今回は紙の白さを示す白色度や、色の表し方などについて説明します。
前回、紙の色は一般的に「白」系統であると述べました。その紙の色は「白い」とか、「赤っぽい白さ」、「青っぽい白さ」、「黄みっぽい白さ」、「少し黒っぽい」などと表現されます。また、ほかに「白色度」が70%とか、80%の紙であると言われることもあります。もちろん、両方を合わせて「白色度は80%だが、少し赤っぽい」などと表現されることもあります。このように色には、視感(視覚)的な表し方と計数的な表現があります。
紙の白さの尺度…「白色度」とは
計数的な表現として白色度があります。白色度(ブライトネス、brightness)とは、JIS(日本工業規格)に規定されており、パルプおよび紙などの表面色の白さの程度を示す指標となります。そしてその測定は、試験片(紙など)の表面に光を当てたときに、反射した光の比率(反射率)を数値化して表わします。それは「ものに光を当てると、一部は透過し、一部は反射され残りは吸収されますが、すべての波長の光を吸収すれば、そのものは黒に見え、また、すべての光が反射、散乱されれば、そのものは白く見える」という原理を使い、その光の反射率で示します。白色度の単位は%で、0%は黒(真っ黒)、100%は真っ白となり、数字が大きいほど白くなります。
白色度の測定に使用される試験器には、ホトボルト反射率計やGE白色度計などがありますが、JISに決められているは、ハンター方式による白色度(JIS P 8123)と拡散照明方式によるΙSO白色度(JIS P 8148)です。なお、2002年発行のJISハンドブック「紙・パルプ」には、この両方が掲載されていましたが、2004年の最新版は国際規格準拠の動きに準じ、ハンター方式の掲載は削除されています。
その国際規格準拠した拡散照明方式(JIS P 8148)は、国際的にΙSO白色度(ISO 2470)が導入されることとなり、わが国でも1993年にJISに制定された、比較的新しい測定法です。なお、(付記)(1)に拡散照明方式(JIS P 8148)の試験器と測定法を概記しておきました。
そして、もうひとつのハンター方式による白色度は、1961年にJISに制定されました。数年前から脚光を浴びているリサイクルの動きで、再生紙利用促進のガイドラインなどの認定基準として古紙配合率とともに示されているのが、白色度の基準値ですが、この白色度は「ハンター白色度計」によるものです。
ハンター方式による白色度は、特定の青色フィルターを通して青~スミレ色の部分の光(主波長457nm)を45度の入射角で試験片面(紙面)に投射し、垂直方向(0度の角度)に反射する光を受光したときの反射量を電気的に測定します。また、同様の条件で酸化マグネシウム標準白色板での反射量を測定し、これを100として、この相対比較によって百分率で試験片の白色度を求めます。
ここで主なパルプ、紙の白色度を掲げておきます。
分類 | 品種 | 白色度 |
---|---|---|
パルプ | 未漂白パルプ | 20~45% |
半晒パルプ | 50~75% | |
漂白パルプ | 85~88% | |
紙 | 重袋(じゅうたい)用クラフト紙 | 45~50% |
新聞用紙 | 55%程度 | |
晒化学パルプ100%使用の上質紙 | 約80% | |
バージンパルプ100%のコピー用紙(PPC用紙) | 80%程度 | |
再生コピー用紙(古紙配合70%) | 70%程度 |
ところで、「色の白いは七難隠す」いう諺があります。ご存知のように「女性の肌が白いのは、少しくらい醜くても美しく見せる」(広辞苑)とか、「肌の色が白ければ、少しくらいの欠点は隠れて、美しく見える」という意味ですが、このように白さが好まれており、白さへのあこがれがあるのも事実です。わが国の美人で名高い秋田美人は、その肌の色白さに代表されるといいます。
これに関連して湯沢市の医師杉本元祐博士が1966年に行った有名な研究成果があります。博士は数千人におよぶ女子高校生を詳細に調査した結果、皮膚の白色度が日本人平均22%に対し、秋田県全般29.62%、秋田県県南地方30.5%であり、極めて肌の色が白いと報告されています(参考…西欧白色人種40.5%)。
