コラム(111-1) 「紙はなぜ」(31) 紙は、なぜ再生されるのでしょうか? 1

紙は、なぜ再生されるのでしょうか?

今回のテーマは「紙は、なぜ再生されるのでしょうか」です。

 

再生とは、再生紙とは

再生とは、もとのように生まれ変わることですが、紙の場合は、再び生まれ変わったものを

再生紙といいます。

再生紙は、回収した古紙(こし)から作られた再生パルプを主原料とする紙のことですが、古紙は日本工業規格(JIS)に次のようにて意義付けられています。

用語説明
古紙 古紙とは、日本工業規格(JIS)の紙・板紙及びパルプ用語(JIS P 0001 番号2058)に、「使用済み又は加工工程から回収した紙又は板紙とことで、再パルプ化して紙又は板紙を製造するときに再利用する(対応英語 waste paper)」とあります。

また、JIS P 0001 番号1005には、古紙パルプを「使用済みの紙・板紙又は紙・板紙の断裁くずなどを離解処理又は離解・脱インキ処理して得たパルプ(対応英語は、recycled fiber)」と説明されています。

 

もう少し古紙について説明します。

古紙とは、「製紙メーカーから製品(商品)として出荷された後に、家庭や企業などの消費者・需要者の手に渡り、使用済みになった紙や、紙製品などを作るときに発生する裁断屑などが、ゴミとは別に再生利用する目的で分別、回収された紙」のことをいいます。

つまり、製紙メーカーから紙製品(商品)として出荷された後、回収されて製紙原料などになるものが古紙であって、ただ古い紙が古紙ではありません。リサイクル(再生)資源となるものが古紙というわけです。

 

次に再生紙について説明します。

用語説明
再生紙 再生紙」とは、一度「紙」(板紙も含む)として使用され、回収された古紙を配合した、いわゆる古紙入りの紙のことですが、わが国ではその配合率について は規制(定義)がありません。従って、古紙が少しでも配合されていれば再生紙といえるわけです。言い換えますと、古紙配合が1%でも100%でも「再生 紙」という日本的な曖昧さがあります。

 

もう少し説明しますと、紙は木材などの植物繊維から作られていますが、この繊維(セルロース)は水中で分散され、抄紙機で抄かれ、乾燥機(ドライヤー)で乾燥すると繊維同士が絡み合います。そして紙になりますが、印刷所・加工所など市中で使われて、裁断屑などが回収されて、古紙として製紙工場に戻り、これを再び水の中で攪拌しますと、再び繊維状に戻ります。この分散した紙料を抄紙機で抄けば、これが再生紙です。

 

このように紙は、リサイクル(再生)ができるわけです。市場からの回収機構も江戸時代の古くから確立しており、再生しやすくなっています。

 

なぜ、紙を再生しなければならないのでしょうか

それでは、なぜ紙を再生しなければならないのでしょうか。再生すればどんなメリットがあるのでしょうか。

 

古紙を活用する狙いは、

 

①紙ゴミの減量…分別回収、使用されれば資源。その分、ゴミが減り美化にもなるとともに埋め立て、焼却などが不要となり、余分な燃料、コストが不要となります(環境保護)。

②森林資源の利用減…「古紙は町の巨大な森林資源」といわれますが、古紙1tから約850kgのパルプが再生されます。例えば、古紙1tで再生パルプ100%のトイレットペーパーが約5,500ロール(114mm幅×シングル60m)が作られます(森林保護)。

③省エネルギー…古紙パルプ製造には木材チップから作られるパルプのおよそ1/3のエネルギー消費量で済み化石燃料の節減(二酸化炭素CO2発生の抑制)となるなど環境負荷が少なくなります。

 

紙の生産における環境負荷は、原材料だけでなく、製造工程も含めた全体で評価する必要があります。木材パルプから作られる紙と、古紙をリサイクルした紙では、製造工程が異なります。このためそれぞれを生産する場合のCO2排出量も同じではありません。木材から新しく製造される木材パルプは、製造工程で発生する黒液(植物性廃液)をバイオマス燃料として使用できるため、化石燃料の消費量を抑えられるという特徴があります。

一方、古紙をリサイクルする場合は黒液の副生がないため、化石燃料を使用しなくてはならず、化石燃料の消費量は木材パルプのものより多くなります。具体的には、製紙連の報告では、古紙配合率1%増加でCO2排出量が0.54%アップするとされています。

これらのことから、すべての紙製品に古紙100%を求めることが、本当の意味で環境にやさしいと言えないことは明らかです。紙にはさまざまな種類がありますが、それぞれ使用目的などに応じた美しさや強度、印刷適正などが求められています。こうしたことを考慮しながら、それぞれの古紙の配合率、生産工程における環境負荷を考え生産してはじめて、環境にやさしい紙と言うことができます。

 

などが主な古紙の使用意義で、紙を再生すれば上記のようなメリットがあります。

なお、資源保護・再生は持続すべく永遠のテーマですが、古紙は有効でかつ重要な「リサイクル(再生)資源」であり、古紙の回収可能限界値(約68%)への挑戦と、さらなる古紙活用を促進していく必要があります。

 

  次のページへ


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)