FAQ(48) コピー紙を作るとするといくらの原料(原木)でできるのでしょうか? また補修用の和紙について教えてください。

ご質問

はじめまして、高知県で小学校教員をしています。○○と申します。紙について調べていましたら、貴HPにたどり着きました。情報量が多くて驚いています。もしよろしければ2つ教えていただきたいです。

その1

小学生対象に和紙と今現在コピー紙などに使われている紙の比較する授業を考えています。手漉き和紙の凄さ、手間隙かかることを伝えたいと考えています。

障子1枚分の和紙(220g)を作るのに、原木5500gが必要であると聞いたことがあります。それでは、同じようにコピー紙などで障子を作るとすると何グラムの原料でできるのでしょうか?

その2

和紙は保存性が優れており、補修として和紙(土佐和紙)が使われたこともあったそうですが、具体的にどのように使用されたのでしょうか?サンドイッチのようにはさんだのでしょうか?もしよろしければお教えください。

(HOさん)

 

回答

お答えします。

その1

普通、和紙を作るのに、(楮などの)生木を100とすると白皮8となり、紙になるのはその半分の4とごく少量です。このことは和紙1kgを生産するのに白皮2kgが必要で、木に換算すれば生木25kgが使われることになります。これを原単位で表せば白皮2kg/和紙製品kg、生木25kg/和紙製品kgとなります。

したがって、ご記憶のように> 障子1枚分の和紙(220g)を作るのに、原木5500gが必要であると聞いたことがあります。とありますが、これで間違いありません。

原単位(げんたんい)とは生産する製品単位あたりに使用される資材、エネルギーなどの必要量をいいます。すなわち原単位とは、ある製品を1単位(一定量)、生産するのにどれだけの原料・薬品・材料・燃料などの物量を使ったかを示すもので[投入物の数量/製品1単位の生産量]、単位は例えば、kg/製品tやm3/製品kgなどで表します。

コピー紙は上質紙(印刷用紙A) ですので、紙1kgあたりを生産する原単位(概数)は、パルプ0.85kg、木材(チップ)1.8kgです。したがって、コピー紙220gを作るのに396g、すなわち約400gの木材原料が必要となります。

 

ところで手漉き和紙の凄さ、手間ひま掛かることを伝えたいと考えておられるとのこと、非常によいことだと思います。また、一方では、洋紙の持つ合理性、経済性、リサイクル性(環境へのやさしさ)、汎用性などのこともよく生徒さん方に理解していただければうれしく思います。

なお、ホームページの

なども参考のためにご訪問ください。

 

その2

補修には、例えば障子の小さい穴や破れには、和紙などに粘着剤を付けて補修(花や葉、星などの形をした粘着剤つきの和紙補修用シールなどでも可)することを考えてみてください。その方法には、面から補修用紙を糊で貼り付ける「裏うち」のほか、「表うち」、もちろん「サンドイッチ」方式もあります。

古文書などの資料の後ろに補修用紙を糊で貼り付ける「裏うち」は従来からある方法です。また、「表うち」は、上からの補強でも文字は十分読める薄い和紙を使います。単独であれば破れやすい弱い和紙であるのに、糊で貼り付いてしまうと非常に丈夫になります。また、虫損の凹んだ部分を和紙で埋めていきます。

ところで、私自身この世界の専門家でないので、ご参考になればと思ってインターネットで検索して調べてみましたので、それを紹介しておきます。

  • 破れた紙の補修…一般的な資料には、市販されている品質の安定した補修用テープを使うと便利です。しかし、貴重な資料や長期に保存する資料については、和紙と生麩糊を使って補修します(用意する材料と道具…和紙、生麩糊、水、筆、ヘラ、当て紙、板、重し、カッターナイフ)。

和紙と生麩糊を使う理由は、素材が化学的に安定しているので、資料に悪影響を与えず、水を使えば和紙をはがすことができ、元通りに戻せるからです。その手順は次のとおりです。

  1. 水にぬらした筆で、ページの破れの部分より少し大きめに和紙をなぞり、手でちぎる。
  2. 和紙に、筆で生麩糊をまんべんなく均一に塗る。ただし塗り過ぎに注意する。
  3. 破れている部分に、紙の目を合わせて和紙を貼り、ヘラ等でページとなじませる。
  4. 和紙を貼ったページの前後に、当て紙をあてる。
  5. 表紙の上下を板で挟み、重しを載せ乾かす。(10分ほど締め機でプレスしてもよい)
  6. はみ出した部分は、紙端に定規を当てカッターナイフで切り落とす。

他にリーフキャスティング(すきばめ機)を利用する方法もありますが、ここでは省略します。

なお、国の文化財保存技術の保持者として選定されている井上稔夫さんが、制作さている表具用手漉き和紙(補修紙)が使用される補修はどんな方法なのか、同県(高知県)のよしみとして生徒方皆さんで調べてみてください。長くなりましたが、以上です。

 

質問者からのご返信

丁寧なお返事本当にありがとうございました。大変よく分かりました。もう少しじっくりゆっくり考えて授業化していきたいです。ご紹介いただいたホームページ全て印刷しました。すごい情報量ですね。洋紙についての合理性、経済性、リサイクル性なども全て大事なことであると認識しました。あまりにも当たり前になっている自分に気づきました。ご示唆ありがとうございます。井上様にもいろいろご指導いただけるよう動いて見ます。いろいろと本当にありがとうございました。

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)