このようにして用いられることで基材層を光学的・物理的に遮蔽し化粧板としての装飾的機能を果たします。なおチタン紙の一般坪量範囲は35~200g/m2ですが、実際には80g/m2のものが主流です。
化粧板の製造方法は、化粧板原紙にメラミン樹脂やポリエステル樹脂等を含浸させ、これをフェノールコア原紙やMDFといった基材に熱圧プレスして完成させます。もし、二酸化チタンが入っていないと、含浸後の原紙が半透明の状態のままで、基材そのものの地合を拾い、製品としての価値が無くなります。そこで、二酸化チタンを入れて遮蔽性を付与させます。二酸化チタンは白色顔料の中で最も屈折率が高く、遮蔽力が大きいからです。
(以下、ホームページぷりんとぴあから抜粋)
最も一般的なものが、主にテーブルや家具の表面材として使われるポリエステル化粧板です。 ポリエステル化粧板の製造方法には大きく分けて2通りあります。 一つはフィルム法といい、合板 (ベニヤ板) などの基材の上に印刷した化粧紙を貼り合わせ、その上にポリエステル樹脂を塗った後、表面をフィルムで覆い樹脂を硬化させて成型する方法で、もう一つは熱圧成型法というもので、これも印刷紙にチタン紙を使います。 チタン紙は、熱硬化性樹脂の含浸性が良くなるよう原紙に細かい穴があいています。 また樹脂を含浸した後も隠蔽性を持つよう、チタンを主とした着色顔料が10%~30%混合されています。 このチタン紙に印刷後DAP (ジアリルフタレート) 樹脂を含浸させ、乾燥させておきます。 これを上から、鏡面板、含浸ポリエステル印刷紙、基材の順に重ね合わせ、高温、高圧でプレスして積層板を作製します。 これがダップ化粧板です。
テーブルの天板などに使用される硬い化粧板は、メラミン化粧板というものでこれも市場に多く出ています。 メラミンという樹脂を使用し、フェノール含浸紙を裏打ち材としてDAP樹脂よりさらに高圧熱プレスによって作られています。
b)建材用薄葉紙
薄葉(うすよう)紙は、辞典用紙、シガレットペーパー、タイプ用紙、グラシン紙,薄葉和紙など用途により種類が多く、坪量は洋紙では40g/m2以下、和紙では20g/m2以下のものが対象となります。ここでいう建材用薄葉紙は印刷された後に、主に合坂の基材層に貼り合わせ、プリント合板として内装壁材、家具材、天井材等に用いられるものです。この原紙はチタン紙とは異なり、抄紙時に二酸化チタンを使用していないため隠蔽力が劣ります。坪量は17、23、および30g/m2があり、一般には23g/m2が広く用いられています。印刷適性、紙間剥離強度や基材との貼り合わせ適性などを考慮して特抄されます。
印刷された薄葉紙はラミネーターまたは熱プレスにより合板に貼合した後に、ウレタン系などの塗料がオーバーコート塗装される場合と、ロールコーターなどによって表面塗布された後に合板に貼合し仕上げられる場合とがあります。
②積層板原紙
電気製品などに使用されるプリント基板用の原紙です。プリント基板は、この原紙を何層か重ねてフェノール樹脂を含浸して板にしたものにIC(集積回路)をエッチング(下地を溶かして回路を刻み込む)することによって作られます。ICを組み込まれた最終製品はあらゆる条件で使用されるため、原紙にも伸縮、カール適性など厳しい条件が課されています。
③接着紙原紙
この原紙には粘着・剥離用の基紙、工程紙が含まれます。工程紙とは紙やフィルムに離型剤をコーティングしたり、離型性の良い樹脂をラミネートしたものをいいます。さらに成型品の工程補助および保護を目的として各種製品の成型工程で使用されます。またシールやラベルでおなじみの剥離紙の原紙もこの分野です。
④食品容器原紙
紙コップ、紙皿、小型液体容器などに使用される原紙を指します。
⑤その他加工原紙
a)硫酸紙(パーチメント紙)
木綿繊維または化学パルプを用いた紙を濃硫酸溶液で処理した後に水洗いし、乾燥、最後にグリセリン液中を通過させ柔らかくして仕上げます。高密度で強く、無味無臭で、耐熱・耐油・耐水性のある半透明の薄い紙で、バター、マーガリン、チーズ、肉製品などの内装用や冷凍食品のトレーライナー、合板用などに広く用いられています。
b)耐脂・耐油紙
一般に耐油紙と呼ばれ、天ぷらやから揚げなどの揚げ物の下に敷き、油がしみ込み食器などが汚れないように用いる紙です。耐油紙には、フィルムをラミネートしたものとフッ素樹脂を使用したものが多く見られます。フィルムをラミネートした耐油紙は、油をしみ込ませないという点で最も優れています。しかし、使い終わって廃棄物となった場合には環境に負荷をかける素材となります。フッ素樹脂を使用した耐油紙も油をしみ込ませない点では優れています。ただし、現在使われているフッ素樹脂は、加熱時に環境中に蓄積する物質が発生するために問題視されています。日本製紙パピリアは国内で初めてフィルムやフッ素樹脂を使わない環境に影響が少なく安心して使えて、しかも高性能な耐油紙を開発しました。
c)防錆紙
