新聞巻取紙(新聞用紙)について
さて、その新聞用紙はすべて巻取紙であるため、分類上の正式名称は「新聞巻取紙」と呼ばれます。日本工業規格(JIS)には、新聞巻取紙は機械パルプと脱インキ新聞古紙、化学パルプを配合した新聞印刷用の紙である、と定義付けされています(紙・板紙及びパルプ用語(JIS P 0001 番号6081))。さらに標準坪量は52±2g/m2であるが、軽量化が進み、43g/m2のものも使われており、オフセット印刷適性が要求される、と解説されています。
坪量について
新聞巻取紙の標準坪量はもともと52g/m2(重量紙)でしたが、1973(昭和48)年のオイルショックを契機として省資源・省エネルギーのために坪量の減少(軽量化)が検討され、1976(昭和51)年ごろから49g/m2(普通紙)への動きが出て促進され、また80年には49g/m2から軽量紙46g/m2へ、89年からは超軽量紙43g/m2へと進んできています。
品種(呼称) | 略号 | 坪量(g/m2) | 連量(kg/連) |
---|---|---|---|
重量新聞用紙 | H紙 | 52 | 〈23〉 |
普通新聞用紙 | S紙 | 49 | 〈21.5〉 |
軽量新聞用紙 | L紙 | 46 | 〈20.5〉 |
超軽量新聞用紙 | SL紙 | 43 | 〈19〉 |
超々軽量新聞用紙 | XL紙 | 40 | 〈18〉 |
さらに増ページ(40→48頁)の動きもあり、2000年には40g/m2(超々軽量紙)への移行も一新聞社が行っています。現在(2006年) 、全体のおよそ85%が超軽量紙(43g/m2)で、超々軽量紙(40g/m2)も約7%、97%が軽量紙(46g/m2)以下の薄物化となり軽量紙時代が着実に進行・定着しています。
新聞の大きさと新聞巻取紙の寸法について
現在、新聞(紙)1ページの大きさは横406.5mm×縦546mmです。また、その倍の、すなわち新聞1枚(表裏4ページ分)に相当する寸法813mm×546mmを新聞の基準寸法といい、その面積(0.444m2)を基準面積と言います。
基準寸法(813mm×546mm)の半分(406.5mm×546mm)サイズをブランケット判と言います。すなわち、新聞1ページの大きさをブランケット(blanket、スタンダードサイズ)判と呼び、日本の一般朝・夕刊の普通新聞の大きさがこれに相当します。これに対して、普通新聞紙寸法、すなわちブランケット判の半分(406.5mm×273mm)の大きさをタブロイド判といい、小型新聞(夕刊フジ、日刊ゲンダイなど)がこの判型です。
品番 | 寸法(mm) |
---|---|
A巻取 | 1,626×(546) |
B〃 | 1,092×(813) |
C〃 | 1,219×(728.3) |
D〃 | 813×(1,092) |
E〃 | 546×(1,626) |
そしてその規格寸法を基準にして新聞巻取紙の寸法は、幅1,626mmのA巻きから幅546mmのE巻きまで5種類に分類されています。右表に各巻取りの幅寸法を載せておきます。
巻取幅5種類のうち主に使用されているのはA巻き、C巻き、D巻きです。A巻きは幅寸法1,626mm(406.5mm×4)で、流れ寸法(縦寸法)が546mmですので、基準寸法(813mm×546mm)の倍寸法になっており、巻取の幅から縦に4枚分(表裏8ぺージ分)の新聞が取れることになります。以下、C巻きでは3枚分、D巻きからは2枚分の新聞が取れます。なお、B巻きについては、例えば号外(2ページの1枚もの)はB巻きで取れますが、現在の新聞輪転機ではD巻きで4ページで印刷後、スリッターでカット後、折り機にて2ページに断裁できますので、B巻きの使用はまれとなっています。またE巻きは印刷幅が非常に小さく、効率も悪く時代の流れに沿わなくなっています。
なお、また、基準寸法の新聞1,000枚をもって1連とします。したがって、1連の紙からは4ページの新聞だと1,000部印刷できることになります。例えば、 ひとむかしほど前は35連が標準入数であったA巻取は、今は50連~75連が主流になっています。40ページ建ての新聞印刷ではA巻き5本でワンセット(表裏4ぺージ/枚×2枚/本×5本)となりますが、60連巻きのA巻取紙1本から40ページの新聞6,000部が取れることになります。
ここで新聞寸法の変遷について触れておきます。
明治維新ごろに発行された新聞は、手漉きの半紙や美濃判で、印刷も木版に彫刻し馬連摺りをしていましたが、明治7年ごろになると、洋紙を使った活版印刷になり、新聞用紙も三三判(697×l000mm、2尺3寸×3尺3寸)を四つ切りにした大きさ(1尺1寸5分×1尺6寸5)を使い、この大きさを新聞判とも呼ばれるようになりました。
明治10年、西南戦争を契機に新聞への期待が高まり、記事の増大に伴って紙面の拡大が必要となりました。このころは例えば朝日新聞の場合、1879(明治12)年の創刊時の新聞は、横23cm×縦32cmで今のコピー用紙のB4判よりひと回り小さいサイズだったとのことで、小さいものでした。なお、明治前期当時の朝日新聞・読売新聞などは小新聞(こしんぶん)と言われる新聞の一形態で、市井の出来事や花柳界の艶聞などを中心としており、多く談話体の文章で綴られ、ルビ付きの新聞でした。
