新聞の動向について…発行部数などは減少傾向
現在、インターネットの新規登場・普及などにより、新聞が大きく変わろうとしています。それでは最近の新聞の動きはどうでしょうか。その傾向をわが国の総広告費に対する各媒体の広告費の動向に見ることができます。それを電通のホームページ(dentsu online)から引用させていただきます。
広告媒体には新聞、雑誌、ラジオ、テレビのいわゆる「マスコミ4媒体」とインターネット広告、および折り込みチラシ、車中広告やダイレクトメールなどの販売促進(セールスプロモーション、SP)広告に大別されています。テレビがなかったころは新聞は広告媒体としてだけでなく、報道の雄として君臨してきました。ところがテレビが出現すると、新聞はその座をテレビに明け渡すこととなりました。さらに最近、インターネットの台頭によってますます新聞広告費の縮小傾向が目立っています。
以前に本コラム(62) 紙媒体と電子メディア(2)にも掲載しましたが、2006年のデータを追加して総広告費に対する新聞広告費の構成比の推移(電通資料から算出)を次表に示します。
年 | 1955 | 1960 | 1970 | 1980 | 1990 | 1995 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
構成比 | 55.5 | 39.5 | 35.1 | 31.1 | 24.4 | 21.5 | 20.4 | 19.9 | 18.8 | 18.5 | 18.0 | 17.4 | 16.7 |
52年前の1955年には、新聞広告費の構成比は55.5%と半分以上を占めていました。わが国で初めてNHKによってテレビ放送が開始されたのは1953(昭和28)年2月ですので、その普及はまだ少ないこともあり、1955年当時のテレビ広告費の構成比は1.5%と低いものでした。それがテレビの普及と躍進で5年後の1960年にはテレビ広告費の構成比は22.3%に急増。それに対して新聞広告費は39.5%と激減しています。それ以降も歯止めがかからず減少傾向が続いており、06年には16.7%まで低下しています。
なお急増したテレビは、1959年にはラジオを抜き、さらに75年には新聞をも抜いて、媒体別で首位を占めるに至りました。それでも1990年ころはテレビと新聞は広告費でそれほどの違いはありませんでしたが、新聞の低下は加速し、最近ではテレビが新聞の2倍ぐらいの広告費となっており、ますますその差が拡大してきています。
また、新興のインターネットは特に若者に受け入れられ、躍進が著しく次第にラジオを超え、来年にはさらに雑誌も超えて、テレビと新聞に次ぐ「第3の広告媒体」となる勢いとなっています。ここで最近の総広告費におけるテレビ、インターネットの広告費の構成比と対比して新聞広告費の構成比推移を次表に示します。また併せて新聞の動向を示す発行部数、1世帯あたりの部数などの資料も掲げておきます。
1995年 | 1996年 | 2000年 | 2005年 | 2006年 | |
---|---|---|---|---|---|
新聞広告費の構成比(%) | 21.5 |
21.4 |
20.4 |
17.4 |
16.7 |
テレビ広告費の構成比(%) | 32.3 |
33.2 |
34.0 |
34.2 |
33.6 |
インターネット広告費の構成比(%) | - |
0.03 |
1.0 |
4.7 |
6.0 |
新聞発行部数*1(千部) | 52,855 |
53,556 |
53,709 |
52,568 |
52,310 |
1世帯あたりの部数(部) | 1.19 |
1.19 |
1.13 |
1.04 |
1.02 |
新聞発行部数*2(千部) | 72,047 |
72,705 |
71,896 |
69,680 |
69,100 |
人口1,000人あたりの部数(部) | 578 |
582 |
570 |
549 |
543 |
かつては長い間、報道の王道を走り続けてきた新聞ですが、総広告費における新聞広告費の構成比が漸減傾向にあります。また、新聞発行部数は伸び悩んでいるどころか減少傾向にあります。あらためて次表に別の指標を加えて、最近の2006年と10年前の1996年と比べて示します。
1996年 | 2006年 |
差 (06年-96年) |
