9.1 印刷インキの分類と用途
インキ(ink)とはインクともいいますが、印刷の場合は一般にインキといいます。
インキを用途別に分類すれば、筆記用インキ(タンニン酸鉄インキ、色インキ、墨汁など)、印刷用インキおよび計器やスタンプ類に用いられる記号用インキの3種に分けられますが、もちろん、これらは組成的にも機能的にも差があります。
ただ、一般的に単にインキという場合は、染料の他にタンニン鉄を含むタンニン酸鉄インキ(ブルーブラック・インキ)を中心とした筆記用インキを指します。ここでは印刷に用いられる印刷インキ(printing ink)についてまとめます。
印刷インキは、印刷手段によって紙などの被印刷物の表面に、版の画像を形成・固定する有色材料ですが、色料(着色材料・色材)とビヒクル(vehicle、媒質)を主成分として、少量の添加剤(補助剤)から成り立っています[印刷について(9)資料 印刷インキの組成 参照]。すなわち、着色材としての顔料または染料をビヒクルに分散し、必要に応じてワックスコンパウンドやドライヤーなどの補助剤を加えます。
色料は印刷インキの着色成分であり、顔料および染料とがありますが、顔料は本質的にはビヒクルに不溶性ですが、染料はビヒクルで溶解され、繊維に対して染着性を持っています。
また、ビヒクルは植物油などの油や樹脂、溶剤などを溶かし合わせて作った透明な液体です。展色剤ともいわれるように、顔料を分散あるいは染料を溶解して、印刷に必要な流動展性をインキに持たせ、印刷後は速やかに乾いて丈夫なインキ膜を印刷面に固着させる媒体的な機能を持っています。
色料、ビヒクル以外にさらに、必要に応じて乾燥性・流動性・皮膜特性などを調整するドライヤ(乾燥促進剤)、コンパウンド(ペースト状のインキ改良添加剤)などの補助剤があります。
印刷インキは、印刷方式、乾燥形式や用途などによって分類されています。例えば、印刷版式別では、①凸版インキ(活版、凸版枚葉、ゴム凸版、新聞)、②平版インキ(枚葉、オフ輪、金属/ブリキ板)、③凹版インキ(グラビア、証券・紙幣用凹版インキ)、④孔版インキ(シルクスクリーンインキ)、⑤特殊印刷インキ(陶磁器用インキ、電子トナー、インクゼェット用インキなど)に分かれ、乾燥形式別では、①酸化重合、②蒸発、③浸透、④(冷却など)固化、⑤紫外線硬化、⑥赤外線硬化、⑦熱硬化、⑧電子線硬化などに、さらにビヒクル別では、植物油(亜麻仁油)型…凸版・平版インキ、鉱油型…新聞(凸版)インキ、樹脂型…凸版・平版インキ、溶剤型…グラビアインキなどに分かれています。
また用途別では、新聞インキ、ビジネスフォーム用、ダンボール用、プラスチックフィルム用、合成紙用、金属用などに分類されます。このように、その種類は多種多様に分けられています。
また、印刷インキの形態は、流動性を持つ液体またはペースト状で供給されますが、適用される版式、印刷方式、被印刷物、加工用途などに応じて組成、流動特性(レオロジカル特性)が異なり、それぞれに印刷適性を持っていなければなりません。
オフ輪インキ(商業用)オフ輪インキ(新聞)凸版インキ(活版)新聞インキ(凸版)
オフセット枚葉インキ |
オフ輪インキ (商業用) |
オフ輪インキ (新聞) |
凸版インキ (活版) |
新聞インキ (凸版) | フレキソインキ | グラビアインキ |
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300~3,000 | 50~100 | 40~100 | 100~500 | 4~50 | 1~10 | 0.5~5 |
ペースト状 | ペースト状 | ペースト状 | ペースト状 | ペースト状 | 液体(リキッド) | 液体(リキッド) |
なお、印刷インキは、塗料・絵具などと類似していますが、例えば、塗料の場合は、塗装適性を具備することが必要ですが、印刷インキの場合は、塗装適性は不要ですが印刷適性は持っていなければならないという点で大きな違いがあります。この場合の印刷適性とは、印刷機上適性、作業適性、印刷物加工適性(印刷上がり)が主な特性であり、印刷インキはこれらを考慮して作られています。
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