紙には、なぜ紙の日がないのでしょうか?
今回のテーマは「紙には、なぜ紙の日がないのでしょうか」です。
紙と材料こそ違いがありますが、製造工程が似ているといわれる鉄。その「鉄の日」(鉄の記念日)は12月1日。岩手県釜石の製鉄所が洋式高炉によって鉄の操業を始めたのが、1857(安政4)年のこの日です。この洋式高炉によって、日本における鉄の近代的な生産が始まりましたが、これを記念して日本鉄鋼連盟が1957(昭和32)年に、12月1日を「鉄の日」(鉄の記念日)と制定しました。
それでは「紙の日」は、あるのでしょうか。
「紙の日」(紙の記念日)をインターネットで検索しますと、12月16日が「紙の日」となっています。これはどうしてでしょうか。
これは生涯に多くの企業の創設・育成に力を入れた実業家・渋澤栄一が1873(明治6)年に日本最初の洋紙会社である「抄紙会社」(後の王子製紙)を設立し、1875(明治8)年には東京の王子村に工場を完成。その年の12月16日に営業運転が開始され、洋紙産業の幕開けとなりました。この日を「紙の日」(紙の記念日)としたわけです。
しかし、これはマスコミなどの独り歩きで、わが国の製紙業界からは公認されておりません。
他には、
①「ワシ」の語呂合わせで8月4日を「和紙の日」(紙の日)として制定にする説もあります。例えば、「和紙の日」は検索で東京・日本橋にある小津和紙博物舗が毎年8月4日を「和紙の日」と定め、和紙まつり、和紙商品のバーゲンなどを開催しているようです。これは和紙を扱っている会社の一行事に過ぎません。もうひとつ、
②中国の紙漉きの技術が、わが国に伝えられたのが推古天皇の18年(西暦610年)春3月であることから、6月10日を「紙の日」として制定する説もあります。
③ なお、和紙発祥の地といわれる越前和紙で名高い福井県今立町では、「紙の神」である紙祖神・川上御前が祀られている岡太(おかもと)神社と大滝神社および五箇地区一円で、毎年5月3日から5日にかけ、「岡太神社・大滝神社の春季例大祭」と、川上御前に敬慕と感謝を表す華やかで荘厳な、わが国唯一の「神と紙の祭り」があり、諸行事が行われています。そして祭礼のある5月3日には、全国の紙の流通業界のトップが岡太神社にお参りされているということですが、これも特に関係ないようです。
なお、検索の結果、他に紙がらみで多くあったものは、「夕刊紙の日」や「日刊新聞創刊の日」などですが、念のためにそれらを下表に掲げておきます。
記念月日 | 記念日の名称 | 由来など |
---|---|---|
2月21日 | 日刊新聞創刊の日 |
1872(明治5)年のこの日、日本初の日刊新聞「東京日日新聞」(現在の毎日新聞)が浅草で創刊されました。 東京日日新聞は、世界初の新聞戸別配達を実施し、1911(明治44)年には、大阪毎日新聞と合併して全国紙へと踏み出しました。 |
2月25日 | 夕刊紙の日 |
1969年(昭和44年)、日本初の駅売り専門のタブロイド判夕刊紙「夕刊フジ」』が発刊されたのがこの日です。 なお、日本で新聞の夕刊が登場したのは、1915(大正4)年の10月10日で、「大阪朝日新聞」と「大阪毎日新聞」が同時に発行を開始しました。 |
3月6日 | スポーツ新聞の日 | 1946(昭和21)年3月6日、日本初のスポーツ新聞「日刊スポーツ」が創刊されました。 |
10月15日~21日 (15日から1週間) |
新聞週間 | 1947(昭和22)年に愛媛新聞社が初めて実施し、日本新聞協会が翌年の1948年から実施。いろいろな記念行事が開催されます。 |
新聞広告の日 | 新聞週間中の10月20日 | |
新聞配達の日 | 新聞週間中の日曜日 週間中の日曜日が「新聞少年の日」で、これは1962(昭和37)年から実施。 |
また、「和紙の日」と「洋紙の日」はどうでしょうか。検索しても両方ともありませんでした。
「紙の日」には「和紙の日(記念日)」と「洋紙の日(記念日)」とが別にあってもよいと考えますが、いかがでしょうか。世界に誇れる「和紙」。「和紙の日(記念日)」が、本当にあってもいいと思います。
(2009年11月1日)
参考・引用資料