紙の基礎講座 印刷編(9-1) 印刷機の分類・種類1

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印刷機の基礎知識

印刷機の基礎知識についておさらいします。

 

(1)印刷機とは

印刷機とは印刷物を作製するために加圧し、紙などの被印刷物上に、印刷インキを転移させる機械をいいます。なお、印刷機は英語でprinting pressとか、printing machine、あるいは、ただ単にpressといいます。

現在、一般的に印刷機をプレス press という語で表現されますが、これは活字印刷術の発明者であるドイツのグーテンベルグが、ブドウ絞り機にヒントを得て画期的なプレス式活版印刷機を考案し、印刷時間の短縮や紙の裏面を損なわないことから両面刷りができるなど、今日の印刷機の第一歩を歩みました。そのためにこのプレス作業(加圧機構)は、印刷機におけるが最も重要なことであるとして、プレスすなわち印刷機になったということです。

 

(2)印刷機の分類・種類

次に印刷機の分類と種類について説明します。印刷機は版式、加圧方式、インキの転写方式、印刷媒体(用紙など)の形態、使用する印刷インキの色数や印刷判の大きさなどにより、分類され多くの種類があります。表1にそれをまとめました。

表1.印刷機の分類・種類
 分類印刷機の名称
版式
凸版印刷機、平版印刷機、凹版印刷機、および孔版印刷
加圧方式
平圧式、円圧式および輪転式(例えば、平圧印刷機など)
インキの転写方式
直刷印刷機、オフセット印刷

印刷媒体の形態

印刷ユニットの配置
ユニット型(タンデム型)印刷機、共通圧胴型(センタードラム型)印刷機、3本胴型
印刷判の大きさ(寸法)
一般には軽オフ(菊四裁、紙幅 440mmが多い)からA倍判機(用紙寸法で1,250mm幅)まで
印刷
両面刷印刷機(片面機の場合は、一般に表示しない)
色数
単色、多色(2色、4色、5色、6色、8色など)
その他(用途、製作会社などの特殊印刷名)
スクリーン印刷機、石版印刷機、コロタイプ印刷機、フォーム印刷機、チューブ印刷機、金属板印刷機、板紙・ダンボール印刷機、曲面印刷機、フレキソ印刷機、ミーレ印刷機など

 

以下、各項について説明していきます。

 

①版の方式による分類

まず版の方式による分類ですが、版の方式は凸版、平版、凹版および孔版の四つです。すなわち凸版を用いる凸版印刷機、凸版輪転機、活版輪転機や、平版(へいはん)を用いる平版印刷機、凹版を用いる凹版印刷機、凹版輪転印刷機および孔版印刷機に分けられます。なお、平版はそのほとんどが刷版からゴム等で作られたブランケット胴を介してインキを紙などに転写するオフセット印刷なので、平版印刷機のことをオフセット印刷機といっても差支えありません。

なお、版式により凸版用、平版用、凹版用などの種類がありますが、基本的には加圧機構、インキをつける装置、紙を供給・移送し、刷り終わった印刷物を整えて排出する装置、およびその途中で乾燥させる装置の4パートから構成されています。

そして構造的には、給紙部(フィーダー)、印刷ユニット、排紙部(デリバリー)の大きく三つの主要部からなり、例えば、オフセット輪転印刷機(オフ輪機)は給紙部、印刷部(印刷ユニット)、乾燥部、冷却・ウェブパス部、折機部、排紙部などで構成されています。

なお、オフセット印刷は版自体に凹凸がない刷版を使用するため平版印刷ともいわれますが、一般には水と油(インキ)の反発性により、インキがのる画線部とのらない非画線部とを分けることがてきる刷版が使われます。刷版には、今日、あらかじめ感光剤が塗布されているプレート、すなわちPS版(Presensitized Plate)が多く使用されています。表2にその4つの印刷方式について説明します。

なお、模式図はホームページ製品情報 - デジタル印刷機のしくみ Ricoh Japanから引用させていただきました。

 

