印刷について(7) 印刷適性と紙質との関連

前章の「紙と印刷適性」をおさらいしながら、もう少し具体的に印刷適性とそれに関わる紙質(品質・特性)について勉強します。

印刷適性(printability)とは、目的にかなった良質な仕上がりの印刷物を得るために、紙などの被印刷体およびインキなどの印刷諸材料が具備すべき性質をいいます(参照 印刷について(6) 紙と印刷適性)。

印刷用紙に要求されることは異常なく印刷され、かつ期待される印刷上がりが得られることです。前者を印刷作業適性(印刷作業性、printining runnability)、後者を印刷品質適性(印刷効果、printed quality)と呼び、両方を含めて印刷適性といいます。この2つの適性は必ずしも両立せず、しばしば相反する要求となることがあり、現実には、多くは両者のバランスを取って紙質が決定されます。

例えば、紙の表面が弱くて印刷時に紙むけが発生したり、紙くせが悪くて印刷しにくいことなどが印刷作業適性であり、インキの付着が劣り印刷物の見栄えが悪いなどが印刷品質適性に属します。

ここでは、さらに具体的に印刷品質とそれに関連する印刷用紙に要求される主な紙質(品質・特性)を次表に掲げます。なお、その印刷用紙がすべての項目を合格する必要はなく、用途に合った印刷適性があればよいのです。

印刷適性と紙質との関連
分類主な項目関連する主な紙質

印刷作業適性

(印刷作業性)

(printining runnability)

ピッキング(紙むけ) 表面強度、耐水性、粕、塗料スケール、ランプ等異物付着など
パイリング 表面強度、耐水性、紙粉など
白抜け、ヒッキー 紙粉、脱毛等付着、(版への磨耗性…填料、毛羽立ち、PH等)など
見当不良 断裁精度(切口、寸法、直角性) 、流れ目、伸縮…水分、寸法安定性など
紙くせ 波打ち、タイトエッジ、ぼこつき、厚薄、絶乾米坪、厚さ、水分など
印刷しわ 紙くせ(波打ち、タイトエッジ)…水分、寸法安定性、流れ目など
カール 流れ目、表裏差伸縮、水分、寸法安定性、巻カール、腰など
裏移り(セットオフ) 乾燥性、吸油性、平滑性、紙くせ(カール、ぼこつき等)など
ブロッキング 乾燥性、吸油性、平滑性、PHなど
乾燥不良 吸油性、PH、水分(紙間湿度)など
チョーキング(スマッジング含む) インキ浸透性、乾燥性、吸油性、PH、表面摩擦係数など
給排紙不良(重送含む) 静電気、腰(こわさ、剛度)、流れ目、水分、平滑性など
汚れ PH、磨耗性、紙粉、化学成分(紙成分…界面活性剤の溶出など)
浮き汚れ 化学成分(紙成分…界面活性剤の溶出など)
剥離(ふくれ) 剥離強さ(層間、層内強度)
ブリスター…オフ輪印刷 水分、剥離強さ、透気度、米坪など
折り割れ 水分、強度特性(引張り強さ、引裂き強さ、耐折強さ…)、流れ目など
たるみ…巻取 厚薄、絶乾(BD)米坪、厚さ、水分、巻きテンションなど
ブラン離れ不良(デラミネーション) 平滑性、吸油性、吸水性など
断紙…巻取 水分、強度特性(引張り強さ、引裂き強さ、伸び…)、端面傷など
巻取加工不良 継手(回数、比率、方法、材質…)、巻芯しわなど
包装形態 平判品ー連包装、スキッド(パレット)包装、巻取品ー入り数、巻径など
その他作業欠陥(プレスストッパー) 破れ紙、テープ、金属片などの混入

印刷品質適性

(印刷効果)

(printed quality)

印刷面インキ濃度 光沢度、平滑性、弾力性(圧縮性、回復力) 、吸油性、インキ浸透性、色相など
インキ転移不良(画像の再現性不良) 合、平滑性、弾力性(圧縮性、回復力) 、吸油性、吸水性など
モットリング(画像の均一性不良) 合、平滑性、吸油性、塗工むらなど
およぎ…グラビア印刷 吸油性、緊度・圧縮性(クッション性)、合など
網点(ドット) の太り、細り 合、平滑性、紙厚など
ミスドット…グラビア印刷 平滑性、吸油性、圧縮性(クッション性)など
発色性 白色度、白さ、色相、退色性、吸油性など
印刷光沢度不良 白紙光沢度、平滑性、吸油性、インキセット性など
印刷不透明度不良(プリントスルー) 白紙不透明度、米坪、厚さ、緊度など
裏抜け(ストライクスルー、しみ通し) インキ浸透性、吸油性、米坪、厚さ、緊度、ピンホール、サイズ度など
透き通し(ショースルー) 白紙不透明度、色相、米坪、厚さ、緊度など
ひじわ…オフ輪印刷 水分、寸法安定性、米坪、透気度など
その他品質欠陥 塵、汚れ、筋、型(かた)、ストリーク等々の欠陥紙混入

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)