紙について(5-1) 「紙のできるまで」および紙について(5-2) 「紙のできるまで」のところで説明しましたが、紙を作るためにパルプなどの原材料や諸薬品が使われています。また水や電気、あるいは重油などのエネルギーやワイヤー、フェルト、カンバスなどの抄紙用具も使用されています。もちろん紙の種類、銘柄、坪量(米坪)などにより使われるこれらの素材に違いもあれば、同種の場合もありますが、それらの量は異なるのが普通です。
ところで、生産する製品単位あたりに使用される資材、エネルギーなどの必要量を原単位(げんたんい)といいます。すなわち、原単位とは、ある製品を1単位(一定量)、生産するのにどれだけの原料・薬品・材料・燃料などの物量を使ったかを示すもので[投入物の数量/製品1単位の生産量]、単位は例えば、kg/製品tやm3/製品kgなどで表します。
もちろん、紙の場合も原単位で表現します。
下表に「紙(洋紙)」1kgあたりの主な原材料の原単位(概数)を紙の種類別に示します。
ちなみに、紙パルプ産業は用水型産業といわれるように水を多く使用しますが、表に見られるように上質紙では1kg生産するのに150㍑(すなわち、紙1t作るのに150m3)の水が必要です。
生産技術などの進歩改善により原単位は良くなってきておりますが、現在、紙全体での用水原単位は、およそ100m3/tですので、紙をつくるのにほぼ100倍もの多量の水を使用しているわけです。
参考までに手漉き和紙は、もっと水を使い洋紙の場合の約10倍といわれる(和紙の手帖 全国手すき和紙連合会)。
また、和紙の場合、「美濃紙のできるまで」(ビデオテープ)の解説書(著作 美濃市)によれば、和紙を作るのに、(楮などの)生木を100とすると白皮8となり、紙になるのはその半分の4とごく少量です、とあります。これは和紙1kgを生産するのに白皮2kgが必要で、生木では25kgが使われることになります。これを原単位で表せば白皮2kg/製品kg、生木25kg/製品kgとなります。
紙の種類 | 塗料 | 填料 | パルプ | 木材(チップ) | 用水 | 蒸気 | 電力 |
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新聞用紙 | - | 0.01 | ほぼ1 | 1.2 | 50 | 1.8 | 500 |
上質紙(印刷用紙A) | - | 0.1~0.2 | 0.85 | 1.8 | 150 | 3 | 700 |
塗工紙(アート紙) | 0.4 | 0.1 | 0.5 | 1.1 | 100 | 0.8 | 150 |
注記
- 単位:塗料・填料・パルプ・木材・蒸気…kg、用水…l(㍑)、電力…kW・h
- 表中、木材(チップ)とパルプとの関係は一体のもので、木材(チップ)から生成されるパルプで、その比、パルプ/木材(チップ)は木材(チップ)からできるパルプの歩留りを表します。
したがって、蛇足ながら新聞用紙、上質紙などの非塗工紙はパルプ+填料がほぼ1になり、塗工紙はこれらに塗料を加えたものがほぼ1になり、木材(チップ)は加えません