コラム(74-2) 紙・板紙「書く・包む・拭く」(9)紙器用板紙の品種説明 1

紙器用板紙の品種説明

次に紙器用板紙の各品種の説明をしていきます。

 

(1)白板紙

白板紙は多層抄きの片面あるいは両面が白色紙料を抄き合わせた白い板紙をいいます(英語名:white lined board)。表1のように数種類の品種に分類されていますが、その多くは再生紙です。パルプ原料の抄き層別の構成差および品質差から、白板紙はマニラボールと白ボールに大きく区分されており、それぞれに紙面を平滑性にしてきれいに見せたり、印刷効果などの機能を持たせるために、白色顔料(カオリン・炭酸カルシウムなど)をラテックス(合成ゴム)、でんぷんなどのバインダー(粘着剤)などを配合した塗料(コーティングカラー、カラー)を塗布した塗工(コート)品と、それを施していない非塗工(ノーコート)品があります。

板紙は、一般的に原料層が3、5、7層と言うように多くが奇数層の多層抄きのため、層ごとに各種の原料パルプが使用できます。例えば表層に漂白パルプ、あるいは古紙パルプを使用し、中層には雑誌古紙のような紙質が落ちる古紙をサンドイッチにすることが出来るため、古紙利用率が紙(洋紙)に比べて高くでき、安価にできます。

白板紙の原料は表層には晒化学パルプ、その他の層(中・裏層)には品種によって差がありますが晒化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプなどを使用します。表層に晒化学パルプを使用しているので外観が白くて美しく、印刷適性・製函適性が優れているので、書籍の表紙、美術書、カタログポスターなどの出版・商業印刷分野での用途はもちろんのこと、食料品、菓子、化粧品、ティッシュペーパーなどのパッケージ(外箱)など幅広く使用されます。このようにパッケージに用いられる白板紙は、印刷適性だけでなく、型の打ち抜き・製函・充填などに適応できる能力が求められる上に、さらに潰れやすい菓子などの中身を保護するための強度や、店頭ディスプレイに使用できる耐久性が必要となります。この両方の性質を兼ね備えているのがマニラボールであり、その低グレード品である安くて普及品のコート白ボールです。

従来、金属容器、ガラス容器などが使用されていた分野にも紙器が用いられるようになり、紙器の用途が広がっています。主として比較的坪量の低いマニラボールは小箱に、厚い白ボールは大箱に使われていますが、多様な品種が揃っている白板紙は板紙の中でも多層構造の特徴を活かし、美粧性に加え、商品の保護・保存性、取り扱いの利便性など、さまざまな機能を果たし広く使用されています。

 

■マニラボール

マニラボールは高白板紙、特殊白板紙および一般マニラボールの3種類に分けらており、塗工(コート)品と非塗工(ノーコート)品があります。品質が良く、中でも塗工したものは板紙の最高品です。米坪は比較的低く、一般に170~370g/m2の範囲にあり、製品形態には平判と巻取があります。さらに原料構成上の差から高白板紙と特殊白板紙はおのおのアイボリーとカードとに区分されています。

なお、マニラボールのマニラとは、当初強度を出すために繊維の長いマニラ麻を原料に使用したことに由来しますが、現在はマニラボールの表層には木材による晒化学パルプ、中・裏層は機械パルプ、化学パルプなどのパルプ、または古紙を配合して製造されています。

製函適性が極めて高く、その良好な印刷適性と耐折性から、主な用途として食品、菓子、キャラメル、化粧品、医薬品、石けん、たばこなどの打抜きの小形カートン(小型印刷箱)に用いられます。また塗工加工されたものは印刷効果がよく、メニュー、絵はがき、カレンダー、カード類、美術本・絵本・図鑑などの印刷物や薬品、化粧品、たばこなどのパッケージにも使用されています。

 

