(1)紙の縦目、横目について
抄紙機の流れ方向が縦方向で、その方向を長辺に持つ紙が縦目です。そして短辺ならば横目の紙です(図3、4参照)。
(2)紙の目(縦目、横目)の見分け方
この「破る」という特性を知っていれば紙の縦横を見分けることができます。しかし、これは紙を破るという破壊試験のために、その紙は元に戻りません。他に見分け方はないでしょうか。それでは次に機器測定によらないで、簡便に紙の縦目、横目を判定する方法を掲げます(表1および図5参照)。
方法 | 説明 |
①紙を破る | ①比較的抵抗なく、簡単にほぼ真っ直ぐに破れるほうが紙の流れ目(縦目)で、破れ目からは繊維があまり飛び出して見えない。すなわち、毛羽立ちがあまり生じない。一方、真っ直ぐに破れ難く、かつ破れ目からは繊維が飛び出して見えるほうが横目(図5①) |
②目視による紙表面ないし透過観察 | ②繊維(面)が流れて見える方向が流れ目で縦目、その反対が横目 |
③同一幅の紙を机などの角に垂らすか手で持って垂らす | ③比較的、より「だらり」としている方が横目の紙、「ピン」としている方が縦目の紙(図5-③) |
④紙の小片を水に浮かべるか、ないしは小片の片面を水で湿らせた布などで拭くか、舐める | ④繊維が水分を吸って膨らみカールする。カールの軸が縦目(流れ目の方向)で、その逆が横目(図5-④) |
⑤折る |
⑤目に沿って折るときれいに折れるが、目に直角の方向には折れにくい(図5-⑤) |
(3)その他縦横の主な品質特性差
次に機器などで測定し確認できる紙の異方性によって生ずる縦方向と横方向との主な諸特性差を整理しておきます。縦方向の方が横方向に比べ、
①引裂き強さは低い…縦方向つまり「流れ目」に沿って裂けやすい
②湿度に対する伸縮は小さい
③こわさ(剛度・腰)は大きい[図5③、図6 こわさの縦横差、および右写真参照…向かって左側が横目品、右側が縦目品]
④引張り強さは強い
⑤引張りによる伸びは小さい
⑥耐折強さが弱い などが挙げられます。
例えば、紙は引っ張った場合、さらに紙を引っ張っていくと切断しますが、そのときの荷重を引張り強さといい、このときの伸び率を伸長率(伸度)といいます。縦方向はかなり強い力を加えても伸びにくく、一方、横方向は、縦方向よりも伸び率は大きいのですが弱い力でも切れやすいという特性があります。
ところで、機器を使って試験、比較して判定する方法は、紙の縦方向と横方向とで特性値が明確に違う上記のような品質項目を測定し、両方向での特性値の比(すなわち縦横比)によっても推定できます。
また、さらに詳しく調べるには、試験用のサンプルの角度を変えて採取し、それら全方向試料の特性値を測定します。それを大きさとして、中心からプロットしていき、これらの点を結んでいくと楕円形状(図7参照…引張り強さ・伸び)となりますが、異方性の大きい紙ほど、この環は偏平状の楕円となり、逆に等方性の紙は円となります。
このように、紙の縦と横とでは差がありますので、紙を取扱うとき、特に印刷や加工・包装・製本などを行う場合(図8参照…紙の目と製本・製函適性)、このような特性をよく知った上で、紙の目を選定することは極めて重要なことです。次に関連図を幾つか示します。
なお、紙の基礎講座(7) 知っておきたい紙の基本品質Ⅱ参照…クリックをどうぞ。