紙について(5-4) 紙のできるまで《塗工・加工工程》

3.塗工・加工工程

「塗工・加工工程」は、一般に紙、プラスチックフィルム、布などの素材の表面に他の物質を塗布する工程をいいます。紙の場合は、塗工原紙、塗布液(塗料)、塗工機・加工機の組み合わせとスーパーカレンダーやマットカレンダー等による艶出し仕上げにより、塗工紙(加工紙)を作ります。

塗工紙は、紙の表面に顔料と接着剤を主体にした塗料(コーティングカラー、ただ単にカラーという)を片面あるいは両面に塗工し、印刷適性を高め、高感を持たせた紙であり、非塗工紙と比べて、その需要が増加しております。

塗工の目的は、パルプ繊維が露出している原紙表面の凹凸をインキ受理性が良く、不透明な塗料を塗布、被覆して、均ーでかつ平滑性が高く印刷適性の優れた紙面を得ることです。したがって、紙に塗料をコーティングすることにより、平滑度、光沢度、白色度、不透明度、インキ受理性、表面強度などが向上し、すぐれた印刷効果が得られます。

 

なお、塗料は、顔料(ピグメント)に分散剤を添加して水に分散し、これに接着剤および助剤を加えて調整した水性系です。塗料の組成は、塗工紙の諸性質に大きな影響を及ぼしますので、非常に重要であり、その原料の種類と配合については各社のノウハウになっております。その一般的な組成は、

  • 顔 料:100部(カオリン、炭酸カルシウムなど)
  • 接着剤:10~20部(澱粉、ラテックスなど)
  • 助 剤:1~5部(分散剤、消泡剤、染料など)

からなっており、他に水が加わって重要な役割を果しております。塗料は原紙を被覆して平滑な塗工膜を形成し、インキを受理し、良好な印刷効果を発現し得るようになっていなければなりませんが、そのために、塗工機(コーター)に適合した塗工性・操業性と要求品質に合致した塗工品質が得られ、かつ、できるだけ経済性を加味して設計されております。

 

(1)塗工機(コーター)

塗工設備の型式には、抄紙機と塗工機が直結しており、抄紙・塗工を一工程で行なうオンマシン方式と、抄紙機と切り離れており、いったん、抄紙した巻取を別工程の塗工機で塗工するオフマシン方式とがあります。

ー般に、オンマシン方式は、品種の数が少なく、生産ロットが比較的大きな製品を製造するときに有利であり、一方、製品の種類が多い場合や、原紙マシンより高速運転を指向し、かつ品種の多様性・融通性を持たせたいときにはオフマシン方式が好適です。

最近増加している薄塗りの微塗工紙はゲートロール、ビルブレードコーターやショートドウェルブレード塗工機などによるオンマシン塗工方式が多い。

塗工機は原紙に塗料の所定量を塗布、乾燥するところで、アンワインダー、コーターヘッド、ドライヤー、カレンダーおよびワインダーで構成されています。

コーターヘッドは、原紙に塗料を、塗布(アプリケーション)、計量化(メタリング)、平滑化(スムージィング)を行なう機能を持つもので、その方法により、エアーナイフ、ブレードタイプ、ロールタイプおよびバータイプに大別されます。

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各コーターにはそれぞれ塗工量の制限、付与される塗工面の品質に長・短所がありますが、高速で塗布でき、塗工面の平滑性が最も優れていることから、現在はブレードタイプの塗工機が主流を占めております。また、単独で使うシングルコーティングがー般的ですが、より良い印刷適性をもつ塗工面を得るために、これらの塗工機を組合せて下塗り、上塗りで塗工するダブルコーティングを行なうことが多くなってきております。

 

(2)艶出し装置

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■スーパーカレンダー(super calender)[スーパーキャレンダー]

塗工によって原紙の凹凸は被覆され、面はかなり平滑になりますが、ミクロの凹凸は残ります。この状態では-般の塗工紙に要求される平滑と光沢は得られません。そこで、紙面に光沢を与え、平滑にする目的で仕上げを行う必要があります。

このためにー般に用いられているのがスーパーカレンダーです。これは金属ロールと弾性ロールを多段(10~16段)に積み重ねた装置で、紙はこの間を通りながら加熱、加圧されて、平滑で均一な厚さの高い光沢を持つ紙に仕上げられます。

一般的な使用ロール段数と紙質は次の通りです。

使用ロール段数紙質
8~12 一般印刷紙・塗工紙
10~14 アート紙
16~多段 グラシン紙、コンデンサー紙

 

金属ロールの表面温度は弾性ロールの耐熱度で抑えられ、最高90℃程度で、また加圧力は線圧で最高350kg/cm位(通常 200~250kg/cm)です。圧力・温度・紙の水分が高いほど、また、加圧時間が長いほど(低速ほど)、高い光沢や平滑性が得られます。反面、緊度が高くなり紙厚は低下します。なお、スーパーカレンダーは塗工紙以外にもグラビア用紙やグラシン紙などにも使用されます。

また、艶消し塗工紙であるマットコーテッド紙やダルコーテッド紙は、スーパーカレンダー処理は行なわないか、あるいは軽い処理に止めたり、特別なマット用のカレンダーで処理をします。

弾性ロール…綿繊維を圧縮して固めたものを研磨して作ったコットンロールが主体ですが、これ以外に羊毛や、最近では合成繊維も材質として使われています。

 

■ソフトカレンダー(ソフトキャレンダー)

紙は加圧によって厚さが減るというマイナス面があります。他方、紙の表面温度を上げると光沢が上がることから、弾性ロールの材質を工夫して温度を高め、ロールの本数と圧力を減らすことで紙厚を落とさずに平滑度や光沢を上げることができる「ソフトカレンダー」が開発されました。

すなわち、スーパーカレンダーより高温処理をすることによって、少ない加圧段数で高い光沢と平滑性を得られるようにした装置です。

金属ロールと弾性ロールの1対の組み合わせで、これを1基ないし2基を直列に設置、高速運転可能として抄紙機や塗工機と直結したオンマシンで使えることが特長です。

金属ロールの表面温度は、現在のところ最高温度230℃の例があります。弾性ロールの被覆材にはエポキシ樹脂などが使用されています。

得られる光沢はスーパーカレンダー処理に比べてやや低いが、厚さを減らさずに平滑で光沢のある紙や平滑で嵩のある紙を得る目的で、新聞用紙などの非塗工紙でマシンカレンダーの代わりに、また、塗工紙などに適用されるスーパーカレンダーの代わりに、近年よく用いられるようになってきました。

 

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更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)