表2.印刷版式による分類
版式説明
模式図 
凸版印刷 版の凹凸を利用する印刷法の一つで、非画線部が凹、画線部を凸にして凸部にインクをつけて紙に転写する方式です。活版印刷(活字や写真凸版・線画凸版、罫 線などを組み合わせて版とする)はこの版式です。版材として活版は廃れましたが、今はゴムや樹脂の凸版を用いる印刷が広く行われています。印刷時での圧力 により紙に凹凸が出来ることがありま。また、印刷された文字にマージナルゾーンが見られるなどの特徴があります。なお、フレキソ印刷も凸版が使われていま す。版は左右逆につくられています。木版画やゴム版画、活版印刷などがこの原理でおこなわれています。
平版印刷 版には凸凹をつけず、水と油の反発する性質を利用する版式。版の上に化学的にインクの付く部分と付かない部分を作り出し、インクを画線部に乗せて、紙に転 写する方式。現在、印刷物の多くが平版オフセット印刷で刷られています。凸版や凹版と違い、刷版が反転していないので間違いなどを見つけやすい。一番普及 しているオフセット印刷はこの方法を用いています。
凹版印刷

版の凹凸を利用する印刷法の一つで、凸版印刷とは逆に、凸凹をつけた版の凹部にインクをつける方法です。非画線部である凸部のインクを掻き取り、凹部に付 いたインクを紙に転写する方式。グラビア版は凹部分の深さの違いによるインクの量の増減による濃淡の変化が可能であり、写真などの再現性に優れ、多用され たことから写真ページのことがグラビアと呼ばれるようになった。刷版は耐久性があり、大量の印刷に向いています。

エッチングやドライポイント(銅版画)、グラビア印刷(カタログや雑誌など、写真を美しく印刷するとき用いる印刷方法)などが代表的なものです。
孔版印刷 版自体に孔をあけ、上から圧力によってそこを通過したインクを紙などに転写する方式。手軽な設備で実現できる。身近な代表例は理想科学工業のプリントゴッ コやリソグラフ。複製絵画に使用されるシルクスクリーンや、ガリ版も孔版の一種。 文字や画像の印刷に限らず、物体表面に各種の機能性材料の皮膜を形成する技術として広く用いられている。一例では、カラーブラウン管のシャドーマスクや液 晶表示装置のカラーフィルターといった部品が、印刷技術を用いて製造されている。古くはガリ版、今は家庭用年賀状ミニ印刷機やスクリーン印刷(絹やナイロ ン、ステンレスなどでできたスクリーンに直接・間接的に穴をあけて印刷する方法)などがこの原理を応用しています。

 

②加圧方式による分類

次に加圧方式ですが、印刷するためには一般的に加圧(プレス)することが必要です。その分類は、版の形状と加圧方式の組み合わせによって、平圧式、円圧式および輪転式の3つに分けられます。すなわち、平らな版面(版盤)と平らな圧盤で加圧する平圧式印刷機、平らな版盤と円筒形の圧胴で加圧する円圧式印刷機、および版胴と圧胴の両方が円筒形である輪転式印刷機の三つに大別されます。図1に加圧方式による機構差を掲げます。

図1.加圧方式による機構差

 

もう少し説明しますと凸版印刷機には、平圧式、円圧式、輪転式の3種があります。平圧式は小型機や打抜きを行う強圧を要するものに多く、一般に名刺やハガキなどの小型の印刷物に用います。円圧式は1枚ずつ片面刷りする大判の印刷物、例えば雑誌や書籍の本文などの印刷に用いられますが、版盤が往復運動をするため印刷速度に限度があります(最高4,000枚/時くらい)。さらに高速を目指すには版盤も円筒状にした輪転式が望ましく、輪転式には1枚ずつ印刷する枚葉輪転機や、巻取紙を両面刷りし、しかも折り・断裁加工設備を持つ巻取輪転機がありますが、巻取輪転機は、新聞・出版印刷分野の高速運転で使用されています。もう少し詳しく、表3に版の形状と加圧方式による印刷機の分類を示し、説明します。なお、模式図はホームページ嘉瑞工房印刷機から引用させていただきました。

 

 

表3.加圧方式による分類
種類説明模式図

平圧式印刷

(platen press)

平らな版面(版盤)と平らな圧盤で加圧します(版…平ら、印圧を加える部分…平ら)。

手引き印刷機はすべてこのタイプになります。版全体に圧力を与えるには大きな力が必要です。大きな面積の印刷にはむきません。

 

円圧式印刷

(cyrinder press)