防錆紙とは、鉄鋼などの金属材料の錆び防止用として、弱アルカリ性で抄いた紙(中性紙)の表面に防錆剤を塗布した紙のことをいいます。金属間に挟む合紙などとして使います。
d)蝋(ろう)紙(ワックス紙)
グラシン紙、クラフト紙などにパラフィンワックスを主とした塗布剤を均一に浸透または塗布した紙で、安価で衛生的であり、パン、冷凍食品、紙カップ、牛乳ビン用の紙栓などに用いられます。
⑵電気絶縁紙
コンデンサーに使用される厚さ0.005~0.025mmのごく薄い絶縁紙であるコンデンサーペーパー、および変圧器などの各種絶縁用に使用される厚いプレスボード、ケーブル・コードなどです。いずれも電気絶縁用のため化学的純度の高いことが要求されます。
⑶その他工業用雑種紙
①ライスペーパー
巻たばこの巻紙のことです。シガレットペーパーともいいます。非常に薄く、坪量は21g/m2の薄葉無サイズ紙で、白くて不透明度が高く、直接口に入れる紙であるため外観の良さ、さらに異臭・異物・有毒物質などがなく安全性が高いことが要求されます。また、たばこの葉と燃焼速度が同じになるように配慮されたり、灰がたばこの内側に丸まく固まりやすくなるように、紙中に助燃剤(フマル酸ソーダなど)や填料として炭酸カルシウム(20%以上)が含有されて通気性、燃焼性などが満足するように造られております。
亜麻を主原料としておりますが、木材パルプも使用されています。通気性を高くするためにコロナ放電によりごく微小な孔をあけることもあります。極薄ですが、高速巻き上げ機に対応できるだけの強靭性が要求されます。さらに印刷適性も必要で、地合なども重要となります。このようにシガレットペーパーの品質スペックは非常に厳しいものになっています。
ところでライスペーパーは文字通り、お米の紙ですが、ベトナム料理の代名詞と言われるものに、米の粉から作られた皮で紙のように薄く色の白さを特徴としていますが、これに食べ物を巻いて食べます。この薄い皮をライスペーパーといいます。
また、中国南部や台湾産の通脱木(つうだつぼく、カミヤツデ(紙八手)の別称=rice paper plant)の円柱状の髄を、周囲から薄く剥いで紙状にしたものをライスペーパー[通草紙(つうそうし)、Chinese rice paper]といいますが、造花の材料や書画で使う紙に用いられました。これが「紙八手」という名前の由来となっているとのことです。
なお、たばこの巻紙のことをライスペーパーという由来は、このへんから来ているといわれていますが、諸説があるようです。
②グラシンペーパー(グラシン紙)
化学パルプを高度に粘状叩解して抄造し、加湿後、多段スーパーキャレンダー掛けをした光沢のある半透明な薄葉紙です。透明性、光沢性の特性により、食品、たばこ、化粧品、薬品等の包装などに使用されます。さらにこれにワックス処理、ラッカー処理、ラミネート加工などを施すことによって水蒸気、ガスバリヤ性、耐久性などが付与され、製品の特徴ある外観のため包装のアクセサリー的用途として、カートンの中仕切り、緩衝用の段付きグラシンなどに、また高度のバリヤ性を生かしてケーキカップ、ポテトチップ包装、薬の包装などに用いられます。坪量は25.8、30.5および35g/m2があります。
③その他工業用雑種紙
上記以外の工業用の雑種紙で、トレーシングペーパー、濾紙、水溶紙、遮光紙、煙草用チップ、吸取紙などが含まれます。
a)トレーシングペーパー
高度に粘状叩解した化学パルプを主原料として作った透明性の高い紙で、原図をトレースするのに使います。
b)濾紙(ろし)
液中の沈殿物や夾雑物をこすのに用いる柔らかく多孔質な紙。濾し紙(こしがみ)ともいいます。濾紙は一般的には綿繊維(セルロース)からできており、酸や塩基、有機溶媒などへの高い耐性を持っています。しかし、強力な脱水剤(濃硫酸など)や酸化剤では分解されるため使用できません。このような場合はガラスフィルターなどを使用します。なお、濾紙は定性分析用と定量分析用の2種類がありますが、定量分析用の濾紙は、焼却した場合に後に残る物質(灰分)がきわめて少ないように製造されています。
c)水溶紙
一般の紙は原料である植物の繊維同士がお互いに結合して強く接着してできています。これに対して水溶紙は、一般紙を加工して水溶性のセルロース誘導体を主成分として造られ、水に入れると瞬時にしてバラバラに溶け、分散溶解する紙です。ラベル、流し灯籠、特殊文書用紙、生理用材料などに使用されます。
d)遮光紙
乾板、印画紙などを包むのに用いる光を通さない紙のこと。
e)たばこ用チップ
フィルター付き紙巻きタバコに使用されるプラグをたばこに取り付ける薄葉紙です。口に触れるためはっ水性や安全性が要求されます。
f)吸取紙
インクなどの吸収に使います。ぼろ、化学パルプ、機械パルプなどを用いたサイジング(滲み防止加工)を一切施していない無サイズで嵩高で、多孔性で吸水性に富んだ紙です。インクで紙に書いたところに上から押しあてて、その水分を吸いとらせて使用します。なお、紙の裏表は見分けにくいのですが、吸取紙は紙肌が若干ザラつきのある面が表側で、やや平滑に感じられる面が裏側になります。