もとの話を続けます。明治14年ころのことですが、東京のある新聞社が紙面の都合で、その時使用していた新聞判の四つ切りの寸法では狭すぎ、三三判半裁では大きすぎるため、探していたところ四裁と半裁の中間の寸法25×37in(636×939mm=2尺1寸×3尺1寸)の用紙が米国の標準判としてあることが分かりました。
この寸法が後のいわゆる菊判に該当しますが、この半裁判(1尺5寸5分×2尺1寸)を新聞用紙として使うということになり、この新規の寸法(25×37in)の用紙を日本橋区通-丁目にあった川上正助店に注文し、川上正助店では、横浜にあるアメリカン・トレージング商会に注文して米国から輸入しました。
こうして新聞用紙の寸法(新聞判)は、やがて三三判の四裁から25×37in(636×939mm)、後の菊判の半裁(1尺5寸5分×2尺1寸=470×636mm)へと移っていきますが、当初は新聞用紙への用途だけでしたので、それだけでは不経済であり、川上正助店では拡販努力を重ねた結果、-般用として出版にも使われ始めました。
さらに日本での商標をどうするか種々検討の結果、この輸入紙の商標がダリアの花で菊に似ていること、菊は皇室の御紋章であること、また、この紙が新聞に使用されており、新聞用紙は新しいことを聞く紙であり、新聞の「聞」の字は「きく」と読むなどいろいろなことにちなんで、菊の花を商標にし、菊印として売り出しました。この紙が次第に普及する中で、他の印刷紙にも菊印判が流行し、いつの間にかこの菊印判の名称を略して菊判と通称されるようになったわけです。なお、菊判は昭和4(1929)年に標準寸法のA列を生むとともに、菊判として現在も、盛んに使用されています。
ところで新聞サイズですが、このころまでの新聞社はほとんどが平判(枚葉(シート))を用いた足踏み式印刷機を使用していましたが、巻取り紙を使う輪転機がわが国に輸入されることによって大きく変わっていきます。この高速輪転機導入によって印刷能力は約20倍に向上し、当時、まさに新聞印刷上の革命であったと言われました。
その高速輪転機は、1890(明治23)年に朝日新聞社(東京)が新聞印刷用に日本で初めてフランスのマリノニ社から輸入したのです。なお、マリノニ型輪転機は、その2年前の1888(明治21)年に政府の内閣官報局が2台を購入し印刷局に設置していますが、官報や帝国議会が開かれたときの多量の印刷物などの印刷に応ずるものでした。この印刷機の偉力の大きさを見て、朝日新聞社もその設置を決めたと言われており、以降各社が追従することになります。
ところが、このフランスの印刷機製造者マリノニが開発した巻取り紙式の活版輪転印刷機には、従来の用紙サイズが合わないので、当時書籍や雑誌などの出版物に盛んに使われていた四六判が採用されました。四六判(788×l091mm)のほぼ半分の大きさが、今の新聞1枚(表裏4ページ)のサイズ、基準寸法(813×546mm)ですが、四六判がその源流にあり、マリノニ型輪転機がきっかけとなったわけです。
その後、マリノニ社製輪転機(新聞2枚(表裏8ページ)掛け機)の用紙サイズが規格化され、同輪転機を参考に国産の輪転機の開発も進み、多くの新聞社に普及し、この輪転機に合わせた用紙サイズが日本の新聞として一般化したわけです。
注
- 半紙…和紙の一種。もと横幅1尺6寸(約48センチメートル)以上の大判の杉原紙を縦半分に切って用いたから称したが、のち、別に縦24~26センチメートル、横32.5~35センチメートルの大きさに製した紙の汎称。近世に最も多く流通した。
- 美濃判…代表的な和紙である美濃紙の判型(9寸×1尺3寸=273×393mm)
- 三三判…三三判の原寸は、700×l000mmでドイツからきたもの。明治初期、イギリスからの輸入紙に、寸法が 697×1,000mm(2尺3寸×3尺3寸)の印刷紙がありましたが、この紙は半紙判(8寸×1尺1寸)の約8倍の大きさであり、当初「半紙八判」と呼ばれていましたが、この寸法が縦横とも、3寸がつくことから、三三判という呼称が定着しました。
- 四六判…788×l091mm(2尺6寸×3尺6寸)の判型。明治初期、イギリスから輸入されていたクラウン判(20×30in)を面積でおよそ倍にした寸法[31×43in=2尺6寸×3尺6寸(788×l091mm)]は、ちょうどわが国の標準判である美濃判の8面取りになることから、この寸法の紙は大いに受け入れられ、「大八ッ判」(美濃判の8倍の大きさ)と呼ばれ、書籍や雑誌などの出版物に盛んに使われました。
その後、この大八ッ判全紙を32枚取り(4×8裁)し化粧裁ちすると、書籍寸法[横4寸2分×縦6寸2分→書籍の大きさ 横4寸、縦6寸]になりますが、この4寸×6寸からやがて「四六判」と呼ばれるようになり現在に至っています(参照…FAQ(11)資料 主な紙寸法の由来)。
参考
新聞巻取紙やオフ輪用塗工紙、トイレットペーパーなど巻取紙(ロール紙)の直径を算出したり、巻込みの長さなどを求める「コラム(70)資料 巻取紙に関する算式」を載せました。
求められる高い印刷適性
新聞は遅れないように、ほぼ決まった時間までに毎日各家庭に配達されています。そのため新聞製作は時間との戦いであり、しかも印刷の高速化、紙面のカラー化(美麗化)、用紙の軽量化(薄物化)、古紙の高配合などが進行しているなかで印刷時のトラブルなどがあってはなりません。そのため新聞用紙には、異常なく印刷され、かつ期待される刷り上がりが得られる高い印刷適性が求められます。なお、これについては用紙の軽量化も含めて後述します。