平らな版盤と円筒形の圧胴で加圧します(版…平ら、印圧を加える部分…円筒型)。

版盤が水平方向に往復運動を行い、圧胴は定位置で回転運動をします。円筒と平面なので接触部分は直線状となり、面積が小さいので印圧は少なくてすみます。大きな面積の印刷も可能です。

 

輪転式印刷

(rotary press)

版胴と圧胴の両方が円筒形です(版…円筒型、印圧を加える部分…円筒型)。

版を丸く湾曲させ版胴に取り付けます。円筒と円筒なので線接触で圧力をかけて印刷します。平圧式や円圧式と違い回転運動なので高速の印刷が可能です。版は、活字版から紙型を取り、湾曲させて鉛版をつくって使用します。樹脂版を使用することもあります。

 

 

③インキの転写方式による分類

インキの転移には直刷方式とオフセット方式があります。その分類により直刷印刷機とオフセット印刷機に分けられます。直刷印刷機には、凸版印刷機のように樹脂版などの凸部(画線部)にインキを盛り、加圧して直接紙に転移させる方式のもの。凹版印刷機のように金属版の凹部(画線部)にインキを満たし、加圧して直接紙に転移させるもので直接印刷

なお、孔版印刷機も直接印刷方式であり、直刷印刷機のひとつです。このように通常、グラビア印刷機は版胴から直接紙などに印刷しますが、平版グラビアでは版胴から印刷紙などに直接印刷されず、版胴と接しているゴム胴に一度転移させた後、被印刷物に印刷する方式で、いわゆるオフセット方式で合板などの厚い被印刷物の印刷に使用されます。

これに対して、平版印刷版の一種であるオフセット印刷機は間接印刷法によるものです。すなわち金属平版の非画線部(親水部)に水を与え、画線部(親油部・感脂部)にインキを盛り、それをゴムブランケットに転移させてから、そのブランケットを介して紙に転写させます。(「紙の基礎講座 印刷編(9)資料 印刷方式の特徴と用紙適性」参照)。

 

印刷媒体の形態による分類

紙に代表されますが、印刷媒体の形態はシート状の枚葉(まいよう)と巻取があります。その形態により印刷機には、枚葉印刷機と巻取印刷機とがあります。すなわち、1枚ずつシート(平判(ひらばん)の紙)に印刷する枚葉ないし平台(ひらだい)印刷機(シート印刷機)と、巻取(ロール)状の被印刷物を用いる巻取印刷機(ウェブ印刷機)です。

巻取印刷は1回で巻取紙の両面印刷する方式で、輪転印刷ともいいます。枚葉紙印刷機に比べて高速化、作業の能率化が図られ量産化に適します。そして一般に枚葉紙凸版輪転機、枚葉紙グラビア印刷機のように凸版、オフセット、グラビアなどの名をつけます。

なお、グラビア印刷の初期には銅板に製版したグラビア版を平台印刷形式の版盤にのせ、ドクターを用いて印刷する平台グラビア印刷機が使われましたが、現在は使用されていなくて、グラビア印刷はすべて版盤、圧盤とも円筒状の胴である輪転式です。またグラビア印刷での枚葉紙は少なく、ほとんどが巻取紙を使います。

同様に、オフセット印刷も多くは輪転式ですが、枚葉紙を使用する枚葉型と巻取紙を使用する巻取型の2つがあります。このため正式名では、枚葉紙を使用するものを枚葉オフセット輪転印刷機とか、巻取紙を用いるものを、ウェブ平版オフセット輪転印刷機とか、オフセット巻取輪転印刷機(web offset printing press。webとは、巻取紙の意) と呼称しますが、すべて輪転式であるため枚葉式の場合は、輪転式を省略して枚葉オフセット印刷機とか、巻取式の場合は、巻取を省略して一般にオフセット輪転印刷機とか、ウエブオフセット印刷あるいは単にオフ輪ともいいます。巻取に高速で印刷し非常に短い時間でインキを乾燥させるため、ヒートセットタイプのインキが用いられ、熱風温度200℃程度のオーブンを通過させることで、インキ中の溶剤を蒸発させて乾燥させます。

なお、オフセット輪転機とは輪転式のオフセット印刷機のことを表し、一般にオフセット輪転機という場合は、多くは巻取用のオフセット巻取輪転印刷機の略称として用いられています。

 

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更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)