さらに、某化粧品会社が実施した女性の肌の白さの調査でも立証されていて、「L値」と呼ばれる白さの程度を示す「明度」が沖縄・大阪湾沿岸で53~55、山陰・東海・関東で55~57、東北南部で57~59に対して、東北日本海側(秋田県側)で59~61で、全国でも一番、白かったと言うことです。そしてそれは日照時間(紫外線量)と関係があり、秋田県は全国でも毎年いつも最下位にあります。
そういえば、あの美貌の歌人として広く知られ、才色兼備の女性とか、絶世の美人とか、美女の代名詞となっている小野小町は出羽(今の秋田県)の生れですね。
このように、一般的に白さが好まれるため、紙についても多くは原料のパルプを様々な薬品を使って漂白したり、白色填料を添加して白色度を高めたり、着色染料による青み付けや、蛍光染料の添加をすることによって、視感的に増白効果を与えています。もちろんその分、工程が多くなり、コストもかかります。
1989年(平成元年)に再び環境問題がクローズアップし、「地球環境元年」として幕開け、(地球に優しい)再生紙ブームが到来しました。さらに同年、環境庁(当時、現環境省)の外郭団体である日本環境協会が「エコマーク」(環境保全型商品)推進事業の実施しました。
その後、古紙の余剰問題に端を発し、環境保護、古紙利用の拡大のために、古紙の再生紙への配合率アップ、紙の白さの見直しなどの動きが活発化してきました。
この中で、紙の白さに対する意識を変えようという動きとして、必要以上に高い白色度の紙の使用を止めようというものがあります。
例えば、エコマーク認定基準においては紙の白色度は70%程度とされています。これは白色度が80%以上なくても、再生紙で白色度70%程度が環境負荷と使用用途の双方の観点から無理のない適度な白さで、古紙利用や紙の漂白工程による環境負荷低減などを図ろうというものです[「トイレットペーパーから見た環境問題」白さはいいことか?…(1997年9月27日講演内容)参照]。
なお、美しい胡蝶蘭の白い花や、白いつつじの花の色の白色度は、およそ70%。それに美しく映える雪の白さも白色度は、およそ70%と言われますが、紙についても必要以上に高い白色度を求めないで、「古紙利用」と「70%程度の白色度」を促進させようにするための動きです。
その後、「再生紙」は環境にやさしいということもあり、その原料である古紙を回収し、再利用することがさらに高まってきました。下表に製紙原料に占める古紙の比率、すなわち古紙利用率の推移を示します(参照…コラム18.紙の用語解説[5] 古紙とは、再生紙とは の一部を再録)。
1985年 | 1990年 | 1995年 | 2000年 | 2001年 | 2002年 | 2003年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
紙 板紙 |
25.6 79.4 |
25.2 85.8 |
30.7 89.3 |
32.1 89.5 |
33.8 90.3 |
36.2 91.1 |
36.5 92.3 |
平均 | 49.3 |
51.5 |
56.1 |
57.0 |
58.0 |
59.6 |
60.2 |
紙と板紙と分けて推移を掲げています。1990年に製紙業界と国の提唱によりスタートした「リサイクル55計画」(5年後の1995年に古紙利用率55%達成を目標)などもあり、古紙回収・再生紙の拡大は着実に伸びてきました。
今では板紙は平均で90%以上が古紙でできています。もちろんすべて古紙でできているものもあります。また、紙部門でもまだ低位ながら、加えて先の「白色度70%程度」の紙使用の促進化などにより、特に印刷・情報用紙への古紙利用が進み、次第に上昇してきています。2002年は古紙回収率が65.4%、古紙利用率が59.6%といずれも過去最高を記録。2003年はさらに更新し、古紙の利用率は60.2%となり、2005年度までの設定目標、古紙利用率60%[リサイクル60計画]を早くも達成しております。
このようにわが国の製紙原料は現在、半分以上(約60%)が古紙からの「古紙パルプ」で、残りのおよそ40%が古紙以外の「バージンパルプ」となっており、誇れる実績であり、世界でも「トップクラスの古紙利用・消費国」となっています。そして以前は「ゴミ」になっていた古紙は、今では貴重で重要な「第2の森林資源」に生まれ変わってきています。