伸び率 (06年/96年) |
|
---|---|---|---|---|
新聞発行部数*1(千部) | 53,556 | 52,310 | ▲1,246 | 97.7% |
朝夕刊セット部数(千部) | 19,149 | 16,789 | ▲2,360 | 87.7% |
朝刊単独部数(千部) | 32,421 | 34,047 | 1,626 | 105.0% |
夕刊単独部数(千部) | 1,985 | 1,474 | ▲511 | 74.3% |
1世帯あたりの部数(部) | 1.19 | 1.02 | ▲0.17 | 85.7% |
世帯数(千世帯) | 44,831 | 51,102 | 6,271 | 113.9% |
新聞発行部数*2(千部) | 72,705 | 69,100 | ▲3,605 | 95.0% |
人口1,000人あたりの部数(部) | 582 | 543 | ▲39 | 93.3% |
販売店従業員数(人) | 483,286 | 431,843 | ▲51,443 | 89.4% |
販売所数(所) | 23,097 | 20,614 | ▲2,483 | 89.2% |
注
- 新聞広告費の構成比は電通資料から引用。
- 新聞発行部数*1…朝夕刊セットを1部として計算。1世帯あたりの部数はこれで算出。
- 新聞発行部数*2…セット紙を2部として計算。人口1,000人あたりの部数はこれで算出。
- 新聞発行部数、1世帯あたりの部数、人口1,000人あたりの部数は各年10月、新聞協会経営業務部調べ。なお、世帯数は各年3月31日現在の住民基本台帳による。
上表のなかで2006年は1996年と比べて、朝刊単独部数と世帯数以外の主要指標で軒並みにマイナスになっています。朝夕刊セットを1部として計算した場合の2006年の新聞発行部数*1は、96年に対して125万部(▲2.3%)の発行減に、また、前年(05年)と比べても約26万部減(▲0.5%)となっています。なお、朝夕刊セット紙を2部として数えた場合の発行部数*2は、06年が6,910万部ですので前年より58万部減(▲0.8%)、96年と比べると約360万部(▲5.0%)と大きく減少しています。特に夕刊発行部数の減少が顕著です。この10年で約50万部の減、比率では25%余の減少となっています。そのなかでも朝刊の単独部数は増えていますが、全体としては新聞の発行部数は減少傾向にあります。
また、人口1,000人あたりの部数は06年が543部、96年は582部ですので、この10年でも39部、約6%の減少となっています。さらに1世帯あたりの部数も同様に減少傾向にあります。わが国の世帯数は核家族化が進み、96年の4,483万世帯から5,110万世帯へと、10年間で約630万世帯(比率で14%)が増加していますが、1世帯あたりの部数は96年の1.19部から06年は1.02部(伸び率85.7%)と大きく減少しています。これは新聞発行部数が世帯数増ほど伸びていないことを示しており、新聞を取らない、いわゆる「活字離れ」とか「新聞離れ」と言われる新帯数が多くあることを意味しています。
ところで世帯といえば、新聞のほとんどが毎日、家庭に直接届けられています。これ以外にも現在、日刊紙は駅やスーパーなどの店頭で即売されたり、郵送されたりしているものがありますが、日本の日刊紙全体の戸別配達率は高く、9割超えの94.3%であり、わが国の新聞販売を維持している基盤となっています。なお他の即売は5.1%、郵便が0.1%、その他0.5%となっています。
戸別配達率の高い日本ですが、全国で約43万人の新聞販売所従業員の方々が毎日、頑張っておられます。また96年の販売所従業員数は約48万人ですから、この10年で5万人余りが減り、10%強の減となっています。また、販売所数は約23,100所からおよそ20,600所に減少。やはりこの10年で2,500所弱(10%強)の店舗が減っていることになります。
このように新聞の発行部数、1世帯あたりの部数、人口1,000人あたりの部数や他の新聞を取り巻く諸指標の推移を拾ってみても減少傾向にあります。その主要因が核家族化とニューメディアであるインターネットが進み、特に若年層を中心にして広がりつつある、いわゆる「新聞離れ」にあると考えられており、大きな課題になっています。