和紙の知識(5) 和紙の作り方

現在では機械漉きも行われていますが、和紙の漉き方には、手漉きによる方法で溜め漉きと流し漉きの二つの方法があります(和紙の知識(3) 和紙の特徴 参照)。

 

①皮を剥く ②煮る ③叩く ④漉く ⑤乾かすという紙漉きの原理は今も昔も変わりませんが、ここではわが国の紙漉きの極め付きといってもいいネリを使う流し漉きによる方法を説明します。

 

それでは初めに手漉き和紙の作り方のポイントをまとめておきます。

  • まず楮を蒸して皮を剥き、外側の黒皮を取り除き、内側の白皮を原料にします。
  • 次に白皮を釜の中に入れ、ソーダ灰(無水炭酸ナトリウム)を加えて煮ます(蒸煮)。ここで不純で不要な成分を取り除き、繊維をほぐれやすくします。

これをよく水洗いをし、薬品を洗い流すと同時に、混ざっているゴミなどを取り除きます。なお、必要に応じて漂白を行います。

  • この繊維を木棒などで平たい石か、厚い板の上で叩き、柔らかくし湿った綿のようにします(叩解、「こうかい」と読みます)。
  • 水を入れた漉き舟(四角な箱=漉槽)の中に、繊維とネリ(トロロアオイの根を砕き、水に浸して出てくるドロドロの液)とを加えてよくかき混ぜます(攪拌)。

これを紙料液といい、紙漉きの原料となります。

  • 簀桁(漉桁)で、漉き舟の中から紙料液をすくい上げ、簀桁を前後左右に揺り動かします。これを何回も繰り返すうちに繊維は絡み合って紙の層ができます。

紙の厚さはすくい上げる回数で決まりますが、漉く時に、余分の紙料液を簀桁の先から漉き舟の中に捨てます(これを捨て水といいます)。

なお、この漉き方を「流し漉き」といいます。

 

これに対して、紙料液をすくい上げてから、簀桁をわずかに揺り動かして、水が切れるまで暫く置いて紙の層を作る方法を「溜め漉き」といいます。

  • 簀の上の紙層すなわち湿紙を板の台(紙床、しと)の上に積み重ねます。重ねた紙に重石をするか、機械を使うかしてゆっくりと水を絞って脱水します。
  • 水を絞り終わった紙は、一枚ずつはがして張り板に張り付けます。
  • 張り板に張り付けた紙は日でゆっくりと乾かした後に、剥(は)ぎ取り良紙を選別します。

もう少し詳しく工程別に説明していきます。

 

その前にウェブご覧ください。

参照ウェブ

 

手漉き和紙の製造工程(流し漉き)
工程説明
(1)刈り取り 楮などの枝を12月頃に刈り取ります
(2)皮剥ぎ(かわはぎ) 平釜に水を入れ、蒸して皮を剥(む)きます
(3)表皮削り

外側の黒皮を削り取り、内側の白皮を原料にします

(外側の粗い黒皮とその下のあま皮を削って白皮にします)

(4)川晒し(かわざらし) 清流に白皮を数日浸けて晒し、水に溶ける部分を流します
(5)煮熟(しゃじゅく)
  • 大釜に湯を沸かし、白皮をほぐしながら入れます。そのなかに白皮についた不純物を溶かすため灰汁(あく)[主にソーダ灰のアルカリ性溶液]を加えて高温度で煮て、軟かな繊維にします
  • 煮熟を終えた後、繊維を籠に移し替え水中に放置するか、川などでよく水洗いしアルカリ性分を除きます…灰汁抜き
(6)漂白

必要に応じて、白皮を漂白します。

漂白には、然漂白と薬品漂白の二つの方法があります

  • 然漂白…「川晒し」や「雪晒し」(伝統技法)

繊維の光沢や強靭さが保たれます

  • 薬品漂白…主に晒粉(カルキ、次亜塩素酸カルシウム)を用います

白くなるが繊維の損傷や、歩留りが低下しやすい

(7)塵取り(ちりとり)

繊維中の塵を取り除きます

(水中に浸けた大籠の中で、白皮に付着している不純物や傷を丁寧に取り除きます)

(8)叩解(こうかい)

充分水洗いした白皮を石または木の台の上で、叩き棒で丁寧に叩き、束になった繊維を、一本一本の繊維にバラバラに離解し、また、短くして、からみ合う様にします

昔はすべて手打ちでしたが、今日ではビーター(打解機)などの機械処理が増えてきております

(9)紙料の調合

水を満たした漉き舟の中へ叩解した繊維を入れ、棒でかき混ぜてから、さらに、馬鍬(まぐわ)でよくかき混ぜて繊維を分散します

さらに、主にトロロアオイを原料にしたネリ(粘剤)を加え、よくかき混ぜて(攪拌)、漉き舟の紙料濃度を均一にします

(ネリの量は紙の種類や漉き方によって加減します)

(10)紙漉き

(流し漉き)

①漉桁(すきけた)[竹の簀(す)を張った枠、簀桁]で紙料をすくい取り、すばやく簀面全体に均一に広がせて繊維の薄膜を作ります。この操作を初水(うぶみず)とか化粧水といいます

②次に、第2回目の紙料をすくい取りますが、初水よりはやや深く汲み、漉桁を前後(場合によっては左右にも)に揺り動かします

(求める厚さになるまで、数回汲み込みと揺りを繰り返します)

③汲上げた紙料が簀の上で、適当な厚さになったならば、漉桁を傾けて、残った紙料を捨てます。これを捨て水といいます

(この捨て水によって、簀上に浮いている塵や結束繊維などの不純物が取り除かれます)

(11)紙床(しと)作り 漉き上げた湿紙を簀からはずして紙床板の上に、1枚ずつ積み重ねて紙床を作ります
(12)圧搾(あっさく)・脱水 湿紙を紙床板に重ねて一晩置き、自然に水分を流した後、圧力(圧搾機…圧搾棒を使用)を加えて水を絞ります。なお、重石(おもし)を載せるだけの方法もあります…石圧法
(13)乾燥 圧搾を終えた湿紙を 1枚ずつ干し板(張り板)に刷毛(はけ)で張りつけます。日(太陽熱)干しが理想ですが、候に左右されない乾燥室の使用も増えています
(14)選別 乾燥し終わった紙を 1枚ずつ調べて傷やちり、汚れなどのある不良紙は除きます
(15)断裁 枚数を揃えて良紙を積み重ね、規定の寸法に定規を当てて裁断します
(16)包装・梱包 断裁の終わった束(そく)は、包装、紐掛けをします。束を集めて締(しめ)ごとに包装し、1丸(まる)単位に荷造りします。さらに製品の商標・銘柄・製造者名などを捺印します

 

  • 束…10組を一組としたものを1束といいます
  • 締…束ねたものを数える語。束10個を1締といいます
  • 丸…和紙を数える語。

例えば、半紙6締、美濃紙4締を1丸といいます

 

 

参照ウェブ

  • 財団法人 紙の博物館 紙のすき方 作り方 紙の講座3
  • 王子製紙株式会社 紙のエトセトラ 「自分で紙を作ってみょう」
  • 日本製紙株式会社 紙の豆知識 「手漉き体験」

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)