紙について(5-1) 紙のできるまで《パルプ化工程》

紙製造には、多くの原材料・薬品や抄紙用具、設備が使われていますが、紙の種類・品種により、品質スペックが違うため、使われる原材料・薬品などの種類、配合や製造条件などがそれぞれ異なります。以下、一般論として紙の製造について工程順に簡単に説明します。

 

1.パルプ化工程

紙の種類はたくさんありますが、現在、世界の大部分の紙、およそ90%は木材系の植物繊維を原料としています。わが国では、99.8%とほとんどが木材系で、他に非木材系の植物繊維が使用されています。

したがって、ここでは木材から作られるパルプおよび紙を中心に紹介して行きます。

 

(1)木材

紙は、木材、主に間伐材などの小径木、製材廃材、合板工場・家具工場の廃材、パレット・包装箱・住宅などの解体材や植林材などの原料をチップ(木片)にし、パルプ化工程を経てパルプを作ります。

ところで、木材からパルプを得るパルプ化工程は、「調木工程」(剥皮、チッピングなど)→「蒸解工程」→「洗浄・精選・脱水工程」→「漂白工程」から成り立っています。

こうして得られたパルプは、一方、古紙から作った古紙パルプを必要に応じて配合して、紙料調成工程、抄紙工程、(塗工紙・加工紙の場合は)塗工・加工工程を通り、さらに仕上工程を経て紙は出来上がります。

換言すれば、紙製造の基本は、「原木・調木」→「パルピング(蒸解)」→「叩解」→「抄紙」(乾燥)→(「塗工・加工」(乾燥))→「仕上げ」であり、昔から行われている紙漉きの原理[①皮を剥く ②煮る ③叩く ④抄く ⑤乾かす]は、現代でも引き継がれ基本的には変わっていません。

木材についてもう少し説明します。

 

木材の主成分はセルロース(繊維素)ですが、木材、古紙などの繊維原料を機械的および化学的に処理して繊維を分離し、パルプを作ることをパルプ化といい、そのパルプが紙の原料となります。

紙・パルプの原料である木材は、針葉樹と広葉樹に分類されます。

その木材組織は、種々の細胞の集合体ですが、その主な細胞は仮道管、木繊維、道管(ベッセル)、柔細胞で形成されていますが、樹種により差があり、針葉樹では一般に道管と木繊維はなく、仮道管がほとんどで重要な要素をしています。また、広葉樹には仮道管はなく(樹種により少量存在)、道管と木繊維が重要な役目をしています。

なお、紙パルプ用では、そのうちの仮道管、木繊維のような細長い細胞を便宜上、繊維と呼んでいます。

 

また、木材組織は繊維と繊維の間を細胞間層(大部分がリグニンで構成)が膠着し維持されているため、このような組織構造を持つ木材から繊維を分離し、パルプを得るには、この主として接着剤の役目をしているリグニンからなる細胞間層の膠着力を何らかの方法で破壊することが必要になるわけです。

その方法として、機械的処理による方法(熱、柔軟化剤処理を含む)と化学的処理による方法があり、これらの組み合わせにより各種のパルプ化法ができます。

 

(2)パルプ

ここでパルプについて触れます。

パルプとは、木材その他の植物を機械的、化学的、あるいはその組み合わせによる方法で処理してセルロース繊維を抽出したものです。紙、レーヨン、セロハンなどの主原料として使われています。

分類は原料別、用途別、製造法によって行われております。

 

原料別にはリンターパルプ、ぼろパルプ、竹パルプ、エスパルトパルプ、バガス(サトウキビかす)パルプ、麻パルプ、わらパルプや和紙の原料である楮・三椏・雁皮の靱皮(じんぴ)繊維パルプなどの非木材パルプがあります。

しかし、量的に多く、パルプの最も重要な原料は木材であり、針葉樹Nadelholz(ドイツ語)から作ったパルプが針葉樹パルプ、広葉樹 Laubholz(ドイツ語)からのものが広葉樹パルプで、わが国では、それぞれ Nパルプ、Lパルプといいます。

 

用途によって紙やノンウーブンのように繊維形態をとったまま利用して使う製紙パルプ(paper pulp) と、ビスコースレーヨン・セロハン・酢酸セルロースのように再生セルロースやセルロース誘導体を作るために用いられる、セルロース純度の高い溶解パルプ(dissolving pulp)の二つに分類されており、圧倒的に多いのは製紙用です。