①高白板紙

略称で高板(こういた)といわれており、品種としてアイボリーとカードに分かれ、それぞれに塗工したものと非塗工品とがあります。その中でも塗工品が主体で基本的には両面に塗工し、美しい光沢と白さを必要とするため優れた印刷適性を持たせてあります。なお、塗工品の中には用途により片面だけを塗工したものがあり、後述の特殊白板紙の特板アイボリーと区別することが難しい面があります。

白板紙の坪量範囲は一般的に160~465g/m2で、主な用途は美術書・図鑑・絵本などの本文、出版物の表紙、カタログポスター、卒業アルバム、ゲームカード、絵はがき、メニュー、値札、台紙などの出版・商業印刷物や化粧品・薬品などの高パッケージなどに使用されています

アイボリーとカードの大きな違いは、使用原料パルプの構成上にあり、アイボリーは表・中・裏層の全層とも100%の晒化学パルプ(BKP)を原料とする最高品です。アイボリーは高度の仕上げをしてあり、折り曲げ抵抗も大きく、表裏がないように両面とも平滑に仕上げたものもあり、高化粧品の外装に使用するほか、高はがきなどにも用いられます。

一方のカードはアイボリーの低グレード品に相当し、表・裏層の両面にはアイボリーと同じく晒化学パルプ100%を使用していますが、中層の原料にはいわゆる「アンコ」(多層抄きの中間層に入れる古紙パルプの俗称)として機械パルプ(GP)または脱古紙パルプ(DIP)等が使われており、アイボリーよりは厚みを持たせている板紙です。

 

 

②特殊白板紙

略称を特板といい、高白板紙(高板)より1ランク下の板紙に位置付けされますが、もともとは黄ボールやチップボール・白ボールなどの下板紙からのグレードアップされた品種の流れとして特殊白板紙が誕生したもので、高板の片面塗工品の低グレード品の一部が特板として独立したものです。特殊白板紙は食品用や薬品のパッケージなどに多用されるため、食品衛生法の観点から蛍光染料は含有されていないか、分析で溶出がなく食品衛生法上クリアーしているものがほとんどです。しかし原料となる新聞古紙・雑誌古紙の中には新聞チラシや雑誌・週刊誌等の蛍光染料を使用した印刷用紙が含まれるため、少量の蛍光反応は発生することがあります。なお、古紙由来からの蛍光反応はわずか認められるものの、製造工程で強制的に蛍光染料を使用しないものを無蛍光(ノー蛍光)と呼んでいます。用途は主として食品以外にも化粧品・薬品などの高パッケージや、紙皿、出版物の表紙、絵葉書など、コート白ボールよりも高な分野で多く使用されます。

表層、裏層の原料はともに晒化学パルプ(BKP)ですが、中層は古紙(GPまたはDIPなど)で、高板との差は中層原料の種類にあります。高板同様、アイボリーとカードがあり、非塗工品はなく塗工品のみで、そのほとんどは印刷効果を上げるために白色の塗工加工がされている片面コート品です。特板アイボリーは高白板紙の片面塗工品に相当するもので、カードよりは冴えた白色度と高平滑・高光沢性で食品・化粧品・医薬品などの高パッケージに用いられます。また、特板カードはカードAとカードBに分類されますが、特板カードAは特板カードBより古紙配合率が低く、印刷再現性、発色が良く、食品・高化粧品・医薬品などのパッケージや出版用表紙などに使用されます。特板カードBは白ボール(裏面ネズミ色)の片面を薄く塗工したもので、製函適性、加工適性、印刷適性が付与されており食品用などの各種カートンに用いられます。ただ、最近では原料によるそれぞれの区別が難しくなってきています。

なお、特板を使った特殊紙器は食品包装に多く使用されており、紙の片面に塗工をして印刷効果を高めるようにし、裏側にはプラスチックフィルムやアルミ箔をはり合わせて液体の浸透を防ぎ、液体容器としても用いられています。具体例としては、紙コップ、紙皿、ミルクカートン(箱詰牛乳)、液体カートン、冷凍食品容器などがあり、食品衛生上の配慮から蛍光染料を使用していないのが特徴です。紙の切断面から水ないし液体が浸透するのを防ぐために、原紙に対しても強いサイジングが行われています。(注)カートンとは厚紙、すなわち板紙で作られた紙箱(容器)のこと。

