(2)家庭用雑種紙
統計上は、書道用半紙などの書道用紙や障子紙、襖紙、紙ひも、紙バンド、奉書紙、ティーバッグ用紙、傘紙、油紙、のし袋などが含まれます。家庭用に使われるもので、家庭生活に身近な紙といってよく、おおむね和紙をその源としています。メーカーは山梨県や高知県、鳥取県などの以前、手漉き和紙生産の盛んだった地域に多くありましたが、時代の変遷とともに生活の洋風化が進み、長期的に見て需要は漸減傾向にあります(参考 家庭用雑種紙生産量…1995年116千t、2000年87千t、08年53千t)。しかし、風合のある和風のよさを見直し、需要喚起の動きもあります。
家庭用雑種紙は一般に晒クラフトパルプを主な原材料として、円筒ヤンキー式または短筒ヤンキー式抄機で抄かれます。家庭用雑種紙に分類されているなかで主に「書く、包む、拭く(吸う)」用途に使われる品種を若干説明しておきます。
- 書道半紙…書道に用いられる紙で、その大きさが242×332mmです。半紙とは、古くは延べ紙(杉原紙)を半分に切った物を言い、後に縦240mm、横320~350mmの日本紙を指すようになりました。これは武家の公用として用いられた物が一般的に広まったものです。半紙にも様々な個性があるのです。
- 奉書紙(ほうしょがみ)…奉書に用いた楮を原料とした厚手の紙。皺がなく純白で、きめが細かく美しい厚手の和紙のことで、大きさは大広奉書紙・大奉書紙・中奉書紙・小奉書紙の大・中・小の別があり、着色・有紋のものもあります。福井県今立町(武生市と合併し現在越前市)の越前奉書が有名です。
越前の特産品で室町時代ころから漉かれており、室町幕府がこの紙を公文書として用いたことから、命令書の意の「奉書」紙と呼ばれるようになったといわれています。後にに漉く技術が全国に伝播し、各地で奉書紙が生産されるようになりましたが、伝統を受け継いだ純粋な楮を原料とした手漉き奉書以外に木材パルプ入りの機械漉き奉書が生産されるようになりました。現在も主として結婚式、命名式などの儀礼用に用いられています。
- 障子紙(しょうじがみ)…楮、化学パルプ、化学繊維を主原料とした障子用に用いる紙。障子紙の特徴としては、強靭性で外光を柔らかく室内全体に拡散すること、騒音をさえぎること、多孔質で外の空気の湿度や温度を適度に和らげて室内に入れること、紙の美しさなどが挙げられます。日光に透かして鑑賞されるため、原料の繊維が整然とそろっている紙が好まれます。そのためには、繊維の並ぶ方向を天地方向のみでなく左右にも均等になるように、すぐれた紙漉きの操作が必要となります。
江戸時代に障子紙として最高と考えられたのは、美濃の直紙(なおしがみ)で、別に書院紙という名称も生まれ、紋書院のように透しの装飾をした障子紙も漉かれました。当時、障子紙として評判の高かった紙は、ほかに周防、陸奥、下野の那須、安芸の広島などから生産されたものいわれます。明治時代以後、明障子はさらに普及したため、障子紙の生産は盛んになり、手漉き和紙の半数以上は障子紙となりました。1960年ころから、機械抄きのレーヨン障子紙が大量に出まわったこと、また生活様式が変わって障子が少なくなったことなどの理由で、手漉き障子紙は急速に減少しました。現在、手漉きの障子紙は、高級な障子紙のみ残っており、美濃紙の本美濃紙・在来書院・改良書院、内山紙の内山書院、土佐紙の土佐障子紙などが生産されています。
- ティーバッグ(tea bag)…紅茶・緑茶などの葉を1杯分ずつ濾紙の袋に入れたもので、そのまま熱湯に浸して用います。
- 熨斗袋(のしぶくろ)…熨斗・水引(みずひき)をつけ、または印刷してある紙袋。金銭を贈るとき、入れるのに用います。
- 傘紙…唐傘を張るのに用いる紙。楮(こうぞ)の繊維だけで製したもので、防水のために桐油などの乾性油を塗ります。
- 油紙(あぶらがみ)…ゆしともいい、桐または荏胡麻(えごま)などの乾性油を引いて防水加工した楮製の和紙。防水を目的とする雨具、医療具、荷造り・穀物貯蔵用袋、傘、敷物などに使われます。なお渋紙(しぶかみ、しぶがみ)という紙がありますが、昔は帳簿などの反故紙を張り合わせて、柿渋を塗り防水性を与えて、衣類、敷物、本の表紙、包み紙などに使われました。柿紙ともいいます。紙衣に渋を引き、コンニャク糊で張り合わせた旅装具は需要が高く、さらに漆を塗った一閑張りは容器に使われました。