また、製造方法によって、機械パルプ(MP)の一つとして砕木パルプ(GP)や、亜硫酸パルプ(SP)・ソーダパルプ(AP)・クラフトパルプ(KP)などの化学パルプ(CP)、その中間的な機械的・化学的パルプとしてのケミグランドパルプ(CGP) ・セミケミカルパルプ(SCP) 、それに古紙から作った古紙パルプなどがあります。

 

なお、明治23(1890)年に初めて製造された砕木パルプ(GP:Ground Pulp)には、白くて、軟質で摩砕しやすい針葉樹(N、ソフトウッド)が用いられました。

また、わが国で広葉樹が活発に製紙用に使われ始めたのは戦後のことです。従来から行われていたパルプ化法では、硬質で樹脂分の多い広葉樹(L、ハードウッド)はうまく処理できなかったことが、使われなかった大きな理由ですが、パルプ化法と漂白法の技術進歩により広葉樹も使用されるようになり、今では製紙原料として重要な位置づけにあります。

広葉樹の使用比率は徐々に高まり、現在では、55~60%レベルに達しています。かつて短繊維(1mm前後、針葉樹は2~4mm程度)のために抄紙性と紙力に難点がありました広葉樹パルプも、紙製品の良好な合、平滑性、不透明性などの点で好まれて使われています。

木材組織から繊維を損傷せずに成るべく完全な形で分離するためには、機械的処理をできる限り軽くして化学的に脱リグニンすることが望ましく、機械パルプからセミケミカルパルプ(半化学的パルプ)、化学パルプと次第に脱リグニン化が進むほどパルプ品質(特に強度、白色度、退色性)は良好となります。しかし、逆に脱リグニン化を進めるほど、一定量の木材から得られるパルプの量、すなわちパルプ歩留りが減るためコスト高になります。

現在は針葉樹、広葉樹を問わず広い範囲の樹種からパルプを製造することができ、強度の高いパルプが得られることから、クラフト法によるパルプ(KP)が主流になっており化学パルプの中で、およそ98%を占め製紙用パルプ全体でも約80%に相当する位置づけにあります。

 

クラフトパルプは、「蒸解工程」で苛性ソーダと硫化ナトリウムを主成分とする薬液をチップに加え、約170℃で2時間ぐらい加熱して、中間層のリグニンを選択的に溶出して繊維を取り出しますが、有用なセルロースおよびヘミセルロースも一部、溶出するのは避けられません。

また、「漂白工程」では、できる限り繊維を傷めないで、リグニンを分解して漂白効果を上げるために何種類もの漂白剤・薬品で処理する方法を多段漂白といいますが、クラフトパルプ法では塩素(C)、アルカリ抽出(E)、次亜塩素酸塩(H)ないし二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、二酸化塩素(D)と5段漂白が常法として多く採用されていましたが、最近では環境問題(ダイオキシン)から塩素使用を削減する酸素漂白法、さらに塩素(Cl2)を用いない漂白法[ECF(Elementary Chlorine Free 無塩素漂白法…二酸化塩素ClO2は使用) 、TCF(Totally Chlorine Free 完全無塩素漂白法)]として酸素(O)や過酸化水素(P)、オゾン(Z)を使用する方法が開発、採用され趨勢になってきております。

 

パルプは単独で使用されたり、作ろうとする紙の性質・目的に応じて何種類かのパルプを組み合わせて用いられることもあります。

例えば、印刷用紙には広葉樹晒クラフトパルプ(針葉樹晒クラフトパルプも一部使用)、新聞用紙には機械パルプ主体、セメント・米・肥料など重量物の包装袋用には針葉樹の未晒クラフトパルプという具合に、品質、用途、経済性などを考慮して適性に使用されています。

参考までに、次にチップおよびパルプの写真などを示します。

項目
チップ(木片)
未晒パルプ(未漂白)
晒パルプ(漂白)
写真  
白色度(%)
- 20~45 85~88
パルプ歩留り(%)
- 90~95 45~55(およそ半分)

 

チップ(chip)の補足説明

一般に木材を小片にしたものを(木材)チップといい、パルプ、パーティクルボード、ファイバーボード製造などの原料として用いられす。通常その大きさは、繊維方向の長さ15~35mm、幅25mm前後、厚さ4mm程度です。

チップとは、細片、薄片の意で、パルプの原料とする木材の小片をいいます。英語では「chip」です。ポテトチップやゴルフで、アプローチショットした球がホールに入ることをいうチップ・イン【chip in】のチップです。

「チップをはずむ」のチップは、こころづけ、祝儀の意で、英語では「tip」です。野球で、球が打者のバットにかすることをいうファウル・チップはこちらです。

 

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更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)