次に紙の主な基本特性をまとめて示しますが、紙を印刷ないし加工するときや用途拡大を図っていく場合には、紙の持っている基本的な特性について、あらかじめよく理解しておく必要があります。
ところで、紙の持つ多くの品質特性が、原料、製造方法、技術力などの制約で両立しないことがあります。例えば、同一品種で平滑度(表面の滑らかさ)と紙の厚さとの関係で、平滑度が良く、かつ紙厚もほしいとの要求に対して、前者は密度が高く引き締まった紙の傾向になるのに対し、後者の紙は逆に密度が低くふわっとした特長を持たせなければならないというように、両者は相反している面があり、両立しにくいわけです。このため、要求を理解した上で、どちらを優先するのか、選択をする必要がありますので、要求者と作る側とはよく話し合って品質仕様を決めていくことが重要となります。
このように、紙の持つ諸特性のうち、用途面・機能面を考慮してプラス面は活かし、マイナス面は改善し、あるいは補いながら、使用していくことが大切です。
1.主な基本特性
- 親水性で、かつ親油性であること…水または湿度に敏感(湿度変化、伸縮、カール、紙くせなど) 、また油性インキによる印刷が可能
- 異方性(方向性)・両面性を持つこと…FAQ(6) 紙の目(縦・横)、FAQ(9) 表裏差
- 多孔性であること…液体などの吸収、浸透が可能
- 圧縮性・クッション性・弾力性を持つこと
- 柔軟性を持つこと…剛度(こわさ、腰、手肉)
- 透過・通気性(光、気体など)であること
- 保温性であること…伝熱性小
- 表面は酸性ないし中性であること…酸性紙、中性紙
- 紙力に限界があること…引張り、耐折、破裂、引き裂き、伸び、表面強度など
- 耐久性に限界(劣化性)があること…強度劣化、退色性など
- 可燃性であること
- 折り曲げ可能で軽くて平面・平滑であること
- ある程度の厚さを持つが薄いこと
- 白くて不透明性でありかつ、染色しやすいこと
- 加工しやすく、張り合わせも容易
- 無害で再生が容易なこと などです。
なお、これらの特徴とは別に比較的安く、入手しやすく、手軽に持ち運びしやすく、記録しやすいことなども紙の持つ大きな特長であり利点といえます[(参照)紙について(2) 紙の機能と用途]。