 

③一般マニラボール

一般マニラボールとは白板紙の一品種です。本来、強靭な繊維であるマニラ麻を原料とする白板紙をマニラ(マニラボール)と呼んでいましたが、上記のように近年では木材パルプなどほかの原料を使い、マニラ麻は特殊な用途のみしか使われていまん。

表層は晒化学パルプで、中・裏層は中白系古紙、脱パルプなどで構成されます。片面塗工品と非塗工品があります。高板紙、特殊板紙の生産が多くなっている現在は一般マニラの生産は少なく減少しています。主な用途は食品、薬品、化粧品、菓子、たばこ、キャラメルなどの主として小型のパッケージ(小形の個箱)に使用されています。また、特殊な用途で下記のように牛乳栓用紙や乗車券用紙がありますが、代替え品の進行によっていずれも激減しています。

  • 牛乳栓用紙…牛乳ビンの紙蓋(牛乳栓)ですが、原料は晒化学パルプで、時には中層に化学パルプとグランドパルプ(GP)を配合して使うこともあります。厚さは1.0~1.2mmで、牛乳が瓶詰めから紙パックに替わって、今では見かけることが少なくなりましたが、印刷適性と抜き打ちの加工適性が必要で、強サイズを施し、ロウ引きしやすく、色刷りもできること、こわさ、厚さの均一性、円形に打ち抜いたときの切り口がきれいなことが要求されます。
  • 乗車券用紙…原料としては表・裏層に晒化学パルプ、中層にはGP、古紙が使われます。特に印刷適性と厚みの均一性が要求されますが、磁気・感熱記録紙の軟券に代わり、押されて姿を消しつつあります。

 

■白ボール

白ボールは白板紙の一品種に属していますが、もともとはその下位品種である黄ボール・チップボールなどの品質がグレードアップしたものです。白ボールの表層は晒化学パルプ、中・裏層には種々の古紙を使用する板紙です。通常、坪量範囲は310~600g/m2にありマニラボールに比べると一般に厚手のものをいい、製品形態は平判および巻取です。コート(塗工)品とノーコート(非塗工)品とがあり、コート白ボールはノーコート白ボールの表面に白色の塗料を塗布したもので、包装材料の内装用、個装用として白ボール、特にコート白ボールは印刷適性の向上などにより紙器用板紙の中心的品種です。白板紙の中でも白ボールの生産量が一番多く、白板紙全体の約2/3、紙器用板紙のおよそ半分を占めています。しかもそのおよそ9割は塗工品となっています。

なお、片面が白くて裏面がねずみ色のものを一般に「裏ネズ」と呼ばれ、白い面に白い塗料を塗工したものがコート白ボールです。また、裏ネズのねずみ色を隠すため裏面にパルプや上質系古紙を抄きこんだものが「裏白」で、それに塗ったものをコート白ボール裏白と呼びます。

白ボールは菓子、酒、食品をはじめ、繊維製品、洗剤、文具、化粧品、玩具、ティッシュ、靴などの日用雑貨品などのパッケージに幅広く使われております。これらの用途は通常、何らかの印刷を施して折畳みの紙箱などに用いられますが、特に印刷効果がよい塗工品はもとより非塗工品も加工されて多く使用されています。以前のパッケージには、黄ボールやチップボールに和紙や薄葉紙を貼って美粧性を出していた貼箱と呼ばれるものが使われていましたが、貼箱は印刷箱と比較してコストが高いため、白ボール、特に塗工品の出現によって貼箱は大きく減少しており、現在でも作られていますが高な用途にしか用いられなくなって来ています。

 

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更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)